ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

迷宮系SFマンガ『百万畳ラビリンス』の礼香が友達だったら迷惑だけど楽しそう。

 

私の読書量は多くないしマンガもそんなに読まないので、オススメのマンガはすでにだいたい過去記事で紹介している。私の本棚にあってまだ個別記事が書かれていないマンガといえばこの『百万畳ラビリンス』ぐらいのものだ。まだ紹介していないのにはそれなりの訳がある。これが長編マンガだったら世界観とか設定とか勢力図とかたくさんいるキャラクターで誰が一番好きかとか語り放題だし、あらすじを長めに書いてもネタバレにならない。しかし本作『百万畳ラビリンス』ではそうはいかない。なぜなら設定や世界観自体がネタバレであり、ストーリーは、この世界の謎を解くためのものだからだ。ストーリーについて長々と書いてしまうともうそれだけでネタバレの危険がある。しかし私にはマンガ(映画も)の知識がなく、今まではストーリーを追うだけの感想記事しか書けなかった。そこで今回は、できるだけストーリーに触れず、なおかつこの記事を読んだ人が「面白そう、読んでみたい」と思ってくれるような記事を目指す。

といってもあらすじに全くふれないわけにもいかないので少しだけ書くと、ゲーム大好き女子大生がルームメイトと共に巨大な迷宮に迷い込んだので二人で脱出(または支配)を目指すという話だ。このあらすじだけで面白そうと思った人はこの先を読まなくていいので、リンク(画像)をポチッてコミックの購入をお勧めする。

このマンガは基本的に、主人公でボケ役の女子大生「礼香」と、礼香のルームメイト兼バイト仲間でツッコミ役の女子大生「庸子」とのかけ合いで進んでいく。礼香は不思議なこと、未知のことが大好きなのでこの状況に全く動じておらず、むしろワクワクしている。対する庸子は常識人なので、冷静ではあるが楽しんではいない。真面目に元の世界への帰還を目指す。

この作品を読んでいると自分が「異常大好き礼香タイプ」と「いつでも冷静な庸子タイプ」のどちら寄りなのかがわかる。私の場合、実際にこんな状況になったら庸子的に行動するだろうとは思う。しかし礼香の、現実世界を面白いと思えない感性もわかる。現実では、道を歩いていて急に透明の壁にぶつかることはないが、そのかわり生身で空を飛ぶことはできない。現実に倒すべきクリーチャーはいないが、クリア目標が定められているわけでもない。人生というストーリーのトゥルーエンドは全員共通で、死。つまらないと思うのも無理はない。私の感性はどちらかというと礼香に寄っている。しかし私が実際に礼香的な行動をしようとするとたぶん知能が足りないので、仕方なしに庸子的な行動をすることになるだろう。

礼香の面白いところは、ギリギリで実在していそうなところだ。礼香の顔や髪型はごく普通だし服装はカジュアルでありふれている。礼香の外見にキャラクター臭いところはない。それに、礼香はゲーム好きではあるが、剣と魔法の世界で勇者になろうとしているわけではない。敵を倒して称賛されることを願っているのではなく、この世界の物理法則を解明し、この迷宮を支配することを目論んでいる。楽しんでいるのは決まった物語ではなく未知への挑戦だ。この性格が大学生という年齢相応で、よく探せば同級生の中に一人はいそうな気配がある。友達になったら少し迷惑なことが増えるかわりに、楽しいことも増えそうなところが、礼香の魅力だ。

私は歳を取って(マンガに限らず)フィクションを鑑賞する時に注目するポイントが変わってきた。20代までの私は、フィクションを見ると敵や小物などの設定に注目していた。しかし今では、敵や異常事態に対する人間キャラクターの反応や対処に注目するようになっている。奇抜な設定の非現実を見たいというよりは、フィクションを通して知り合いを増やそうとしている感じだ。人生で出会える人数は限られている。しかしそこにフィクションを足せば、キャラクターという名の知人が増えていく。

庸子的な人は、礼香の柔軟な発想が新鮮に思えて楽しめるだろう。元から礼香的だが身近に理解者がいない人は、自分に似た人をみつけて安心するだろう。ぜひ、あなたの知人リストに「ゲーム大好き女子大生・礼香」を加えてほしい。