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短編集『室外機室』読んでみた。これは手元に置きたい。

オモコロでオススメされていた短編集『室外機室』を読んでみました。

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普段のオモコロからすれば、このようにオススメ系の特集記事は少数派。私は勝手に「記事数が足りてないんだろうな」「ネタギレ気味なんだな」と思っていますが(失礼)小説やマンガのオススメ記事は読んでみることにしています。今回だって「短編集は好きだけど自分の趣味に合いそうなものはないだろうな」と思いながら⇧の記事を読んだのですが、幸いにしてかなり好みの漫画をみつけました。ギャラクシーさんがおすすめしていた漫画『室外機室』です。未読の作品でしたがカバー絵(記事中ではサムネイル画像)がすごく好みでした。モノクロで書かれた都市の上空に浮かぶ女の子。一見すると情報量が少なそうなのに、よく見るとビッシリ描き込まれている。こういう画像は好き。これは中身の漫画も自分好みにちがいないと確信。紙の本でも安価だったこともあり、Amazonでポチりました。結果、かなりの当たり。大当たりというほど好みど真ん中だったわけではありませんが、画風も内容もかなり自分好みでした。さすがの審美眼だぜ自分。自分好みの物を探させたら自分自身の右に出る者はいない。それぐらい私は自分の感性を信じています…あ、いけない。気がついたら前振りに500字も費やしてた。いい加減で漫画の感想に移りましょう。

 

『室外機室』感想。これは手元に置きたい。

短編集『室外機室』は全4編(または全体で1編)から成っています。カバーの裏表紙によると「4つの物語を収録した極上のファンタジー」とのことですが、収録作品を4編とみなすか1編とみなすかは読者にゆだねるべきでしょう。描きおろし部分がいい仕事してます。不要といえば不要かもしれませんが、これはこれで味わい深い。『千と千尋の神隠し』を彷彿とさせる「地下図書館探検譚」は賛否が分かれそうな作品ですが、この一編で単行本の半分ほどを占めるページ数なので読み応えはあります。

収録作品のうち、絵が好きなのは「21gの冒険」で、物語が好きなのは「混信」です。「21g」の冒険は背景の街が美しく、背景の都市を描きたいばかりに冒頭の状況やその後の展開を考えたであろうことが伝わってきます。それでも良いのです。どんな物語もたいていは何らかのパターンに収まってしまうのですから(文字通りの)背景描きたさに始まる作品があってもいい。フィクション慣れしているとオチを予想できがちなので、いっそ「物語」以外のもので魅せてくれるほうがうれしい。しかし、絵で物語以外のものを見せようとするとイラスト単品になりがちです。どういう物語にすれば無理なく場面を転換できるか。どんな場面にすれば自分の見せたい絵を描けるか。一番見せたい絵に前後を足して起承転結のある漫画という形に整えるのは、絵を描くのとはまたちがった思考が必要になるでしょう。私が小説を書いた時は場面よりも設定(世界観)から入ったので、場面(シーン)から逆算して物語を書いたことがありません。なので上記の分析は勝手な想像ですが、的外れではないはず。

次に「混信」について。午前零時にラジオから流れてくる番組「Midnight Eight」を聴きながら夜中に勉強している女性の視点で描かれます。彼女は勉強のBGMに謎のラジオ番組「Midnight Eight」を聴き続けていたが、ラジオから伝わってくる情勢は段々と深刻なものになっていく…という内容。どうやらこちらはアイデア先行タイプのようで、異世界にある国の情勢がラジオから淡々と伝わってきたら面白いんじゃないか、というアイデアを元にしたようです。情勢が不穏なものになっていくのは、彼女に葉書を出させるための筋書きであってアイデアの根幹ではないでしょう。彼女に葉書を出してもららわないと、きれいにオチなかったのだと思います。作者のちょめ氏の脳内にはあの国の名前や全体像があるのか、それとも描写された部分しかないのか、どちらなのか気になりました。架空の国をつくってみたいけど、細部まできっちり設計するのは難しい…という人は、まずはこういう風に「その世界のニュース」からつくってみるのもアリかもしれない。風物詩や年中行事を描写すれば文化がつくれますし、国交や戦争の情報を流せば世界情勢を描けます。よく考えたら、創作において画期的な練習方法のような気がする。もしも私が「未知の国の情勢が流れてくる謎のラジオ番組」を創作したら、まず「桜前線」の意味を変えてしまいそうです。「桜前線が北上しています」「勢力を増した桜が首都に迫っています」「当該地域のみなさまはすぐに避難してください」という感じでしょっぱなから不穏な空気にしてしまいそう。「桜前線から避難するってどういうこと!?」「桜って植物じゃなかった!?」「植物なのに大移動するの!?」という疑問を読者に抱かせたまんま突っ走ってみたいですが、私の空想はここらへんにしておきましょう。

漫画短編集『室外機室』は全4編(または1編)ですが、どれも一読の価値あり。これが税込803円で読めるなんてコスパが良すぎる。久しぶりに手元に置いておきたい1冊に出会えました。オモコロの記事読んでみてよかった。

 

以上、『室外機室』読んでみた件でした。帯が素敵なので、ぜひ紙の単行本をお買い求めください。Amazonへのリンクはこちら(⇩)

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