藤本タツキ短編集を読んでみました。アマゾンで本のまとめ買いキャンペーンをしていたので安い短編集を探していたら藤本タツキ短編集をみつけたので2冊とも買ってみたのですが。ジャンプコミック+というシリーズは装丁が簡素な分、お値段がめちゃ安い。一冊500円以内とか安すぎる。まとめ買いキャンペーンに参加したいけど合計金額が高くなるのはイヤだという人にはおすすめ。2冊とも買ったので収録作品のひとつずつに感想を書いてこの記事の文字数を水増ししてもよかったんだけど、一番語りたいのは「22-26」に収録されている「予言のナユタ」のナユタについて。というか、ナユタの独特な言葉遣いについてなんですよ。だからこの記事ではナユタの言葉についての考察を書きます。
ツノが生えた少女ナユタの、語彙が偏った言葉。あれは言葉遣いというよりも何らかの法則に従って自動変換されているのではないでしょうか。ナユタのあの独特の言葉遣いを、ここでは「ナユタ語」と呼んでおきます。それでは、ナユタ語はいったい、どんな法則で日本語→ナユタ語に変換されているのでしょうか? どうもナユタの語彙(変換先)は残酷・グロテスクな表現に限られているらしく、アイス→血飛沫(ちしぶき)になっています。音読した際の音数は対応していないようです。この他に推察できたのは「煉獄→ごはん」「切断→〇〇したい」「眼球→食べる」「混沌→〇〇ない」「爆殺→うれしい」「圧死心臓→お兄ちゃん」ぐらいでした。「致死」はおそらくそのまんま「死ぬ」という意味だと思うので「致死!?」は「死んじゃうの⁉」ではないかと。
ここまで考えて思ったのは、ナユタが大量の剣を出して軍隊が出動した事件で叫んでいたのは脅しではなく、子供らしい不満を述べていたのではないかということ。たとえば「焼死反吐血飛沫」は「苺チョコアイス」だったりするのでは。他のセリフも全部好きな食べ物を列挙して、それが食べられない不満を叫んでいるだけなのかもしれません。そう思うとほほえましくない。なぜならナユタの存在は他人にとって脅威でしかないから。叫んでいる内容は子供らしくても、していることは有害ですし物理的に危険です。でも、兄のケンジはナユタを背負って逃げます。だって大事な妹だから。もし同じ立場だったら、私もこうすると思います。だからこの点は非難しません。
一週間後、ナユタは兄に連れられて無人の砂浜にいました。ナユタは自分の発する音声言語が他の人に通じていないことを理解して、筆談するようになっています。幸いにして書いた文字はナユタ語に変換されることなく、常人にも日本語で読めます。ナユタの発語を変換しているものは、ナユタの音声を意図が読めない不気味な語彙に変換することでナユタを守り、書き言葉は変換しないことで他者と意思疎通できる手段を残しているようです。作中のナユタは世界を滅亡させる予言の子、ということになっていますが、もしかしたら人に魔法の才能を与える何か(神さま?)に猛烈に愛されているのかもしれません。「ナユタが世界を滅亡させる」のではなく「ナユタを殺すと世界が滅ぼされる」が真実なのでは? いつか、正義感満載の強い魔法使いがナユタの殺害に成功→神によって滅ぼされる、なんてオチで終わるんじゃないかな、あの世界は。
以上、ナユタの言葉について考察してみました。