劇場版ポケモン『みんなの物語』は、どちらかというと大人むけの作品。

目次

 

今回は、劇場版ポケットモンスター『みんなの物語』の感想記事です。

ネタバレ注意! 

 

あらすじ

 舞台は風の街、フウラシティ。この街は人とポケモンの絆がルギアに認められ、ルギアが風を送ってくれるようになった。この街はその風を利用して発展してきたのだ。

 そのことに感謝し、ルギアにまた会うため、この街では毎年、「風祭り」が開催されている。この祭りの最終日にはルギアが現れ、恵みの風を送ってくれるという。

 しかし、今年の風祭りは例年通りにはいかなかった。最終日二日目にはイタズラされ、さらには山火事や毒霧の災害が起こり、街は危機に陥る。山火事を消す雨をもたらすルギアは、目印の聖火が持ち去られたせいで姿を現さない。

 この年、祭りに参加していた人々は、力を合わせてこの災害に立ち向かう!

 

私が今作は大人向けだと思う理由

・そもそもパラレルワールドの話

  テレビアニメ版のみんな(レギュラーメンバー)は、サトシ・ピカチュウ・ムサシ・コジロウ・ニャースしか登場しない。サトシの手持ちはピカチュウしかいないみたいだし、学校には行かず旅をしている。テレビアニメ版と時系列がつながっていない時点で、お子さんにはわかりにくいのでは。

 

・カガチがウソをつく相手は娘ではなく姪っ子

 風祭り中はカガチ・カガチの妹ミア・姪のリリィの三人で行動します。この三人、外見上は夫婦+娘でもおかしくありません。しかし、ミアはカガチを兄と呼び、リリィはカガチを「おじさん」と呼びます。そもそも、小さい子に姪だの伯父*1だのという概念が理解できるのでしょうか。この設定の時点で対象年齢が高めの気がします。

 

ゼラオラピカチュウのバトルシーンが短い

 伝説のポケモンが戦うところを見たい方は物足りないかも。ゼラオラはハンターの手持ちと、あとはサトシのピカチュウと戦うだけで、バトルシーンの尺が短い気がしました。ゼラオラにはもっとバトルしてほしかった。しかも、ハンター戦ではまだ傷が治っておらず、万全ではない。かっこよく撃退してほしかったです。ハンター戦ではサトシの引き立て役にされててかわいそうでした。

 

・事件の原因がわかりにくい

 今作で事件が起きる原因は、いくつかあります。色んな人がした色んなことが重なり合って大惨事になるのです。今までの、あるポケモンが狙われている⇒奪われたから大変なことが起きた⇒奪い返せば解決する、という流れではない。誰が何をしたかを覚えていないと、因果関係が理解しにくい。このため、ところどころで解説役のキャラが登場し、今何が起きているのかを説明し、お子さんたちが置いてきぼりにならないようにしています。しかし、こんな対策が必要な時点でまずいのでは。

 

・悪役らしい悪役が登場しない

 今作は、悪役らしい悪役が出てきません。災害の間接的な原因になるロケット団は登場していますが、明らかな悪意を持つ悪党は登場しないのです。これによって勧善懲悪のストーリーではなく群像劇 になり、お話が複雑になって、大人むけに。

 

観た感想。今作で一番好きなキャラはトリト君です! 

 勧善懲悪の物語だと登場人物がお話をつくるためのお人形になってしまい、役割は理解できても人格は感じられませんでした。これに対して今作は群像劇なので、登場人物も大人が感情移入しやすくなっています。街と祭りと人物の描写に前半の約60分が使われ、かなり肉付けされていて人間味があります。

 たまに会う姪っ子につい大げさなウソをついてしまう男性・カガチ。研究者としては優秀でも人づきあいは苦手な青年・トリト。自分のポケモンが亡くなってからポケモンを嫌うようになった老婆・ヒスイ。足をケガして以来、走るのをやめてしまった女子高生・リサ。みんなそれぞれに弱さを抱えていますが、今回の事件で弱さを克服します。

 過去の失敗をひきずり、挑戦を怖がり、なかなか変われない。これは大人の特徴だと思います。リサは高校生なので、もうかなり大人の精神構造をしているのです。

 今作のポスターはポケモンが控えめで人間キャラクターが目立っていました。伝説ポケモンが大きく描かれていないのが新鮮です。このポスターから、悪役は登場しなさそうだとは思っていましたが、まさかここまでゲストキャラが活躍するとは思っていませんでした。今作に出演された方々は、過去作に出演された方々よりも、出番が多くてラッキーだったのではないでしょうか。

