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【サンリオ】劇場版アニメ「シリウスの伝説」は大人が観たほうがいいかも【悲恋もの】

目次

 

今回、ご紹介するのは、サンリオの劇場版アニメ「シリウスの伝説」。

海で暮らす水一族の少年と、陸で暮らす火一族の娘の愛を描いた作品です。

あべのハルカス美術館に来ているエッシャー展を観たついでにTSUTAYA阿倍野橋店に寄ってレンタルしてきました。郵便返却って便利ですね。

以下、リンクを兼ねたDVDのパッケージ画像です。

 

中心に書かれている少年が主人公で、水一族のシリウスシリウスが手を引いている、羽を生やした少女がヒロインで、火一族の娘マルタ。本作には人間が登場せず、人外キャラしか出てこないので、人外キャラ(特に妖精系)がお好きな方にオススメ。

私の幼少期に家にあったものはビデオテープだった気がしますが、いつのまにかDVDになり、TUTAYAでレンタルできるようになっていました。

本作の公開は1981年ですが、今観ても古臭くありません。あと、お子さまよりも大人が観たほうが感動する話だと思います。

 

シリウスの伝説」あらすじ

水一族の王グラウコスと火一族の女王テミスは昔、仲の良い姉と弟だったが、2人の仲に嫉妬した風の神アルゴンが流した噂によって、仲違いしてしまった。2人は今では犬猿の仲である。2人は、お互いに姿を見せないという掟を定め、海と陸で離れて暮らすようになった。

2人が離れて暮らすようになって長い年月が過ぎ、水一族の少年シリウスは16歳の誕生日を迎え、成人した。成人式でグラウコスに面会したシリウスはグラウコスから、海を治める王の証としてアルゴンの目玉を譲り受ける。こうして海の王となったシリウスはある日、禁忌の海域の先にある岸辺にたどり着き、「火」を見つけた。

生まれて初めて火を見たシリウスは好奇心を抑えられず、あくる日また火を見に岸辺へ行く。その岸辺で火を守っていたのは、1人の少女だった。彼女は火一族の、女王の娘マルタ。

シリウスとマルタは掟のことを知っていたが、お互いに惹かれ、皆の目を盗んで会うようになる。シリウスとマルタの関係を知った大亀モアルは2人に、水と火が仲良く暮らせる星があることを教える。その星は、日食の日にメビウスの丘に生えるクライ草の胞子が飛んでいく先にあるという。

この話を聞いたシリウスとマルタは、2人でその星に行こうと決意する。しかし、2人は出発できなかった。グラウコスとテミスに2人の関係が知られてしまったのだ。2人は海と陸とに引き離され、牢に入れられてしまった。

それでもシリウスとマルタはあきらめない。牢から脱出することに成功した2人は、2人で暮らせる星に行くため、どこにあるのかもわからないメビウスの丘を目指す。はたして、2人の願いは叶うのか。

 

シリウスの伝説」の主な登場キャラクター

あらすじではバッサリとカットしてしまったキャラクターもいるので、ここで少し紹介を。

シリウス:水一族の勇敢な少年。本作の主人公。グラウコスから海の王に任命されるが、アルゴンの目玉をグラウコスに返し、マルタとともに旅立つことを選ぶ。水一族の子なので、陽の光に当たると死んでしまう。

マルタ:岸辺でかがり火を守るのが役目の、火一族の娘。女王テミスの娘であり、日食の日に変身し、次の女王となることが決まっているが、シリウスとともに旅立つことを選ぶ。火一族の子なので、水に落ちると死んでしまう。

チーク:一角鮫の男の子。シリウスの弟分で、いつもシリウスにくっついている。2人の関係を知り、シリウスがマルタとともに旅立つことに反対していたが、シリウスを牢から出し、シリウスを旅立たせることを選ぶ。

ピアレ:火一族の女の子。マルタのことが大好きで、隙あらば一族の城を抜け出し、マルタがかがり火の番をするのに付き添っていた。シリウスのことは気に入らないが、マルタの幸せのため、消えたかがり火のかわりになって2人を逃す。

モアル:数万年生きているので物知り。2人に、水と火が仲良く暮らせる星があることを教える。時にシリウスとチークに助言をしてくれる、優しい大亀のおじいさん。

グラウコス:海の神で、火の女王テミスの弟。風の神アルゴンが流した噂を真に受けて姉のテミスと仲違いし、今では海で暮らしている。シリウスにアルゴンの目玉を授け、海を治めよと命じた。

テミス:火の女王で、海神グラウコスの姉。風の神アルゴンが流した噂を真に受けて弟のグラウコスと仲違いし、今では陸で暮らしている。ピアレが犠牲になったこととマルタが逃げたことに怒り、マルタを捕らえて牢に入れた。

 

観た感想(ネタバレ注意)。実は大人向けの作品かな?

