ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

ますむらひろし氏の猫(?)漫画『アタゴオル』について語ります! アタゴオルって空気とご飯がおいしそう。

今週のお題「ねこ」

 

目次

 

猫の日なので、ますむらひろし氏の猫(?)漫画『アタゴオル』について語ります!

※本文中にある画像はすべて、アマゾンへのリンクです。クリックするとジャンプしてしまうのでご注意ください。

アタゴオルがどんな世界・物語なのかとか、登場人物についてはウィキペディアを参照してください。以下、リンクです。

 

アタゴオル - Wikipedia

 

ということで、以下、読んだことがある方むけに語ります!

 

アタゴオルで私が一番好きな〇〇

一番好きな光景

コラ漫画文庫シリーズ:6巻:P146:1コマ目

「タルダリ大帝Ⅱ 眠りの岸辺」 雲でできた滝のシーン

ただでさえアタゴオルには三次元の住人からすれば夢みたいな景色が広がっている。そのアタゴオルの住民が眠って見る夢の景色とはいかなるものか。その一つがこの、雲でできた滝である。盛り上がった雲の間から水が流れ落ちて滝になっている。足元は普通の地面なのに、だ。滝つぼがない滝なのである。この光景は何度見ても美しい。

 

一番好きなレギュラーキャラ

キャラクター名(フルネーム?):ハサミ夜・コミ夜・唐あげ丸

立場:天才バイオリン弾き。床屋の親方と喫茶店のマスターも兼ねている。

外見:太いヒゲと前髪を生やした目つきが鋭い中年男性猫。

素敵な部分:あの繊細さは身内としては大変だが、いつでもなんでも音楽に結び付けてしまう熱心さには感動する。おまけに海賊船からバイオリンを盗む*1度胸を持ち合わせている。ヒデヨシが食欲の塊だとしたら唐あげ丸氏は音楽欲、特にバイオリン欲の塊である。いつでも善良なわけではなく時に音楽に狂ってしまうのが彼の魅力でありヒデヨシに通じる部分がある。私の中では彼も美中年に含まれる(猫だが)。

 

一番好きなゲストキャラ

キャラクター名:鉄砂(てっさ)

初登場話:MFコミックス『アタゴオルは猫の森』だと4巻に収録の「テルウテ①」

立場:鉱物師の集団、脈旅団(みゃくりょだん)の団長

外見:フードをかぶり、アゴヒゲを生やした、鼻が高くてハンサムな男性

素敵な部分:まず、アタゴオルの登場人物にしては珍しくハンサムな顔立ち。アタゴオルに登場する人間の男性は中年〜老年のことが多いので若いだけで貴重。「テルウチ②」で「君たちを追って河を下るみんなの姿を見せてやろう」*2と言ったあとのコマの、横顔が特にハンサムで好き。この顔立ちとフードを脱いだ時の逆立ち髪のギャップもまた素敵。私は中性的な顔よりも男性的な顔のほうが好きなのだと気づかせてくれたキャラクターである。本人よりも年上らしき部下を連れているので、鉱物師として優秀らしい。鉱物師の世界は年功序列ではなく実力主義なのだろう。彼は鉱物の一種を操り、身軽で戦闘力が高いので戦闘シーンでも格好いい。

 

以下、リンクを兼ねた表紙の画像。

 

 

彼の名言は

1、「なんで仲間が逃げるんだっ 貴様 くだらないおどしはやめろっ」*3

2、「おまえのウソは聞きあきた オレもおまえの火あぶり見たいぜ」*4

上記の二つだと思う。1のセリフはヒデヨシが、人質を返さないと爆裂火薬玉に火をつけると言い、火のついた葉巻を構えた時のセリフ。鉄砂は目的のためなら手段を選ばない、神経の太い悪党なのだが、このセリフには恐怖がにじみ出ている。というか、こんな状況だったら誰だって恐い。敵の身内が本気で逃げ出すなんて恐すぎる。ナバちゃんと本人が優秀なおかげで難を逃れた。作中屈指の迷シーンであり、彼の人間性が感じられる。今までの敵はヒデヨシの言動に恐怖するより、怒ることが多かった。

2のセリフは、ニセモノのタイコをつかまされた彼がヒデヨシに言う。ある村で住民に捕まり、薪の上にぶらさげられているヒデヨシを眺めながら。このセリフは実に正直で悪党らしく、余裕を取り戻している。今までヒデヨシと敵対した全ての者を代表したセリフなのではないだろうか。

 

番外、二番目に好きなゲストキャラ

キャラクター名:葉座(ようざ)

