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【完結マンガ】星をつくるSF漫画『果ての星通信』はモフモフの宇宙人がかわいくてほっこり

目次

 

今回ご紹介するのはウェブ漫画「コミックPASH!」で連載されていた、メノタさん作『果ての星通信(はてのしょうつうしん)』です。単行本は5巻が出て無事に完結しました。

 

1巻の表紙。アマゾンへのリンクを兼ねています。

右にいるのが主人公のマルコ君。マルコ君に抱えられているのがマウー。

左にいるのがキアラ星人のレゾルちゃん。

 

本作は、宇宙中からランダムに選ばれた人たちが「果ての管理者」になり、卵から星を育てて宇宙に設置する日々を描くお話です。果ての管理者はそれぞれの支部局に派遣されて働くので「局員」と呼ばれています。局員の任期はなんと10年間*1しかも、この制度を知らない人でも選ばれます。

主人公も、この制度を知らないのに選ばれた人のひとりです。名前はマルコ。マルコは、ロシアのサンクトペテルブルクで暮らす青年でした。大学卒業を機にアパートを引き払って恋人と旅に出ようとしていた彼は、恋人と電話している最中に体がボロボロと崩れ出し、強制的に転送されてしまいます。

マルコが転送された先は「モスリ」という星。マルコがモスリで先輩局員の宇宙人から聞かされたのは、任期を終えるまでは地球に帰れないということ。しかも、仕事は星を作って宇宙に放つことらしい。

急な事態に戸惑い、帰れないことに怒り、モスリからの脱出を試みていたマルコはやがて仕事に慣れ、ある事故をきっかけに星づくりに専念するようになります。2巻では局員になることの特典やナナギさんの過去が明かされたり、他の星の文化が描かれたりと内容に深みが出てきて面白くなっています。3巻ではちょっと荒っぽいことが起きた後にしんみりしたり、子供向けのSF長編小説が出てきたり。あと、幼星を入れているフラスコの謎が明かされたのもよかった。少しずつ世界観を明かしながらもSF臭をさせすぎない作品が好きです。

 

主な登場人物(主に異星人)

マルコ:主人公でロシア人の青年。フルネームはマルコ・ロウノワヴィチ・ウルサズカ。年上の恋人がいる。10歳の時に雷に打たれて目印をつけられ、22歳で果ての管理者(通称:局員)に任命された。宇宙人は苦手だがモフモフのものは好きなので、マウーのことはかわいがっている。

マウー:船内事故で双子の兄弟を亡くし、マルコに保護されたロノウトギ星人の子供。出生時のバグのせいで他のロノウトギ星人と記憶を共有しておらず、他のロノウトギ星人とは異なる意志を持つ。かなり適応力がある性格をしており、マルコより先にモスリに馴染んだ。宇宙図書館の司書になるのが夢。

局長:長い腕を持つ先輩局員。第4アクズ星人。仲間たちとは時間感覚が異なっており、局長の1日はマルコの20日に相当する。他の局員よりも長くモスリにいるのでみんなから「局長」と呼ばれている。舌が1枚しかない種族には本名が発音できないらしい。相手が恐がるものに変身する能力を持っており、本来の姿は虫っぽい。自動的に変身してしまうので普段は着ぐるみを着用している。

ナナギ:外見は地球人に似ている赤毛の先輩局員。局員の特典を利用して貯金している。実は倒産したおもちゃ会社の御曹子。フレンドリーなダ・ココバ星人で、健康のためにサラダ感覚で岩塩を食べる。手袋の下の手はカニのようなハサミになっている。このハサミは物を切るよりも叩くほうがむいているらしい。

フィッツィー:のんびりしたソルフェ星人の医師。いつもヒールがあるクツを履いている。任期中の局員には死んでも復活するという特典があるため、医者の出番があまりないことに不満を持っている。ソルフェ星人の、カブトムシの幼虫のような手は、患部を傷つけないように柔らかかつ器用に進化した結果らしい。