音楽はNHK交響楽団が演奏しているので壮大! 背景はほぼ手描きで美しい! 特に、シリウスとチークが暮らす海の景色(海中なのになぜか滝と川がある)がすばらしい。アニメーションに費やした絵がなんと8万枚という、ストーリー以外にも気合いが入りまくっている作品です。キャラクターの動きがオーバーアクションで、ちょっとディズニーっぽくて古臭いといえば古臭いですが、音声なしで観てもストーリーがわかるんじゃないかと思わせるぐらいキャラクターの感情がわかりやすいので、これはこれで良し。これ以外の部分はすごすぎて、古い新しいとかいう次元では語れません。アニメーション好きなら一度は観賞してみては。古き良きアニメーション大作がここにあります! いつもの岸辺が隆起し、メビウスの丘へと変貌していくシーンは必見です!

さて。あらすじなど長々と前振りを書いてきましたが、ついに本題のストーリーについて。実はこの作品、悲恋ものです。本記事のあらすじだけを読むとハッピーエンドになりそうですが、実はバッドエンド。なんと、チークとピアレどころかシリウスとマルタまで死にます。なんだこれ。チークとピアレは死に損じゃないか。マルタを牢から出してくれた火の子の親切も無駄になっている。え、これ、子供向けの作品じゃないの? 2人とも牢から出れたし、マルタはクライ草をみつけたから、てっきりシリウスが間に合って、2人で違う星に旅立つんだと思ってたよ。 しかも、メビウスの丘でシリウスが死んだのはマルタの忠告を聞かなかったからだし。マルタは、一度は穏便に別れようとしたのに。シリウスのバカ! と言いたいところですが、元はと言えばグラウコスとテミスが、2人を引き離そうとしたのが原因です。

上の世代の確執からできたルールを下の世代に押し付けてもロクなことにならない。だって、下の世代にとって上の世代の確執なんか他人事で、関係がないのですから。当事者じゃない人に無用なルールを守らせることに固執しても意味がないわけで。要するに何が言いたいのかというと、この場合、一番悪いのはグラウコスとテミスでしょう。風の神アルゴンがどんな噂を流そうが、聞き流せばよかった。アンタたちがみすみす跡継ぎを失ったのは、お互いへの信頼が足りなかったからだ。神々のくせに大人気ないぞ!

実は20年ぶりぐらいに本作を観たんですが、オチは覚えていました。だから、シリウスとマルタが死んだ悲しみよりも、グラウコスとテミスへの怒りのほうが大きいです。自分の視点というか、感情移入する先がシリウスとマルタからグラウコスとテミスへ移ったのでしょう。 今の私はシリウスみたいなハイティーンに感情移入できるほど若くないからね…。つい、大人の視点で2人を見てしまいます。

本作は、大亀モアルが「愛とは、相手を信じ抜くこと」だと説き、2人の死以来、この星(地球?)が平和になって水と火が争わなくなったと語るところで終わります。本作は愛のすばらしさを説いた作品のようですが、私に言わせれば、恋人同士が逃げないといけない状況が悪いのであって、愛の尊さを説くより先に悪習をなくせと言いたい。

では、ここらへんでシメを。本作をまとめると、自己中心的なキャラクターたちが自滅していく物語です(感動長編の感想がこれかよ)。シリウスとマルタは跡継ぎという立場を省みないし、チークはチークでシリウスを逃したら海が荒れるかもしれないのにシリウスを逃すし、ピアレは次期女王のマルタを逃がしてしまうし、グラウコスとテミスは下の世代に掟を押しつけるし。これ、子供の頃は音楽と背景の美しさや迫力にごまかされていたけど、よく考えたら、みんなが自己中心的に行動したせいで、悪い結果を招いただけじゃない? これってみんなが悪いのでは。全員が自業自得だよねこれ。もしかして、悲恋ものには自己中なキャラしか登場しないのか?

私が恋愛至上主義者じゃないせいでなんか薄情な感想になってしまいましたが、本音には違いないのでこの記事はこのままアップしました。私は、自己犠牲を美しいとは思わない派なので。もしも自分の子が誰かを庇って死んだら激怒すると思います。私、子なしどころか独身だけど。

 

以上。20年ぶりに「シリウスの伝説」を観たらみんな自己中なだけだと気がついた件をお送りしました。シリウスとマルタのキスシーンがあるし悲恋ものだし、本作はやっぱり大人向けだと思います。

 

 

※本記事は、2018年12月23日に微加筆しました。