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画像がないと記事がさみしいので公式画像ほしさに公式ビジュアルガイドへのリンクを貼ってみましたが、私が買った関連資料はパンフレットのみ。しかもパンフレットはアマゾンで相変わらずプレミア化(劇場価格比で2倍以上)しているので、流通している今のうちに劇場で購入することを推奨します。
9月20日に公開されたオリジナル劇場アニメ『HELLO WORLD』を私も観てきました! 個人的には『天気の子』よりも面白かったです。しかし『HELLO WORLD』のほうがSF色が強いうえに世界が3回もひっくり返るので、鑑賞者の理解力が求められます。『天気の子』ほど一般的向けではありませんでした。ある程度フィクション慣れしているというか、SF慣れしている方向けの作品です。SFが苦手な人は『天気の子』のほうがオススメ。あと、パンフレットでも一部ネタバレしているので、パンフレットの購入は鑑賞後のほうがいいでしょう。パンフレットを鑑賞前に買ってもいいのは、買っても読まずにしまっておけるぐらい意志の強い方のみです。私はいつも鑑賞後にパンフレットの購入を検討するので問題ありませんでしたが。
それでは以下、ネタバレあり感想をお送りしますのでネタバレが嫌な方はブラウザバックを推奨します。ここから先を読んでネタバレを喰らうのは自己責任ですのであしからず。
私の感想は大きく分けて2つ。
1、これって仮想世界が無限にマトリョーシカ状態になっているのでは?
2、保全システムの使い、狐面が不気味かわいい!
以上です。以下ではそれぞれ詳しく書きます。
感想1、これって無限マトリョーシカじゃない?
この作品の予告通り、少年直美の世界は仮想世界であることが判明するけど少女は助かるという流れかと思いきや、なんと青年ナオミは少女の一行さんを連れ去ってしまいました。この時点で王道のストーリー展開ではない。本作は初鑑賞だったこともあり、これは期待できるぞとワクワクで残りを観ました。
青年ナオミの目的は仮想の一行さんを救うことではなく、現実の恋人を救うこと。そのために少女一行さんに事故当時の状況を経験させ、精神状態を近づけたうえで、昏睡している恋人イチギョウさんの脳にインストールして、イチギョウさんの意識を戻そうとしていたのです。いやいやいや、それ、目を覚ましても心は高校生だろう!? 記憶は持続していないじゃないか! 君はそれでいいのかナオミくん! おかげでアルタラの研究チームは素晴らしい人材を得たわけですが。ナオミくんがこのチームに入ったのはこれが目的っぽいし。
青年ナオミの裏切りに怒った少年直美が後を追うのは予想通りでしたが、実は青年ナオミがいた世界も仮想世界であることがわかります。なんでこれが判明するかというと、少女一行さんを追って、アルタラの保全システムが「狐面」という使いを送り込んできたからです。狐面は狐のお面をつけた交通整理員のような外見をしており、立体映像ではないらしくイチギョウさんの首をつかんで締め殺そうとします。これはイチギョウさんと少女一行さんが同じ空間にいることが問題だったようで、同一人物が同時に2ヶ所にいるという矛盾を解消しようとした結果だとか。青年ナオミは狐面がイチギョウさんの首を締めた時点で、自分の世界も仮想世界であるらしいことに気がつきますが、とりあえず少女一行さんを元いた世界(アルタラの中)に戻そうと奔走します。一方の研究チームは狐面に質量があることには驚いていないようで、淡々と保全システムのスイッチに向かい、スイッチを切って事態の収拾をはかります。みんな冷静というか、ドライだな。さすがは研究者ですね。
少年直美は少女一行さんを連れて、一路、京都タワーへ。京都タワーへの道中に狐面たちとの追いかけっこあり、少女一行さんが無事に戻ったのもあり、合体した狐面と少年直美のバトルありで私はつい忘れていましたが、この青年ナオミがいた世界も仮想世界です。つまり、青年ナオミの世界にもさらに外側があるのです。青年ナオミはこの外側の世界(月にある都市)で目を覚まし、自分の恋人イチギョウさんに再会します。一見するとハッピーエンドですし、パンフレットの解説によるとこの月面都市が現実の世界ということになっていますが、私はさらに先を想像してしまいました。アルタラの中にある世界にも時間は流れているのですから、いつか科学技術が発展して、アルタラの中にさらにアルタラがつくられることもありえます。一度そうなったら無限に入れ子構造(マトリョーシカ状態)になっていくわけで。というか、もうすでにそうなっているのかもしれない。だとしたらこの月面都市だって仮想世界なのかもしれないわけで。ナオミくんが目を覚ました次の瞬間にまた狐面が登場してその場がパニックになっているんじゃないかと。しかしまあ、たとえ月面都市が仮想世界だったとしても狐面は現れないでしょうが。
アルタラの外側はイチギョウさんがナオミくんを起こすためにつくった仮想世界らしく、仮想世界のナオミくんと昏睡しているナオミくんの年齢差がありません。だから、ナオミくんがしたように記憶がちがう、別人格の直美くんを犠牲にしたわけではない。だから矛盾が発生しないんですね。これなら保全システムにひっかからない。でも、もしかしたら月面都市のどこかで誰かが何かしらの矛盾を引き起こし、やっぱり狐面が登場することになるのかもしれませんが。というか、そうなってほしい。なぜなら私は狐面が好きなので。その理由は次で説明しますね。
感想2、狐面が健気で不気味かわいい!
