ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

メキシコが舞台の映画『ブック・オブ・ライフ』。『リメンバー・ミー』と見比べると面白い。

目次

 

今回、ご紹介するのは、メキシコが舞台の劇場版アニメ

ブック・オブ・ライフ 〜マノロの数奇な冒険〜』。

以下、iTunesへのリンク(吹き替え版)です。

 

 

リメンバー・ミー』と同様にメキシコの「死者の日」を題材にしています。

この2作を見比べるとおもしろいです。

ブック・オブ・ライフ』は、『リメンバー・ミー』とは逆に大人が主人公です。

物語は主人公マノロ、親友ホアキン、ヒロイン・マリアの幼少期から始まるので

てっきり子どもたちが活躍するのかと思いきや、マリアは早々に修道院

行儀見習いに出されてしまいます。物語が進むのは、三人が大人になってから。

三人がそれぞれの力で自分の道を切り開いていくという、主体的な物語です。

悪役は凶悪な盗賊のボスなので、同情せずに観られるのもいいところ。

それでは以下、あらすじと感想などを。

 

あらすじ(ネタバレ注意)

問題児たちがバスで博物館にやってきた。

係員のお姉さんは問題児たちを秘密の部屋に案内し、男女三人の人形を見せながら、

ある年、メキシコの「死者の日」に起こったことを話した。

 

物語の舞台は、メキシコの中心の町サン・アンゲル。

そこには三人の子どもが住んでいた。

代々闘牛士の家に生まれたが、音楽家志望でギターを弾く少年、マノロ。亡き父のように勇敢な男になることを夢見る少年、ホアキン。将軍の娘、おてんば少女マリア。

この三人を見ていた神、男神シバルバと女神ラ・ムエルテは、

支配する国を交換するために、賭けをした。

「どちらの男の子がマリアと結婚するか」。

ホアキンならシバルバの勝ち、マノロならラ・ムエルテの勝ちだ。

 

ある日、マノロとホアキンとマリアは豚を囲いから逃がして叱られ、

マリアは修道院に行くことになってしまった。大人になるまで、三人は離ればなれ。

マノロとホアキンは気落ちしたが、いつか帰ってくるマリアのため、

自分を鍛え続けて大人になった。今では二人とも、たくましい男だ。

 

マリアが帰ってきたのは、マノロが初めて闘牛場に立つ日だった。

今日こそマリアに自分の雄姿を見せて、彼女の心を射止めようと決意したマノロ。

華麗なマントさばきで牛を弱らせたが、牛にトドメをささず、

観客からブーイングを受ける。マリアはマノロの優しさに拍手するが、

マノロの父は息子を許さなかった。

 

マノロはめげずに、マリアからもらったギターで、マリアに愛の歌を唄った。

橋にマリアを呼び出し、マリアに愛を告白したマノロ。

このままではマノロがマリアと結婚し、自分が賭けに負けてしまいそうだと思った

シバルバはヘビを遣わしてマリアを噛ませた。

 

自分のせいで、マリアを死なせてしまった。マリアに会いたいと願ったマノロは、

シバルバによって死者の国へと送られた。後に判明したことは、

マリアはまだ生きているということ。シバルバは賭けに勝つため、ホアキン

マリアを目覚めさせ、ホアキンとマリアを結婚させようとしていたのだ。

 

シバルバの不正を知ったマノロは、自分を生き返らせてもらうべく、女神ラ・ムエルテに会いに行く。その頃、町には盗賊チャカールが迫っていた。

神々の賭けに巻き込まれた三人は、自分の人生を切り開くために戦う。

マノロはマリアに再会し、自分の願いを叶えることができるのか。

 

感想など。迷惑だけど結果オーライ!

 マノロは牛を殺したくありませんが、父を悲しませたくもないし、世間体もある。マノロは家業と夢との間で、葛藤しながら育ちました。マノロはこのせいで闘牛場の夢まで見ていたらしい。

 これを知ったシバルバは、マノロが生き返るために受ける試練の内容を、「今まで自分の一族が殺した、すべての牛を倒すこと」としました。てっきり、マノロは闘牛を恐がっていると思ったのです。

 しかし、マノロが恐れていたのは、みんなに本当の自分を見せることでした。試練の闘牛場で、背負っていた剣とギターを弾き飛ばされたマノロは、剣ではなくギターを取ります。そして、怒り狂う牛に謝罪の歌を唄い、見事に牛を鎮めるのです。

 剣よりも歌。憎しみよりも愛が勝つのだと証明したマノロは、神々の許可を得て生き返りました。さらに、一族の助太刀と、親友ホアキン、恋人マリアと共闘することで盗賊を退けます。こうしてマノロは文武両道のすばらしい男になり、めでたくマリアと結婚して、物語は終わり。

 この物語の肝は勧善懲悪ではないと思います。本作のメッセージは、自分の人生を主体的に生きろ、ということでしょう。

 マノロは、家風に合わせながらもギターを捨てません。マノロは闘牛士の訓練の合間に、ギターの練習を続けます。ホアキンは不死身になれるメダルをシバルバから授かったのもあり、厳しい訓練に耐えて体を鍛え、恐いもの知らずの勇敢な兵士になりました。二人には、それぞれに楽な道が用意されていたのに、自分のやり方を貫きます。マノロは父の望み通り闘牛士になれば、父にほめられていたでしょう。ホアキンは不死身なのだから、体を鍛えずに頭脳戦をしてもよかったのです。しかし、マノロは試練の闘牛場でギターを選び、ホアキンは自ら剣を取ることを選びます。二人とも、とても主体的です。

 メダルによる「不死身」は、ラ・ムエルテによると「ケガも病気もしない」というもの。このメダルを身につけると、外傷と病では死ななくなるのです。しかし、暑さ・寒さ・眠さ・空腹は感じるかもしれませんし、「筋肉を強くする」なんて効果はありません。ホアキンに人助けできる力をつけさせたのは、強くなりたいという、ホアキンの意志でしょう。思うにこのメダルは、元から努力家のホアキンが、短期間で効率よく強くなるようにブーストをかけていただけなのだと思います。ホアキンは盗賊チャカールとの戦いで、マリアの愛のかわりに、真の勇気を得ました。メダルをシバルバに返したホアキンはこれから、外見以上にかっこいい男性になっていくのだと思います。

 本作のヒロイン・マリアは、進歩的で優しい男性が好き。おまけに、自ら剣を取り、格闘技の心得もあるという、心身ともに強い女性です。ただ守られるだけではなく、自分を守る力と、上品さの両方を身に付けたマリアは女性としては最強でしょう。修道院に行った甲斐はあります。美しく賢く強くあること。三つともを求められるのは大変ですが、努力してすべてを得た時、人は魅力的になるのだと思います。この点は、男女とも変わりませんが。

 神々の賭けは三人を成長させました。大人になった三人は、盗賊の襲来という人災に打ち勝つ力を身に付けたのです。巻き込まれて一番迷惑したのはマノロですが、父と仲直りできたし、マリアと無事に結婚できたので結果オーライでしょう。

 ストーリーはありきたりだけど美術はいい、なんてレビューもついている本作。サン・アンゲルの人物はみんな木彫りの人形風ですが、とても生き生きしています。この世界を観るだけでも楽しいので、一度、レンタルしてみては。本作オリジナルキャラ、夫婦神シバルバとラ・ムエルテのやり取りの、微笑ましさも見どころです。

 以上。『リメンバー・ミー』と見比べると面白い、映画『ブック・オブ・ライフ』をご紹介しました。