ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

マンガ『映画大好きポンポさん』=映画愛×創作論×成長物語

目次

 

今回、ご紹介するのは、漫画『映画大好きポンポさん』。ウェブ漫画が書籍化された作品で、出版社は(株)KADOKAWAです。以下、リンクを兼ねた表紙の画像。

 

こちらが1巻。この少女がポンポさんです。

  

こちらが2巻。


本作は、映画にやたら詳しいことしか特技がない青年ジーン君の成長物語を軸に、作者の人間プラモさんの映画への愛と、物語の創作論が語られる名作です。
2巻も出ていますが、1巻には巻数表示がなく、1冊だけで完結する予定だったことが伺えます。2巻のあとがきマンガによると、2017年4月の時点では2巻を描く気がなかったようです。そのため、本作の2巻は、全編描き下ろしとなっております。なんて豪華なんでしょう!
それでは以下、この作品について解説していきます。

 

映画大好きポンポさん1・2あらすじ(ネタバレ注意)

映画通であることしか能がない青年ジーン・フィニは、映画配給会社ペーターゼンフィルムで働いている。この会社を仕切っているのは、美少女すご腕プロデューサー、ジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネット。祖父から才能とコネクションと会社を受け継いだ彼女の通称は、ポンポさんという。
ジーンは、たくさんいる若手スタッフのなかから「目が死んでいたから」という理由でこのポンポさんのアシスタントに選ばれ、撮影現場で労働と勉強の日々を送っていた。
そんなジーンはある日、ポンポさんに新作映画「マイスター」の脚本を読まされる。そして、この新作の監督をしろと命じられた。突然監督に任命され、最初は戸惑うジーンだが、自分が今まで映 画の勉強をしてきたのは、いつか映画を撮る側になるためだったのだと気づく。ジーンは思い切って監督業に身を投じた。

この物語は、現実の世界を捨てている男ジーン・フィニが、雇われアシスタントからフリー監督になるまでのお話。

 

読んだ感想

2巻の創作論はすごく勉強になるので創作で身を立てたいと思っている人にはぜひ読んでほしいです。
続編映画にからめて本作の2巻の存在を暗に語り、メタフィクション的になっているのが面白かったです。しかし、一番面白かった部分はここじゃない。2冊とも読んで一番面白かったのは、1巻と2巻でのポンポさんのギャップです。ポンポさんの、1巻での無敵の天才プロデューサーっぷりは2巻では影をひそめています。2巻のポンポさんは、ジーン君を監督に起用したプロデューサーのウェズさんに頭を下げ、ジーン君が完成品を破棄して逃げた「マックスストーム2」を、なじみのコルベット監督とともに必死に編集して完成させます。あのポンポさんが他人のフォローにまわっているのです。これは驚きの展開でした。ポンポさんがキレてジーン君に映画対決を申し込む気持ちもわかります。大迷惑でしたからね。
2巻を読み終えて思ったことは、ジーン監督がポンポさんから援助を受けるのは今回だけでは済まないのだろうな、ということ。フリー監督の身で、自力でスポンサーを探して資金調達ができるほどの信頼を得るためには、あともう何本か撮ってヒットさせる必要があるでしょう。次回作でも、撮影が始まったけど資金が足らなくてポンポさんに泣きつくというパターンを繰り返しそうな気がします。若きジーン君は誰から見ても映画に一途であることが明らかなので、周りの人はつい助けたくなってしまうのでしょう。ジーン君は熱意と才能があるゆえに、ある意味愛されているのだと思い ます。今は若気の至りで許されているジーン君ですが、いつか許されなくなる時が来るでしょう。その時こそ、ジーン君が一人前の監督になった時なのだと思います。
そして、いつの日かジーン監督の「武勇伝」が、映画監督を目指す若者の間で伝説になるのでしょう。その伝説が「試写会で、完成品のフィルムを上映する前にお遊びで作ったフィルムを流したらしい」みたいに、マイルドになるか。それとも、「監督を受けておきながら作品を完成させず、試写会から逃げた」といった過激な感じになるかは後世のお楽しみですね!

 

以上。漫画『映画大好きポンポさん』をご紹介しました。創作に行き詰っている人はぜひどうぞ。カバー下の漫画もありますよ!