ロマンというほどでもない

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人間ってアホなんじゃね?と思ってれば楽しめる本『脳はいいかげんにできている』

たまにきく「頭が悪い」という表現をどう思われますか。私は失礼というより「ずいぶんと抽象的な悪口だな」と思っていました。もちろん対面で言われたら腹が立ちますが何度きいても抽象的すぎるので具体的に言い換えてみましょう。「脳みその働きが弱い」といったところでしょうか。「頭」という語は俗に「脳」の言い換えとして使われますものね。では、ヒトの脳はどんな構造になっているのでしょうか。新生児の脳はどのように発達するのか。どこがどうなったら記憶や人格に障害が出るのか。まずは脳の生理的なことを解説し、最終的に「人間はなぜ宗教を持つのか」まで解説してしまうのが、デイヴィット・J・リンデン著『脳はいいかげんにできている  その場しのぎの進化が生んだ人間らしさ』です(⇩)

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著者のリンデン氏の主張は「ヒトの脳は優れた構造ではない」というもの。ヒトの知能が高いのは脳の構造が優れているからではない。ヒトの脳のすばらしい点は、無駄の多い非効率な構造でありながら、うまく働いていることなのだ、というのがリンデン氏の主張です。ヒトの脳は小・中・大の三段構造になっており、爬虫類にもある中脳の上に、哺乳類が持つ大脳の層がある。このように人間の脳は一から設計されたものではなく、継ぎ足しによってできている。おまけに、脳という臓器の部品はニューロンです。ニューロンは情報伝達の効率が悪く、クラゲの頃から構造が変わっていないとか。要するに人間の脳はクラゲのパーツを使いまわしてできた爬虫類の脳を使いまわしてできている。二重に使いまわされているものの産物なわけですね。本書を読めば読むほど「こんな構造のものが優れているわけがない」と思わされます。この「いいかげん」な脳の構造のおかけで人間は愛だの宗教だのを持つに至ったことが解説されています。人間が一夫一婦制なのは、極論するとニューロンのせいなのです。胎児のうちに全ニューロンを配置すると頭部が大きくなりすぎて産道を通れなくなるので、ヒトの新生児は脳が未熟な状態で生まれてきます。出生後に脳を発達させるせいで養育期間が長く、長い養育期間のために一夫一婦制がある…と。要するに人間の文化はヒトの身体構造によって決まっているわけですね。たとえば靴が左右セットで一足という単位で売られているのは人間の足が基本的に左右合わせて2本だからなのと同じで、人間が文化だと思っているものの源はヒトの身体特徴なわけです。一夫一婦制というのはなにも道徳の問題ではない。こんな調子で夫婦愛を解説してしまうのですから宗教についてもおして知るべし。人間(というか動物)の脳には感覚を統合して首尾一貫した世界をつくりだす機能があるとのこと。これによって断片的な、あまり関係なさそうな情報まで統合したものが「物語」であり、我々が普段見聞きしている「世界」は脳がつくりだした「物語」である。そして、宗教は超自然的(自然法則に反する)「物語」であると解説されています。要するに宗教は人間の脳に(生存のために)備わっている機能の副産物なわけですね。「なぜ古今東西どの文化にも宗教があるのか」という問いの究極的な答えは「人間の脳は宗教を生み出すようにできているから」である、と。なるほど…かなり突き放した結論ではありますが納得できました。いっそのことドーキンス先生もこれぐらい突き放したことを言えばよかったのに。「宗教は脳の作話機能による副産物にすぎない」「そんなもののために争うのはやめよう」と言ってしまえばいいのでは。私は、てっきり宗教は団結力を高めるため便宜的に生まれたものとばかり思っていました。しかしこれは単なる副産物であって、団結のためのツールではなかったのですね。道理で争いが絶えないわけだ。

それではまとめに入りましょう。本書のまとめは河出文庫版P34図9-2に集約されています。図9-2のタイトルは「愛情・記憶・夢・神は、脳に対する進化上の制約によって生まれた」です。学者に言わせると全部同列なんですね(笑) これがわかっただけでも読む価値がありました。

 

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