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【石田夏穂】安さで選んだ小説『黄金比の縁』

「本読み」と呼ばれる人々は2種類いて、フィクションや物語を好む文学系・ノンフィクションや解説書を好む実学系に大別されます。しかしこの「文学系・実学系」の2大分類は私が今さっき思いついたものなので一般的な表現ではありません。では、このふたつを一般的な表現にするとどうなるのか。そうですね…文学系は「読書家」で実学系は「本好き」でしょうか。読書家は読むことに重きを置いているので読む冊数が多い人で、本好きは本という物体そのものが好きなので内容だけでなく装丁も含めて本を語る人というイメージです。

なんでまた冒頭でこんな解説をしているのかといいますと、私は本好き(実学系)だからです。小説はあまり読みませんが、本を買ったら内容だけでなく装丁も楽しみます。ページ数の多さが本体の厚みで把握できるので紙媒体は最高です。薄い本ならページ数も少なく本文は短いと思われるので挫折することなく読了できそうだと予想できるのも紙媒体の良いところ。ついでに言うと物理本はページ数が値段に反映されるので、安い本=薄い本であろう、という予想もできます。これだけ安いのならば短編なのだろう。おまけにこのタイトルは面白そうだ、と思って買ってみたのがこちら(⇩)

www.shueisha.co.jp

石田夏穂『黄金比の縁』集英社文庫です。集英社文庫の夏フェア「ナツイチ2025」の小冊子に掲載されていた作品のなかではぶっちぎりで安かったので買ってみました。気になるお値段はなんと430円+税。税込でも500円でお釣りがきます。新刊でこのお値段なのはとても安い。集英社文庫はヒモのしおりがついていませんが、そのかわりにカバーがビニールコーティングされているので安価にしづらい装丁だと思っていました。しかし、これだけ薄ければこの値段が実現できるようです。全体で128ページしかないから。しかも小説本文110ページ、解説9ページで、読む部分は合計119ページしかありませんからね。本体の厚さは5mmぐらいしかないし。この薄さならこの安さにも納得ですね。やはり、紙の本は安さ=薄さなのです。「この薄さなら初読でも問題なく読み切れそう」だと思い、安心して読めましたが…気がついたら安さと薄さの話しかしていませんね。失礼しました。

小説の内容や感想に移りましょう。初読の感想は「大げさじゃなくて良いなあ」でした。主人公の女性が、自分の勤める会社に復讐を企てます。最終的には倒産させたいのかもしれませんが、主人公が選んだ手段は間接的で穏やかなものであり、うまくいけば倒産させられるかも、という程度のもの。人が死ぬような血みどろの展開にはならず、主人公のまわりで劇的なことが起こることもなく、物語は淡々と進みます。「巨大企業の闇を暴く!」みたいなノリじゃないんですよね。そこがいいなって。巨悪と戦う話ってどうしても大長編になりがちじゃないですか。下手したら上下巻になったりとか。あるいは「仕事ってツライけど、ほめてくれる人もいるから頑張る!」みたいな、最終的にはポジティブになってみんな許してしまうか。このどちらでもない内容なのは面白かったです。人は死なない。巨悪はない。悪役はいない(しいていうなら主人公)。しかし、左遷というしわ寄せはある。主人公は己の誇りのために、ささやかな復讐を企てている。ラストシーンの後も主人公の復讐は淡々と進んでいることでしょう。この企業が今どうなっているのかを考えるのも面白い。

 

以上、安いから読んだ小説『黄金比の縁』が意外と面白かった件でした。Amazonのリンクはこちら(⇩)

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