ゾル:フルネーム(?)はレゾルタルパ。鉱物類を食べる、キアラ星人の少女。キアラ星人は唾液で金属も溶かせるらしい。ひょんなことからマルコの脱出に協力することになる。マウーとは言葉が通じないが仲良し。将来は局員になりたい。

カノーウィ博士:局長がマルコのために探し当てた人物。妻と猫とともに個人用宇宙コロニーで暮らしているホサカ人。引退した寄生虫学者で、現在は釣り人。物体をすり抜ける「幽霊魚」を釣ることが夢なので、快くマルコに協力してくれた。

上の人:この宇宙の創造主的な存在。自分が作った星しかない宇宙に飽きて「果ての管理者」制度をつくり、休職していた。決まった姿を持たず、相手が想像するものに変身する。退屈を紛らわすためには局員が必要なので局員の願いは叶えることにしているが代価を要求する。後に仕事に復帰した。

 

こんな人にオススメ!

・SFに興味はあるけど専門用語まみれなのはイヤな人

・異文化交流ものが好きな人

・モフモフの宇宙人に癒されたい人

では、それぞれについて以下に詳しく。

 

SFに興味はあるけど専門用語まみれなのはイヤな人:SFやファンタジーにはお約束や専門用語があり、それがわからないと楽しめないことがありますが、この作品にはSF用語はあまり出てきません。星に産卵させる➡︎卵を包んで花火にする➡︎花火から星を作る➡︎好みの要素を注入して育てるという、SFよりもファンタジー寄りでフンワリしている感じ。「閉じた星」や「開いた星」という言葉は出てきますが、これは本作独自の言葉なので作中で説明されます。SFは専門用語がわかりにくそうで敬遠している方には本作がオススメ。小難しい言葉は出てこないよ!

異文化交流ものが好きな人:これは以前の記事で紹介した『ヘテロゲニアリンギスティコ』にも通じている部分です。私はこういう異文化(特に異種族)交流ものが好き。その場でただ一人の人間(地球人)として奮闘する主人公にはつい感情移入してしまい、応援したくなります。私はこういうシチュエーションが好き(ただし異世界転生は除く)。同好の士にはオススメ。

モフモフの宇宙人に癒されたい人:この物語の主人公はマルコ君なんだけど、私はついマウーに注目してしまいます。ロノウトギ星人は大人も子供もモフモフ。成長してもペンギンみたいに換毛してしまうことはないらしい。ロノウトギ星人の顔は少しハエトリグモに似ています。おまけにロノウトギ星人にはタコのような腕と数本の足がありますが、体はフワフワでとにかく愛らしい。ハエトリグモの顔とタコ触手とモフモフの体をミックスして、かわいい宇宙人を生み出すなんて、メノタさんは天才! しかもマウーは子供でマルコに懐いており、しぐさがいちいち可愛くて癒されます。あなたもマルコ君のようにモフモフ好きなら、きっとマウーのことも好きになるはず。

 

以上。メノタさん作のSF漫画『果ての星通信(はてのしょうつうしん)』をご紹介しました。

 

追記:ネタバレするとマルコは無事に任期を終えて地球に帰り恋人に再会するのでハッピーエンド好きの方にはオススメですが、この制度の根本的な問題(理不尽さ)は作中で解決していません。マルコは脱走に失敗しますし、この制度が宇宙人たちに広く知らされることもありません。幸いにしてモスリ支局では後任者の指名制度が採用されましたが、他の支局ではランダム選出のままらしい。この制度を広報すれば立候補者も現れるかもしれないのに。特典を明らかにし、立候補制を採ればいいのではないかと思いますが。作中の問題が完結までに解決しないのが嫌な人にはおすすめできない作品です。

 

掲載先へのリンク(⬇︎)

pash-up.jp

   

本編がお気に召したら単行本をどうぞ。

設定資料や4コマ漫画といったオマケ要素も満載です。

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※本記事は、2021年5月に修正・加筆しました。

*1:上の人いわくこれでも任期を減らしてやったらしい。最初期の任期は終生だったとか。任期を寿命よりも短くしてやった時点で、上の人にとっては慈悲深い判断だったのかもしれない。