初登場話:スコラ漫画文庫だと6巻に収録の「キリエラ戦記Ⅱ」

立場:海賊。銀波船長が率いる「闇のバイオリン号」で船長の右腕を務める。

外見:人型トピアリーのような姿。顔と手、足先以外は葉に覆われている。

素敵な部分:まずは外見。全身が葉とツタに覆われており種族不明。人外なのか、魔法を極めた魔法使いなのか。どちらなのかわからないのが良い。黒目がないのに表情は豊かである。忠誠心が強く仲間想いのようで「敬愛する銀波船長」と言ってみたり、仲間の全滅に怒ったりしている。外見に反してとても人間的な性格の人物で、自分が網樹に捕まった後は恨みを水に流してヒデヨシに「早く逃げろ」と言う*5。銀波船長は元からヒデヨシとは無関係に網樹を狙っていたので現状は自業自得だとわかっていたのだろう。海賊ではない者が巻きこまれるのが忍びなかったのだと思われる。網樹に侵入してきたヒデヨシに「助けてくれ」と言わず自分の命をあきらめているあたり、悪い意味で常識的。個人的に助かってほしかった人物No.1である。

 

 

作中でヒデヨシが化け物(人外)からバケモノ呼ばわりされた回数

ヒデヨシはよく人や猫から化け猫と言われている。時には身内にバケモノ呼ばわりされることもある。それどころか、正真正銘の化け物(人外)の連中から「バケモノ」と言われることさえある。そこで今回は作中でヒデヨシが何回、化け物にバケモノと言われたのか数えてみた。カウントの条件は以下である。

・調べる範囲はスコラ漫画文庫シリーズとその外伝およびMFコミックスシリーズとする

・人外キャラであれば敵対していなくてもカウントする

・バケモノ以外にも、化け猫・ケダモノ・怪物などもカウントする

以上。この3つの条件でざっと調べてみた結果、

コラ漫画文庫シリーズと外伝:4回

MFコミックスシリーズ:3回

合計:7回となった。意外に少ない。バケモノ呼ばわりされる前に倒しているからか。

以下、それぞれの回についての解説と感想。

 

まずはスコラ漫画文庫シリーズから。

8巻:P303:1コマ目:ジルドルド王のセリフ

「生き物というよりバケモノのような奴がおるのう…」

ジルドルバ王国の建国者、ジルドルド王は時間のすき間に入り込んだ者しか会えない人物。今では猫の姿をしておらず、瞳祭りの時にしか現れない。重力箱を開けるとみんなの背中に三日月型の「生命力」が現れる。ヒデヨシのあまりに大きな「生命力」を見て思わずこぼしたセリフ。呆れているようだ。

アタゴオル外伝ギルドマ:P80:2コマ目:植物女王ピレアのセリフ

「毛座 早くこのバケ猫をなんとかしてっ」

報酬に釣られたヒデヨシの手で復活した闇の植物の女王、ピレア・イノチュダが発した恐怖のセリフ。下僕であるタコ型植物、毛座(もうざ)の毒針が効かないヒデヨシに近寄られて怖がっている。今までに無数の猫や人を無造作に殺してきた女王だからこそ「死なない」ヒデヨシを怖れる。ピレアは星との一体化を企んでいる冷酷非情なキャラクターなのだが、この一瞬だけは同情しそうになる。

アタゴオル外伝ギルドマ:P186:5コマ目:植物王子、輝彦宮のセリフ

「父上っ それじゃケダモノですよ」

闇の植物女王ピレアを倒すために生まれる存在、光の植物王子・輝彦宮(かがやきひこのみや)のセリフ。捕まったヒデヨシがピレアに「ギルバルスの生き肝が食えるか」と問われ「食う」と即答したヒデヨシに対するもの。この時点ではヒデヨシを「父親」に選んだのは失敗に思われたが、むしろ大正解だったことが後にわかるのであった。

アタゴオル外伝ギルドマ:P186:6コマ目:植物女王ピレアのセリフ

「ケダモノ以下だ」

生き肝を食われた者は死ぬ。そう教えられてもヒデヨシは間髪入れずにギルバルスの生き肝を食うと言った。こいつはもはやケダモノ以下である。こんな奴を父親に選んだ小さな王子に自分が敗北するとは思いもしなくて当然であろう。

 

