ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

「それはおまえの土ではない、我々の麦茶だ」と私は言った。

我が家では家族全員のカップに麦茶を注いだ後は麦茶のピッチャーを卓上に置いておき、麦茶のお替りの要請があると、ピッチャーの近くに座っている人間がお替りを注ぐという体制で食事に臨んでいる。従って、食事中はずっと麦茶のピッチャーが卓上にある。今回はそこに目をつけられたらしい。奴はずうずうしくも食卓の上にいて、麦茶のピッチャーにとまろうとしていた。

「それはおまえの土ではない、我々の麦茶だ」

私は奴に言った。そして奴を叩き潰した。警告などしてやる義理はない。いや、むしろするべきではない。なぜなら奴は害虫、それも、我が家の大切なハイビスカスの鉢に沸いたコバエ(おそらくキノコバエ)なのだから。

私は蚊を叩く要領でコバエを素手で潰した後に洗面所で手を洗い、何事もなかったかのように平然と食卓に戻った。

奴らは黒っぽい色のものに好んで近づいてくる。今回は土の色に似た麦茶が魅力的に見えたらしい。そのせいで奴は墓穴を掘ったのである。食卓の上を飛び回るコバエ以上に気に障るものが他にあるだろうか。

 

※これは創作ではない、現実の出来事である。