  今作に登場する伝説ポケモンはルギアとゼラオラですが、ルギアは終わり近くに登場して雨を降らせるだけで、活躍するのはゼラオラです。この伝説の2匹はしゃべりません。テレパシーを使わず、言語で人と意志疎通しないのです。いいな。私、ポケモンはしゃべらないほうが好きです。

 今回の大惨事はロケット団の三人組みがトリトの研究所からあるものを盗んだことが引き金になっています。これが街の人たちにバレたら吊るし上げられそうで怖い。どうか、誰にもバレませんように!

 本家シリーズはまだプレイしてるけど、アニメは卒業しているという人。子どもに混ざって劇場版を見るのは恥ずかしいからスルーしているという人。今作はそんな、大人のポケモンファンに観てほしい作品です。背景美術、フウラシティの風景が美しくてすばらしい。私は背景の街もよく観たいので、長めに描写してくれたのはうれしかったです。せっかく観ているんだから、サトシと一緒に舞台の街を観光したいと思っていました。

 四宮義俊さんが描いた公開記念アートでは、研究者・トリト君が真ん中を歩いています! 以下、公開記念アートが見られるサイトへのリンクです。

https://natalie.mu/comic/news/290283

 うつむいて白衣をはためかせるトリト君が大人っぽくてかっこいい! この絵のメインはサトシじゃない。今作の登場人物ではトリト君が一番好きな私にはうれしいです。トリト君はあの、頼りなげな声と表情がマッチングしててかわいい。トリト君は、友達でも兄弟でも恋人でも夫でも問題ないタイプの男性だと思います。何歳か知らないけど。なんにせよ、身近にいたら助けたくなるタイプの人。フィクションで出てくる気弱キャラって、10代の女性か子どものイメージだったのですが、トリト君は大人の男性です。この点も新鮮でした。現実には気弱なまま大人になっちゃう人もいます。ポケモン映画はいつの間にこんな、リアルな人間が描けるようになったんだ。やっぱり今作は大人むけでしょう。

 

以上。大人むけ劇場版ポケモン『みんなの物語』をご紹介しました。

 

追記:一部訂正しました。

 8月29日は公開中最後の水曜日なんじゃないかと思い、前回に受取り損ねたゼラオラを受け取るべく、ウルトラサンを挿した初代3DSを持って再び劇場へ。無事にゼラオラをゲットしました。

 2回目だとストーリーではなく演出などを見ている余裕ができていいですね。もう一度観て確認したのは、風祭りを開催する理由に、ルギアへの感謝は明言されていないこと。風祭りをするのはルギアに恵みの風を送ってもらうためでした。ルギアに感謝するため、というのは私の脳内補完だったようです。 また、風祭りの会場がイタズラされたのは最終日ではなく二日目でした。失礼しました。

 他に確認したのは、トリト君の手持ち。ラッキー・ドーブルヒトデマンに加え、ラフレシアラランテスも手持ちのようです。ラランテスは、そこにいるだけで画面が華やかになっていいですね! しかし、5体もいるとは。トリト君、トレーナーじゃなさそうなのに手持ちが多いな。

 確認したというより気になったことは、トリト君の立ち姿はいつも、少し膝が曲がっていること。つまり、彼はいつも少し猫背だってことかな。自信がない人は猫背になりがちだから、そのへんも表す姿勢なのかも。姿勢で性格を表すなんて、なんて細やかな演出なんでしょう。

 トリト君は作中で(私の記憶によれば)2回、「僕のせいだ」と言います。責任感が強いのか、自罰的な性格をしているのか。まさか、「そんなことないよ」って慰められるのを待っている? だとしたらちょっと子供っぽいけど。今回の一件で、少しでも自信をつけてくれたらいいなと思います。エンドロールでは自分で発表(?)してたし。

 どこかのポケモン関係のスレで指摘されていた、ラッキーの作画崩壊は確認できませんでした。DVDのレンタルリリースまで待ちます。以上。

 

※本記事は、2018年8月29日に修正・加筆しました。

*1:「叔父」と書いているサイトもありました。しかし、相手が自分の親よりも年上の場合「伯父・伯母」と書くので、リリィの母ミアの、兄であるカガチはリリィの「伯父」と表記するのが正しいと筆者は判断しました。