今回はクリストファー・ノーラン監督の映画「インセプション」を劇場で観た感想をお送りします。実はこの作品、私は初見じゃありません。iTunes Storeで字幕版が安くなっていた時に買ってiPod Classicに同期してあります。なのでテレビにiPodを繋げばタダで観られるのですが。しかしあの映像美(エッシャーの絵みたいに合体した街のシーンとか)がIMAXで観られるのなら観たい。ということで観たことあるどころか手元にある作品なのにレディースデイを狙って行きました。
実はこの作品、2時間30分ぐらいある大作です。こういう長い作品こそ、視聴済みで劇場に行きたい。だってトイレが心配じゃないですか。視聴済みならトイレに行けるタイミングだってわかりますし(何かの説明シーンとか)安心ですよね。何度でも観たくなるシーンってやっぱりアクションシーンとか、派手なシーンだけだと思いますし。説明シーンを何度も観る必要がある作品ってそうないと思うんですよ。よっぽど複雑か難解じゃないと。この作品はこれに当てはまりますが(笑) 割と観客に記憶力と理解力を求めるタイプの作品だと思うので、長い映画は冒頭のシーンや設定を忘れがちだとか、複雑な設定は一回じゃわからないという方の初見は配信かレンタルがオススメ。いやマジで。この作品は冒頭シーンの回収が遅いし、初見が劇場だと「この理解であってる? 感想記事を書くなら、もう一回みたほうがいいのでは?」ってなりそうなので。ブログやってても映画専門じゃなくて、私みたいに単発・思いつきで映画の感想記事を書く人は時間やお金と相談して2、3回みることを推奨します。主人公の男性コブの家庭事情をわかったうえで観ると、コブの気持ちに寄り添って観られるようになり、設定とストーリーを追うだけで手一杯だった初見時よりも楽しめるかと。注意事項はわかったから本編の感想をよこせ? いや、この段落からすでに本編の感想ですって。何せ長くて複雑なので(3階層の夢+虚無とか、麻酔と装置を使って見る共有夢とか)あらすじとか登場人物の紹介とか、そういう字数稼ぎ的なことはすっぱりあきらめていますので。だから今回はこんなエッセイ的な体裁になっているんです。こういう、目次がない感想記事のほうが通っぽい気がしますし。さてはオマエもこの作品を理解しきれてないな? ええまあ実を言うとちょっと設定を聞き逃してて、現実の10時間➡︎1層目の1週間➡︎3層目の50年なのはわかってるんですけど2層目は10年でよかったっけ? じゃあ虚無での時間の進み方は? って、一部があいまいで。初見じゃないのに(汗) 偉そうなこと言ってすみません。
久しぶりに観て理解したのは、階層ごとに時間の進む速さが違うことを利用して1層ずつ目を覚ましていくこと、わざと死んで目覚めるというお手軽な方法は使えないこと、インセプション(植え付け)の対象であるロバートは反逆者(信頼していた重役)の心に潜ったつもりで実は自分の心に潜っていたこと、夢での出来事は忘れていることでした。うん、これだけわかればもう十分だな! とりあえずコブが組んだチームの作戦は成功したってことは初見でもわかるし。
で、やっと主題にふれるんですけど。この映画で伝えたいことはきっと「夢」という物の怖ろしさなんだと思います。幸福な現在が夢だったら悲しい。インセプションの作戦中は銃撃戦ありカーチェイスありで、あらすじを知らない人がアクションシーンだけ観たら普通にスパイ映画に見えるでしょう。でも、インセプションの作戦はキャラクターのお仕事であってこの映画の主題じゃないんですよね、たぶん。問題なのは「あなたが今見ているのは本当に現実か?」という問い。ウチの弟なんて夢の中で痛みを感じたことがあるって言いますし、一般的な「ほっぺたをつねる」という方法では夢・現実の区別が心許ないので独自の見分け方を持っているほうが良いってことですね。私なんか夢の中であぐらをかいて座っていたら猫が膝に乗ってきて、猫の毛の感触と猫の体重を感じたことがあります(笑) 子供だった時よりも大人になった今のほうが臨場感のある夢を見ている。歳をとればとるほど人間の想像力は鍛えられていくのかも。だとしたらなおさら、見分け方が必要ですね。そこで主人公コブが利用しているのが、金属製でコマ型の「トーテム」です。これが途中で倒れたら現実で回り続けたら夢。ラストシーン、テーブルの上で回されたトーテムは、回転を止めるのか? 回り続けるのか?
この映画を観る度に観客は問われます。あなたが今、見ている物は本当に現実か? 原理的には連続して撮影された写真をスクリーンに投影して高速でスクロールさせているだけのものを「動いている」と錯覚してしまう、この騙されやすい脳ミソを持った我々が見ているのは真の物理現実でしょうか。それとも自分の心の中でしょうか。今ものすごく成功している人やめちゃくちゃ幸せな人はいっぺん疑ってみたほうが…いや、疑わずにそれを「現実」だと思って生きるのも一つの手ですよね! うん! だから私は自分の幸福を疑わないことにします(怠惰な生き方の正当化)