ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

道満晴明さんの『ヴォイニッチホテル』。登場人物がみんな楽しげな漫画。

目次

 

今回、ご紹介するのは、道満晴明(どうまん せいまん)さんの

マンガ『ヴォイニッチホテル』。全3巻で、秋田書店から出ています。

以下、リンクを兼ねた画像です。

 

3巻一度にお見せしようと3冊セットの画像を貼ったのですが、ちょっと小さかったですね。3冊セットの出品はマーケットプレイスのみ。ちょっと残念です。

 

それでは以下、この作品を解説していきます。

 

あらすじ

舞台はホテル「ヴォイニッチ」。このホテルは太平洋の南西に浮かぶ小国・ブレフスキュ島にある。スペイン兵がこの島に侵攻してきた時、三人の魔女、通称「三人の母」がスペイン兵と戦ったという伝説が残っている。

歴史上、スペイン兵に敗北したことになっている三人の魔女は姿を変え、いまだこの島で生きていた。

そんな島にあるホテルに来た主人公は、アニキとともに組の金を持ち逃げした元・ヤクザ者のクズキ・タイゾウ。 

ホテルのメイドのエレナに惚れられて、島でデートをしたりして過ごすうちに、組が雇った殺し屋が島へやってくる。しかし、彼らは全員、タイゾウを殺すことに失敗する。ある者は殺人鬼に、ある者はエレナに始末された。

メイド・エレナの正体は?  はたして、タイゾウは無事に島を出られるのか?

 

解説+読んだ感想(ネタバレ注意)。主人公が活躍してない!

はい。ここまであらすじを書いといてなんですが、ぶっちゃけ、主人公はそんなに活躍しない! タイゾウの知らないところで事件が起き、タイゾウが(ほとんど)知らない人が解決していきます。タイゾウの役割は、

・新しい人物を登場させること

・エレナに行動の動機を与えること

ぐらいのものです。

タイゾウと、子供たちの探偵団に焦点が当たっています。そのため、タイゾウ又は探偵団に関わる人たちが順に登場。ヤクの売人・幽霊・刑事ロボット・悪魔など。タイゾウが追われる身であるおかげで殺し屋たちも登場しますが、実は魔女の生き残りであるエレナに瞬殺されてしまいます。

エレナは三姉妹の末っ子ですがやたらに強く、殺し屋を始末し、悪魔を成敗し、組の連中を返り討ちにします。圧倒的勝利! このエレナの活躍のおかげで、物語の半分は進んでいきます。

物語のもう半分は、探偵団を軸にした殺人鬼「スナーク」探しです。スナークはブレフスキュ島に住む女で、行きずりの男と寝てはその男をバラバラにして殺すことをくりかえしています。

スナークの凶器は両手の義手。これはスナークが悪魔と契約して得たもので、料理にも人殺しにも使える便利アイテムです。もちろんその代償は大きく、契約の期日が来ると、スナークは幼い妹を遺して死んでしまいます。こうしてスナーク事件は、表向きには犯人不明のまま終結。スナークの正体を知っているのは探偵団のリーダーのみでした。

多少の死人は出ますが、一応、ハッピーエンドの作品です。一番の見どころは、エレナが魔女であることがタイゾウに伝わるのは、いつ・どんな形であるか、でしょう。さすがにその点までネタバレするわけにもいかないので、本編を読んでいただければ、と思います。

最後に。この物語ではけっこう死人が出るのに、読んでいて気分が悪くなりませんでした。それはなぜか。画風もあると思いますが、なにより登場人物がみんな、それぞれの人生(悪魔生)を楽しんでいるのが伝わってくるからでしょう。たとえ死んでも、それは自分が選んだ生き様の結果です。作中の死人たちは、自分を殺した相手を(ほとんど)恨みません。各々の生き様がぶつかりあった結果、負けたほうが死んでいるだけ。それが、読んでいて気分が悪くならない理由かと。

組の連中以外には、悪人らしい悪人は出てきません。どの人物にも、好きになれるポイントがあると思います。みなさんもこの、南の島の(人が死んだりする)ハッピーエンドをご覧になりませんか?

 

以上、道満晴明さんのマンガ『ヴォイニッチホテル』の紹介でした。

 

※本記事は、2019年9月26日に微加筆して修正しました。

 

 

 

 

追記:新刊『メランコリア』(上巻)に、エレナちゃんが登場している!

2018年3月に発売された新刊『メランコリア』(上巻)の第4話「入室禁ず」に、エレナちゃんと後輩メイドのマルタちゃんという娘が登場しています。これは『ヴォイニッチホテル』の後日譚らしい。エレナちゃんはタイゾウさんといっしょにブレフスキュ島に住んでいるのか? 二人は結婚したのだろうか。二人のその後が気になります。