町田洋さん作『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』は夏にこそ読んでほしい。

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今回、ご紹介するのは町田洋さんの作品『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』。

どちらも夏にオススメ。季節感のある作品はリアルの季節と一致している時期に読みたい。一致していると臨場感があっていいと思います。

以下、リンクを兼ねた表紙の画像です。

 

 

 

 実はどちらも短編集です。先に出た『惑星9の休日』は全話書き下ろしでたむらしげる氏推薦、後に出た『夜とコンクリート』はウェブで連載されていたというちがいはありますが。どちらもあらすじは紹介しづらいので、ちょこっと概要を書くと、『惑星9の休日』はタイトルの通り辺境の小惑星9で暮らす人々の話。『夜とコンクリート』の舞台は現代日本なのですが、ほんのりSFの香りがします。夜空のシーンが多め。

 それでは以下、この2冊の収録作の中から夏にオススメの作品をピックアップしてご紹介しましょう。

 

『惑星9の休日』で夏にオススメの作品

 『惑星9の休日』からは

・とある散歩者の夢想

・午後二時、横断歩道の上で

をおすすめしたい。

 「とある散歩者の夢想」の登場人物にはセリフがなく、顔が描かれていません。主人公の外見は、たむらしげる氏のキャラクター「星人間」の土星版を思い起こさせます。読者はこの主人公の独白とともに、彼のお散歩につきあうことになるのです。主人公は「何が起こっても楽しい。何も起こらなくても楽しい」(同書 P130より)と思いながら、小銭だけをポケットにつっこんで、形が気に入った雲の方角へ一人、ぶらぶらと歩きだします。そして、海水浴をしたりソフトクリームを食べたり公園で一休みしたりコンビニによったりして家路につくのです。背景や小物が夏っぽい。すっきりした絵柄のおかげなのか、そんなに暑さは感じませんが。昼間に出発したのに、帰るころには夜になっています。惑星9は隕石の衝突で地軸が傾くほど小さいので、一日が意外と短いのかもしれません。そうじゃないとこれ、お散歩っていうよりおでかけですよね。半日外出してるんだから。

 「午後二時、横断歩道の上で」は、惑星9にある車の整備工場で働く人たちのお話。惑星9は小さいせいかよく停電します。このせいで社長がエレベーターのドアに挟まったままになってしまったので、同僚の女の子が家まで主人公を起こしに来ました。しかし、二人で引っぱっても、太った社長のお腹がドアにつっかえて抜けません。仕方なしに電気の復旧を待つ三人ですが、社長が冷凍庫にアイスがあることを思い出しました。溶けてしまったらもったいないので、溶ける前に三人で食べてしまうことに。

 三人がアイスを食べながら電気の復旧を待っていると、意外に早く電気が復旧しました。これでエレベーターのドアが開くから一安心、と思う三人でしたが、なぜかドアは開きません。どうやらエレベーターは故障しているようです。仕方なく二人は社長の腕を引っぱって、社長をエレベーターから救出しました。あとは整備会社の人にエレベーターを点検してもらって、この一件は終わり。二人は横断歩道を渡り、お昼を食べに行きます。二人が横断歩道を渡るシーンの見開き(P154,P155)は必見! きっと読者も主人公と同じことを思うでしょう。ヤシの木、アイス、入道雲! そして信号がない横断歩道! これぞ夏! 横断歩道はちがう気がするけど!

 

『夜とコンクリート』で夏にオススメの作品

 ここは「夏休みの町」で! 8月中に読むと臨場感がある! 「青いサイダー」と迷ったけど、やっぱり「夏休みの町」で!

 主人公の大学生ソウくんは、バーベキューの準備で登った山で、一台の戦闘機をみつけます。ソウくんの友人によると、この戦闘機は第2次大戦中に行方不明になったフランス機だとのこと。

 なんでまたそんなものが、こんなところにあるのか。わからないまま、特に気にすることもなくソウくんが友人とサッカーをしていたら、ボールが茂みに跳びこんでしまいました。しかも、そこには一人の老人がいたのです! ボールが当たってしまったらしい老人に謝る二人。しかし老人は立ち去れと言うばかり。ソウくんは老人の落し物らしきスティックを手渡そうとしますが、なぜかそのスティックから謎のビームが! あわてて逃げ出したソウくんと友人たち。あの老人は何者なのか? あのビームは何なのか? 老人の謎が解ける時、夏休みの町の謎も解ける!

 以上が「夏休みの町」のあらすじです。このあとソウくんは老人に協力することに。この老人は66年前、自分のかわりに未確認飛行物体にさらわれ、行方不明になった戦友を探しているというのです。この老人は第2次大戦当時、フランス空軍のパイロットでした。

 花火大会&バーベキューのあと、ソウくんと老人はついに、老人の戦友が捕らわれていた「ドーム」にたどり着きます。「ドーム」とは、捕らわれた人間にとって理想の世界をつくりあげる、牢のようなもの。おそらく、捕らえた人間が逃げたいと思わないように、こんな設計になっているのでしょう。

 ネタバレ防止のため、ソウくんが暮らす「夏休みの町」の秘密はここでは明かしませんが、この記事を読んだ方はすでに察していらっしゃるかも。

 最後に。「夏休みの町」は、大人の方に読んでほしいです。理想の世界で思いっきり遊んだら、現実に帰ってきてほしい。しっかり遊んで休まないと、アナタも「ドーム」に、いや「夏休みの町」に捕らわれたままになるかもしれない。「帰りたくない」と思う大人ばかりにならないように、日本人にも長期のバカンスを! 特に夏季休暇を! そして、みんながソウくんと同じことを決断できる大人になりますように。

 

以上。夏にこそ読んでほしいマンガ、『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』を

ご紹介しました。他の収録作も、静かでジーンとします。