次にMFコミックスシリーズ。

5巻:P140:1コマ目:ランダのセリフ

「タイシタ鬼畜猫ダ」

絶対鉱物(テルウテ)に封印されていた「憎しみの生命体」ランダに、ヒデヨシが、憎しみの水晶と化した仲間の体を投げつけた時のセリフ。ランダは捕まえた者の憎しみの原因(記憶)を見ることができるので、悲惨な光景は見慣れているのだろう。ヒデヨシのこの非道な行動を見ても動揺することなく、むしろほめている節がある。こんなことができる男ならさぞや強い憎しみを抱えているだろうと期待して捕まえてみたら、とんだ愚猫でがっかりしたようだ。ヒデヨシは愚かすぎて自分の栄養源にならないと判断したランダは、ヒデヨシを生かしたまま投げ捨てるのだった。後に、ヒデヨシを殺さなかったことは判断ミスだったことがわかるが後の祭りである。

10巻:P45:5・6コマ目:ワジナルのセリフ

「おまえこそ…バケモノだ…」

ワジナルは人に向かって針を放つ化物である。ズズメ岩に封印されていたが、火薬石でズズメ岩にヒビが入って開放されたらしい。ワジナルとは「意識の熱さ」そのものであるという。ワジナルの針を受けると意識がなくなり、一人ひとりに「ルベ」が現れる。しかしヒデヨシにはこの針が効かず、ワジナルはヒデヨシに抱きつかれて消滅した。むしろヒデヨシの方が化け物であることには同意する。

11巻:P91:1コマ目:大クラゲ、マジュウゲラのセリフ

「サラバ 小サナ怪物ヨ」

雲の上で暮らす知的なクラゲ「トラマルア」の1匹であるマジュウゲラのセリフ。マジュウゲラはテンプラの記憶とヒデヨシの食欲を吸い取ったせいでヒデヨシに逆襲され、ヒデヨシに大嫌いな蝶の羽をこすりつけられる。ヒデヨシに蝶で脅されたマジュウゲラはヒデヨシの食欲と被害者たちの記憶を返した。マジュウゲラは今までの怪物と違って脅しが通じたので攻略は容易で、ヒデヨシと敵対した生物にしては珍しく生きたまま別れられた。たいていの怪物は殺されるか消滅しているかヒデヨシに食われているので、この回はかなりのレアケースであった。

 

番外、化け物に「狂っている」と言われた回

アタゴオル外伝ギルドマ:P23:1・2コマ目:噴動留(ふんどうる)のセリフ

「オ前ラ…狂ッテル」

変身して神聖樹に巣食っていた、植物女王の下僕・噴動留(ふんどうる)のセリフ。自分の超能力がなぜか効かず、平気で動けるヒデヨシとギルバルスに対してのもの。同ページでのギルバルスの応えは

「そーとも ドブをかきまぜたような世界に住まないよう しっかり狂うのさ」

これはとてもヒーローのセリフとは思えない。どちらかというと歴戦の犯罪者のセリフだ。さすがは孤高の勇者ギルバルス。彼は我欲を貪る支配者にとって超危険なテロリストだが、魔物に襲われる民にとっては不滅のダークヒーローである。

アタゴオル外伝ギルドマ:P119:2コマ目:植物女王ピレアのセリフ

「あいつの体の中は狂気でいっぱいだっ」

ヒデヨシがピレアの下僕「眠団」の針を受けて生命力が体外に引き出され、動きを止めたと思ったらギルバルスに起こされた。敵の能力を利用(悪用)して地面を爆発させまくるヒデヨシに対するセリフ。いまだかつて植物女王にこんなことを言わせた猫がいただろうか。ヒデヨシを止めるには酒か食い物の幻覚を見せる他ない。これ以外の手段でヒデヨシを止めることは不可能であるが哀れな植物女王はまだこのことを知らない。

 

テンプラの中に住んでいるものシリーズ

調べた範囲は先の項目と同じ。テンプラが、○○が✕✕なのは自分の中に△△が住んでいるからだと思う結末の話ってけっこうあった気がするので調べてみた。

 

コラ漫画文庫9巻:P258

「植物が住んでいるからだ…」

大斑花のごほうびとミハル苺の話。「春がくると何だか妙に嬉しくなる」理由。

 

MFコミックスシリーズ1巻:P25・7コマ目~P26

「三日月に始まり やがて満月に至る月が みんなの胸の中に住んでいる」

月祭りの話で、真に祭るべき月の正体。

 

MFコミックスシリーズ4巻:P74

「渡り鳥が住んでいるからだ」

トリキリ・トウ鳥の話で、コンタが旅立つシーン。渡り鳥たちが飛んでいるのを見ると「どこか新しいような気持ち」になる理由。

 

ざっと調べた範囲ではこんなところ。印象に反して似た結末の話が少なかった。MFコミックスシリーズでは前半に集中しているため、似た結末の話が多い印象になっていたようだ。テンプラの中には植物と三日月と渡り鳥が住んでいるらしい。さらに、番外の

MFコミックスシリーズ6巻:P50

「君の楽団が鳴り響いているからさ」

これを加えるとテンプラの中はますますにぎやかになる。テンプラは情緒の安定した物静かな人物にみせかけてその胸中は意外と騒がしいようだ。

 

読者が思い出したい(と思うかもしれない)こと

Q、ギルバルスの初登場回のタイトルと収録巻は?

