演技が美しすぎて危機感が働かない。シルク・ドゥ・ソレイユの公演DVD『コルテオ』。

目次

今回、ご紹介するのは、シルク・ドゥ・ソレイユの公演DVD『コルテオ』。

映画『彼方からの物語』とちがって公演の録画なので、

基本的に観客が映っていますが、それでも幻想的な演目。

以下、リンクを兼ねたパッケージ画像です。

  

 

「道化師の葬式」というストーリー

コルテオ」とはイタリア語で「行列」という意味で、

この演目の主題は「道化師の葬式」。

演目名はこのお葬式に参列している人々、葬列を指しているわけですね。

 

「葬式」というと暗くて陰鬱な情景を思い浮かべてしまいますが、

なんせ今回送られるヒトは道化師なので、参列者は

・天使

・白い道化師

・小人

・楽士

・曲芸師

など、クセ者ぞろいです。

 

また、この演目のストーリーは「道化師自身の回想シーン」と、

「現在の葬式」の間を行き来します。このお葬式は一筋縄ではいかないのです。

なかには、「これってどっちなの?」と思ってしまう、

はっきりしないシーンもあります。

 

もっとも、本作は道化師マウロの「自分が死んだ夢を見た」という

独白で始まるため、道化師が本当に死んでいるのかさえ、判然としません。

しかし、それでいいのだと思います。

シルク・ドゥ・ソレイユにかかれば、生死の境目さえもあいまいになるのです。

 

あらすじ 

道化師マウロの独白のあと、友人たちが嘆きながら訪ねくる。

大柄なヴィットリーノや、とても小柄なグレゴリー。

 

マウロの走馬灯のなか、訪れた女たちがシャンデリアに

絡みつき、空中で自在に舞う。

 

マウロは思い出す。幼少時、祖父の家でしたマクラ投げ。

いとこたちと一晩中騒いだものだ。子どもたちにとって、

ベッドはまるでトランポリンだった。

 

マウロは空中に浮かぶベッドで天使から羽を授かる。

今はまだ上手く飛べないが、いつか自在に飛べるようになるだろう。

 

子どものころ、庭で遊んでいたら、不思議な女の子に出会った。

その子はどうやら、大きなマリオネットだったらしい。

危うく、ボールを持っていかれるところだった。

 

団長が口笛でマウロを送ってくれるという。

団長は口笛の名人で、モーツァルトだって吹けるのだ。

 

みんなが地上で悲しんでいるけれど、すぐ近くに父の姿が見える。

みんな。やっぱりぼくはいくよ。この自転車に乗って。

 

サーカスって総合芸術なんだ。

当然ながら演技がすごくて、とても人間技とは思えないし、

曲芸がメインでも音楽と衣装が美しく、添え物ではありません。

ああ。サーカスって総合芸術だったんだ!

 

本作にいたってはセリフもあり、演劇の要素もあるのです。

演技の合間にはコミカルなコント(?)もあるので、

ちょっとした演劇と言ってもいいでしょう。

 

シャンデリアのシーンでは、女性たちが下着のような

露出度の高い衣装で、シャンデリアに手足を絡ませて演技します。

命綱は見当たりませんが、この情景が美しすぎて

落ちたら危ないんじゃないか、という危機感が働きません。

 

この演技に限らず、観てる間は危機感がお休みしてしまいます。

本当に危機感が仕事しない。だって、演者の動きが洗練されすぎてて

そもそも落ちそうに見えないんだもの。ちゃんと重力がかかってるのかアンタら。

 

演者の動きの軽やかさだけではなく、単純に筋力に感動してしまう演技も。

 

サーカスには空中ブランコという演技がありますが、

あれのブランコなしバージョン、といえばいいのでしょうか。

女性たちが、男性たちの間をパスされていったり、

空中で回転したりする演技があります。男女ともに筋力がすごい!

 

あと、感動したのはハシゴを使った芸。

たてかけるものがない空間にハシゴを立てて登っていくのです。

あれ? ハシゴって、たてかけて使うものじゃなかったっけ?

どうやって支えてるの? 

 

どうやら、演者本人の筋力とバランス感覚だけで、ハシゴが立ってるらしい。

この光景はホントに夢みたい。

種もしかけもないせいで、よけいに理解不能です。人間ってこんなことできたんだ。

 

しかし、なんといっても一番の見どころは、

シーソーによる決闘シーンですね! このシーンは音楽もいいし、

間にちょっと、マウロと友人たちが登場しておもしろい。

 

おまけに迫力もあります。ケンカしているらしい男性たちが、

シーソーで跳ぶ高さや空中での技を競っているようですが、

跳び上がっている高さが尋常ではありません。

演者の身長の三倍ほどは跳んでいるでしょうか。

 

観ているだけでハラハラする演技ですが、

華麗な空中回転が決まった時には、つい、拍手してしまいます。

録画であることを忘れさせるほどのかっこよさ! 

 

ああ。語ってたらサントラがほしくなってきた。

残念ながらこのシーソーのシーンの曲は収録されていないようですが、

テーマ曲らしい葬送の曲も、哀愁があってすばらしい。

 

あなたも、この幻想的なお葬式に参列されてみては?

息をのんで演技に見入っていれば、悲しくなんてありませんよ。

 

以上、演技が美しすぎて危機感が働かない演目、

シルク・ドゥ・ソレイユの公演DVD『コルテオ』を紹介しました。

 

※本記事は、9月19日に修正しました。