ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

「ニッケルオデオン」と『25時のバカンス』と「アタゴオル」。短編集っていいよね。

お題「「好きなマンガ」ベスト3」

今まさに好きなマンガということは、売りも捨てもせずに本棚に残っている作品だろう。つまり、現在本棚に残っているラインナップの中に、お題に答えられる作品ベスト3があるはずだ。そう思って自分の本棚をしげしげと眺めてみたが、続きモノの場合はただ物語のオチを知りたいがために新巻を買っていることに気がついた。つまり、何巻も続いていて棚を占めている作品に限ってそんなに好きではないのである。もちろん個人的に面白いと思っているから買っているし読み続けているのだが、改めて好きかときかれるとそうでもなかったりするので、基本的に完結した作品は容赦なく処分している。

だったらどんな作品が好きかというと、ぶっちゃけ短編集が好き。ダラダラと長く連載されている大長編だと設定の矛盾が出てきて整合性がなくなってきたりするし、ツッコミどころや気になる部分が増えていき、素直に楽しめなくなってくるから。あと、登場人物が増えて人間関係が複雑になってくると覚えきれないというのもある。

長編よりも短編のほうが好きなのはわかったが、じゃあなぜ短編が好きなのか説明してみろ、と言われたら嬉々として説明できる。私が考える短編の長所を列挙すればいいだけなので簡単だ。

私が考える短編の長所は以下である。

・気軽に読める

・すぐに読み終わる

・登場人物が少なく人間関係が単純

・芯にあるアイデアが面白い

以上。すべて私の主観なので、読者の脳内で(ことが多い)を付け加えておいてほしいが。

短編集は基本的に1冊に収まっていることが多い。だから、初めて読む作家でも気軽に買って電車の中ででも読み始めることができるし、私なら2時間ほどで読み終わる。短編集はすぐに読み終わって長持ちしないのでコスパが悪く見えるかもしれないが、手元に置いて繰り返し読みたいと思える作品集に出会えれば意外と長持ちするので、むしろコスパがいい。それに、短い話であればあるほど登場人物は少なくなり、アイデア勝負になっていく。少ない情報量と研ぎ澄まされたアイデアが共存するという奇跡を常に起こしているのが短編集なのである。

ここまでつらつらと短編の長所をお伝えしてきたが、結局おまえの好きな作品は何なんだと。いいかげんで知りたいという読者の方もいると思うので、一応、タイトルとちょっとした解説をつけてお送りしよう。以下、作家名は敬称略でお送りする。

 

私(Mee6)が今のところ好きなマンガ、ベスト3

3位、道満晴明作『ニッケルオデオン(赤)』

道満晴明作の「ニッケルオデオン」シリーズには緑・赤・青の3巻がある。久しぶりに3巻とも読み返してみた結果、どの巻にも好きな作品があって迷ったが、今回は赤を選んだ。収録されている13作の中で特に好きなのは、アホみたいにあっけないオチの「ファニーゲーム」と、タイトルの意味が明確な「ウォレン=ウィルソンは二度殺される」、美少女がバラバラになる「回収委員と幻肢痛」の3作である。なにぶん短編なのでこれ以上のあらすじは割愛する。私は他にも「メランコリア」シリーズ上下巻も読んでいるのだが、あちらはメランコリア彗星にむけてパズルのピースがはまっていくのを見る群像劇だと思う。少なくとも「ニッケルオデオン」シリーズほどの変態度はない。道満晴明入門としてはあちらのほうがオススメではあるが、私の推しは断然「ニッケルオデオン」シリーズである。なんといってもこちらのほうが変態度は上だし、何よりカバーの手ざわりがいい。ぜひ紙の単行本をお買い求めください。

 

2位、市川春子作『25時のバカンス』

市川春子作の短編集には他に『虫と歌』があるのだが、私は『25時のバカンス』派である。昼・陸のイメージである『虫と歌』に対して、『25時のバカンス』は夜・海のイメージだ。私は昼夜だと圧倒的に夜が好きなので、この2冊では『25時のバカンス』が好き。「宝石の国」に登場する知的な貝はここから生まれたのではないかと思わせる表題作「25時のバカンス」、土星の衛星パンドラにある女学院が舞台の「パンドラにて」、王子の正体が意外な「月の葬式」の3作が収録されている。個人的には美少女率が高めで実はロボットものの「パンドラにて」が一番好き。何がいいって、女学院の制服のデザインがよすぎる。あと、不良組の制服の着崩し方が個性的で素敵。学院の運営目的が予想外なオチに繋がっているのもいい。市川春子作品は詩的なライトSFだと思う。市川春子作の短編集はカバーに透明で凸凹した特殊な印刷がされており、電子版では表現しづらい美しさがあるので、やはり紙の単行本をおすすめする。

 

1位、ますむらひろし作『アタゴオル』スコラ漫画文庫シリーズ

アタゴオル」シリーズは40年も連載されていたそうだし、私が知るだけで28冊も単行本があるので、ここでは大ざっぱにスコラ文庫版を選んだ。最初に読んだバトル長編シリーズ「キリエラ戦記」は文庫版に収録されていたし、文庫版には絵柄が安定していなかった頃の作品もあって面白い。特に5巻では別人が描いたのではないかと思うぐらいに絵柄がちがい、絵本の挿絵のようにほんわかした画風で線が細く、登場人物がみんな丸みをおびている。おまけにどのコマも全体的に白っぽくて明るい。次の巻(6巻)からシリアスな「キリエラ戦記」シリーズが始まるとは思えない穏やかさである。「アタゴオル」シリーズはメディアファクトリーからも単行本が出ており、判型的にも絵柄的にもあちらのほうが読みやすい。しかし、主要登場人物が初登場するのは文庫版だし、文庫版のほうが作者の感性が凝縮されている感じがするので私は文庫版を推す。文庫版に収録されている中で強いて一番好きな作品をあげると「タルダリ大帝Ⅱ 眠りの岸辺」だ。最終コマが美しいので何度見ても飽きない。このコマを夏に見ると涼しい気分になれるのでオススメ。

 

以上。私の蔵書から好きな漫画ベスト3をご紹介しました。以下は商品リンク集です。

 

アマゾン商品リンク集

マーケットプレイスのみだが意外と安価な3冊セット。

どの巻も甲乙つけがたいのでまとめ買いがオススメ。

  

 やはりあったセット売り。2冊だと金額も知れているので入門にオススメ。

  

こちらもマーケットプレイスのみ。最新巻というと連載中の印象があるので最終巻と表記してほしいところである。