ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

クリスマス映画といえば? 私の場合は『曲がれ! スプーン』です。

この映画、タイトルからしてクリスマスらしくないですよね。内容もそんなにクリスマスと絡めてない。ラブストーリーでもなければ家族愛ものでもなく、大人に奇跡が起きるとしたらクリスマスぐらいだよね、という軽いノリなのでがっつりしたクリスマス・ストーリーを観たい人にはおすすめできません。逆に、クリスマス=家族愛orラブストーリーというテンプレに飽きて変わり種が観たくなっている人にはすごくオススメ。じゃあどんな内容なのかというと、大ざっぱに言えば「超常的なものを探しているADミーツ普通に暮らしている社会人超能力者」もの。そうです。『曲がれ! スプーン』というタイトルの通り、この映画の主題は超能力者なんです。ただし、登場する超能力者たちは外見・職業ともにごく普通で、個々の超能力はショボい。ショボいとはいえ一応は本物なので能力はちゃんと発動するのですが、それでもショボい。まちがっても能力者マンガみたいな戦闘はできそうにない。つまり、全然ドラマチックな要素がない。そんな奴らでも力を合わせればきっと、一人ぐらいだませる。一人ぐらい奇跡を信じさせられる。だからがんばってこの美人ADを(良い意味で)だましてあげようじゃないか。サンタクロースは実在するんだって。…という内容です。本作は超能力者もの作品として理想的だと思います。だってね、考えてみましょうよ。自分がもし超能力者だったとしたら。超能力者の存在が公になって差別されたり隔離されたりするのはもちろん嫌ですが、公的な機関ができて試験や面接を受けたりして証明書を持ってないといけない、というのも面倒くさいですよね。どっちにしろ監視対象だし。超能力者の人生には、根深い対立か公的な共存しかないのか?という疑問がありました。それに対する答えとして、この映画は理想的。超能力は隠しておくけど悪用しない。超能力者の仲間はいるけど組織じゃない。ちょっと器用な人ぐらいの感覚で、人を害することもなく、人に害されることもなく、社会になじんで暮らす。ね? こう考えると理想的じゃないですか? この映画、本物の超能力者の人が観たらどう思うんだろう。ぜひ感想をきいてみたい。

失礼ながらビジュアル的に冴えない人たちが冴えない力で奇跡を起こすって、むしろマンガで描くものだと思ってました。だって登場人物が全員冴えない人だったら集客力がなさそうだしどうやって興行収入を稼ぐんですか?と思っていたので。その点、この映画は長澤まさみさんが主役をなさっているので集客力の面でも安心ですが。それでも考えを改めました。コメディって、生身の役者さんが演じるほうが面白い。もちろん生身の役者さんに目玉が飛び出るみたいに派手なマンガ的リアクションは(CGなしでは)できませんが、そのかわり等身大の、絶妙なかっこ悪さが演出できるんだと気づきました。ギャグマンガの不自然なノリが苦手な私には、役者さんが演じるコメディのほうが性に合うらしい。基本的には実写よりもアニメーションのほうが表情や動作が誇張されていて理解しやすくて好みなのですが、コメディは例外のようです。これは意外な発見でした。

恥ずかしながら私はこの映画で長澤まさみさんの名前と顔を覚え、劇団ヨーロッパ企画矢野顕子さんを知り、カラオケで「ひとつだけ」が歌えるようになりました。歌える曲が増えてよかった。映画は総合芸術だから、いろんなものを知るきっかけになって良い。この映画は2009年公開だから、もう12年前か。学生時代に近所の映画館で観た思い出の一作です。未視聴の方、今年のクリスマス映画はこれにしませんか?

 

以上、私のクリスマス映画といえば『曲がれ! スプーン』の件をお送りしました。