今週のお題「読書の秋」
目次
読書の秋ということで、久しぶりに読み返した本をご紹介しましょう。
タイトルは『セックスと恋愛の経済学』です。マリナ・アドシェイド著、酒井泰介訳、東洋経済社から2015年に出ています。以下、リンクを兼ねた画像です。
それでは以下、この本の概要と、特に面白かった部分について書きます。
『セックスと恋愛の経済学』概要
私は、男女関係でお金が絡むことといったら一番に結婚を思い浮かべました。しかし、よく考えれば男女関係ではこれ以外のことにもお金がかかります。たとえばセックスです。これは何も風俗や買春だけの話ではなく、女子大生がバーで声をかけられた行きずりの男性と寝ることも含まれます。女性の場合、うっかり妊娠して子供をもってしまうと学業の継続が難しくなり、大学を中退してしまうと生涯賃金に影響するからです。
このように、男女(又は同性愛)関係において、実はお金(コスト)がかかっていることを挙げ、それについて統計を用いて詳しく分析していくのが本書です。恋愛という(人によっては)身近なものを、経済学の視点で解説していきます。
この本の構成は序論と9つの章と結語から成っており、中身は「本文➡︎コラム➡︎本文➡︎最後に」という形になっています。コラムとコラムの間を本文が繋いでいるようです。
次に、9つの章のタイトルを。どかれか1つでも気になったら本書を読んでみてください。
第1章 あなたの恋愛
第2章 出会いの大学時代
第3章 バーチャル恋愛
第4章 渡る世間は鬼ばかり
第5章 結婚ーこの妙なる制度
第6章 生計を立てる
第7章 新世代の草食系男子
第8章 生来の好きもの
第9章 愛の終わり
章のタイトルだけではピンとこない? それでは、次の項もお読みください。
個人的に面白いと思った部分
以下、私がおもしろいと思った部分を順に挙げます。
・マスターベーション群というパワーワードが登場する(P66)
P65のコラム「アツくなるとバカな考えがよく見えるもの」 冷静な時と性的に興奮している時では判断が異なるのではないかという仮定をもとに、男性被験者たちにマスターベーションしながら質問に答えてもらうという愉快な実験について書かれています。興奮すると判断が鈍ることは誰しも経験上知っていることなので、わざわざ確かめる必要を感じませんが、そんなことも実験で確かめるのが科学者なのです。
・ハゲの夫と貧乳の妻という組み合わせの夫婦が多いことがわかったとしても、この統計からハゲは貧乳が好きなんだと結論してはいけない(P78)
P77「自己発見の旅としての出会い系サイトでの婚活」 統計の読み方は慎重にならなければいけないことを示しています。ハゲと貧乳の夫婦が多いというのは架空の統計ですが、黒人女性と結婚している白人男性よりも白人女性と結婚している黒人男性の方が多いという統計は実在します。著者は、この統計は伴侶を探す人々の人種的好みを物語っていないとしています。
・婚活サイトにおいて、ブサイクな男はハンサムな男よりも18万6000ドル多く稼いでいれば女性とデートしてもらえるが、ブスな女の場合はいくら稼いでいても男性とデートできない(P90)
P90「愛は金で買える」 身もふたもありませんが、一番読む価値がある部分かもしれません。
・アメリカで同性婚が認めれらたのは人々の信念が変化したからである(P160)
P160「アメリカが同性婚を受け入れた理由」 人々の信念が変化すれば制度も変わると書かれています。制度があるからそれに合わせた信念を持つのではなく、信念があるからそれに合わせた制度ができるのだ、ということだと思います。例えは悪いけど、日本で殺人罪の時効がなくなったようなものでしょうか。
・アメリカでは結婚して夫の姓に改姓する女性は依存心が高いとみなされて採用されにくい(P170)
P169コラム「婚家に改姓する妻が払う犠牲」 私の母の代では結婚したら夫の姓になるのが多数派だったと思います。日本では結婚後、家庭に入る女性が多かったからでしょう。日本では妻は従順であるべきだったのでこれが当たり前ですが、アメリカのビジネス界では不利に働くようです。日本でバリキャリ(死語かな?)の方が旧姓を使われるのは名刺などの問題があるからでしょうが、もしかしたらご自分の独立心の旺盛さを表しているのかもしれません。
・女性から男性に性転換した人は、女性の時より待遇がよくなった(P178)
P178「職場での男の立場を知る」 男女の賃金格差は雇用者による差別なのか。それを示す証拠はあるのか。その証拠となるのは、社会に出た後に女性から男性に性転換した人たちです。性転換後はまわりの人たちの反応が変化し、意見が受け入れられやすくなり、職場でのサポートを受けて成績が上がり、収入が増えていったとのこと。人格は同じなのに待遇が変化したということは、雇用者による差別があるということであり、女性が不利になることを示しています。
・大人のオモチャがよく売れ始めるのは景気後退のサインである(P188)
P188コラム「先行指標としての潤滑ゼリー?」 2000年代までは口紅の売り上げが景気の指標だと思われていたそうです。不景気になると女性が安価で手軽な娯楽を求めるからなんだとか。2000年代からの新たな指標は性的な玩具の売り上げだそうです。これも、安価でお手軽なお楽しみだからなんだとか。確かに、風俗店に行くよりは安上がりですね。
・学校にコンドームを置くと、10代の妊娠が増える(P210)
P210コラム「学校にコンドームを置くと10代の妊娠が増える」一見すると直感に反する内容ですが、著者によると、学校にコンドームを置くと短期的には妊娠率が下がるが、長期的には妊娠率が上がる可能性があるとのこと。中には間違った装着法で使ってしまう子もいるからだ、と。確かに。でも、避妊具を使ってくれる彼氏が増えれば女の子たちは安心だと思うので、個人的には置いてほしいですね。男の子たちに正しい装着法を身につけてほしい。いっそ日本の高校でも避妊具を置いてみたらどうでしょうか。そうしたら彼氏に妊娠させられる女子が減るんじゃないだろうか。ていうか、避妊具がどこで売られているのか教わった覚えがない。これはまずいんじゃないだろうか。今では教わるのでしょうか。
以上です。数えてみたら8個もありました。どれか1つでも気になったら本書をお読みください。結婚と恋愛をお金の問題だととらえると、少し冷静になれて、よりよい判断ができるかも。