この作品で敵役を演じるのは、アルタラの保全システムの使いである通称「狐面」です。この狐面を派遣しているものには管理者権限があるようですが、アルタラの住民を直接削除することはできないらしい。だから使いを送って、暴力的な手段で解決するんですね。これが人間の組織だと主人公のせいで人員が犠牲になって心が痛みますし、逆に主人公に暴力を振るうと「この人でなしめ!」とか思って、どちらにせよ安心して観ていることができません。しかし今作の敵役はただのプログラムなので、主人公との攻防を心安らかに観ていられます。
この狐面の外見を私は先ほど「狐のお面をつけた交通整理員」と表現しました。この表現がすでに不気味ですが、さらに言うと首はなくて顔はデコルテの位置についており、腕が異常に長く、全員が同じ身長で同じ外見をしています。しかも、目が開いたと思ったらまさかの一つ目だし、実は口も開きます。要するに頭部は妖怪のわけです。妖怪と人間が混ざったような機能と外見をしているんですね。普通の感覚だとこれは不気味以外の何者でもないでしょう。
しかし私はケモノモチーフが好きなので、敵の顔が狐のお面の時点でもう好感度が高い。和風の敵といえば鬼が定番ですし、怖さを追求するなら能面もありだったと思いますが、あえての狐面なんですよね。しかも目を閉じたデザイン。これはあとで怖い感じに開眼するんだろうなという予感を抱かせる素敵なデザインでした。
それじゃあ、こんな奴のどこがかわいいのかと。実は本作の狐面は顔もいいですが何より行動がかわいいのです。犠牲をいとわず目的に忠実で主人公の直美くんにいくら攻撃されてもひるまずに、健気にも少年直美くんと少女一行さんを追いかけるんですよ。アルタラ内でトラックに群がって分解していくシーンとか、少年直美くんが生み出したブラックホールも分解しようとして飲み込まれるシーンがすでにかわいい。そして、アルタラの外でがんばって病院の外壁をよじ登っていたり、自転車に乗った2人を捕まえようとして肩車してみたりとか色々と工夫しているのがさらにかわいい! え? おまえの言ってることはさっぱりわからないって? じゃあ、子供の頃に蟻の観察をしていた時の気持ちを思い出してください。あれです。あの気持ちです。なんか小さなものが集団でがんばっているのを見守っている感じ。ゲームで例えるとピクミ○ですね! ね、なんかわかってきたでしょ? いや、そんなわけないか。まあとりあえず、本作の狐面に対して「かわいい」という感想を持つことも可能だということは覚えておいてほしいのです。そして「狐面はかわいい」という先入観を持って本作を観てください。そうすれば狐面の不気味さが減って、怖くなくなるはず!
以上。オリジナル劇場アニメ『HELLO WORLD』の感想をお送りしました。つっこみどころがないわけではありませんが、とりあえず狐面がかわいいので観て。
※本記事は、2019年10月1日に微加筆してリンクを加えました。また、アルタラをアルテラと勘違いしていたので修正しました。失礼しました。