A、「ギルバルス」スコラ漫画文庫シリーズでは1巻(⬇︎)に収録。

 

 

Q、唐あげ丸とヒデ丸の初登場回のタイトルの収録巻は?

A、「唐あげ床屋」スコラ漫画文庫シリーズでは「ギルバルス」と同じく1巻に収録されている。実はギルバルスの方が唐あげ丸&ヒデ丸よりも初登場が早い。 

 

Q、ツキミ姫の初登場回のタイトルと収録巻は?

A、「ツキミ姫のお菓子」スコラ漫画文庫シリーズでは5巻(⬇︎)に収録。

 

 

Q、時王が「アタゴオル」シリーズ本編に初登場した回のタイトルと収録巻は?

A、「噴キマショウ」MFコミックスでは3巻(⬇︎)に収録。

 

 

Q、珍しくヒデヨシが登場しない話があったが、タイトルと収録巻は?

A、「水晶散歩」スコラ漫画文庫シリーズでは4巻(⬇︎)に収録。

 

 

Q、星街に即興詩人(猫)が現れる話のタイトルと収録巻は?

A、「詩猫」MFコミックスアタゴオルは猫の森』では10巻(⬇︎)に収録。

 

 

Q、テンプラ、パンツ、ヒデヨシが眠って見た夢の話のタイトルと収録巻は?

A、テンプラの夢「絵の具を買いに」、パンツの夢「痛読街道」はMFコミックス14巻に。ヒデヨシの夢「海ノ王様」はMFコミックス15巻に。テンプラの夢「磁石牛」はMFコミックス18巻に、それぞれ収録されている。

 

 

おわりに。なんでこの漫画が好きなのか?

このままだとえらくまとまりのない記事になってしまうので、最後に、私がなぜこの漫画が好きなのかお話ししようと思う。まず、擬人化猫が好きだから、というのがある。実際の猫、動物としての猫のビジュアルが好きなので、その特徴を持ったキャラも好き。アタゴオルでは、2足歩行で服を着た猫たちが暮らしている。身長は人と同じぐらいだが、手足は猫のままなのがポイントが高い。

あと、風景が美しい。アタゴオルにはオリジナルの動植物がたくさんある。家々は果実の形をしていて大きなツルが通路になっている。猫なら難なく歩けるようなところでも人間なら難しそうだが、この世界の人間は平気で歩いている。ヨネザアドでもアタゴオルだけの風景なのかもしれないが何度見てもステキだ。アタゴオルの植物は巨大なのである。

食べ物の描写が偏っているのも面白い。猫が好きそうな魚介類と、ウドン・ダンゴ・丼・かき氷・コーヒー・餅ぐらいしか出てこない*6。猫が多い世界で魚介類の描写が細かいのはわかるが、料理がほぼウドンと丼しか出てこないのは作者の好みなのではあるまいか。ご本人が料理をする漫画家なら料理の描写がもっと細かくなりそうだが、そんなことは気にならない。それもアタゴオルの魅力である。だいたい、素材が良ければあまり加工しないだろう。アタゴオルは食材に恵まれているのだ。

要するにアタゴオルは、空気とご飯がおいしそうなのである。一度でいいから行ってみたいと思わせてくれる。パンツにはぜひ会ってみたい。あなたはアタゴオルのどんなところが好きですか?

 

以上。猫の日だったので、漫画『アタゴオル』について語りました。

マーケットプレイス(出品者)のみですが、一応、まとめ買いのリンクも。

 

 

 

※本記事は、2021年12月1日に加筆しました。

*1:「キリエラ戦記Ⅶ 網樹」 スコラ漫画文庫では7巻P46

*2:「テルウテ②」 MFコミックスでは4巻P113の6コマ目

*3:「テルウテ④」 MFコミックスでは4巻P160の6コマ目

*4:「テルウテ⑤」 MFコミックスでは4巻P181の3コマ目

*5:「キリエラ戦記XIII 網樹の右腕」 スコラ漫画文庫では7巻P137の4コマ目

*6:「テルウテ④」 MFコミックス4巻P154にはポンポロ魚の炊き込みご飯が登場している。