読者の方はご存じだと思うんですけど、私、マッドサイエンティストが好きなんですよ。だから、以前にも人体実験系の本を読んだりしてたんですけど(⇩)
しかしまあなんだかんだ言ってグロい内容だったりするし、あんまりこういう本を本棚に増やすのもなんかなあと思って、これ以来、人体実験系の本は読んでいなくて。久しぶりに読んでみたのが、NHK出版の『闇に魅入られた科学者たち 人体実験は何を生んだのか』です。NHKで放送された「フランケンシュタインの誘惑」という番組が元になっているのだとか。私はこの番組のことを知らず、出版社名も見ないでただ「人体実験系かつほどほどの値段の本」という認識で、長いことAmazonのほしいものリストに入れていまして。先日、ついに抱き合わせ注文したしだいです。自分のリスト中で1500円ほどの本のなかでは一番読みたい本だったのよ。まあ、お値段相応だったのは装丁ぐらいで、中身は物理的にも内容的にもちょっと薄かったんですけど、おかげで医学知識のない文系の私でも読みやすかったので助かりました。
本書でとりあげられている事例は、古いところでは医師ジョン・ハンターの人体標本コレクションから、新しいところではスタンフォード監獄実験まで。あとは、某収容所での行き過ぎた採血や、悪名高い「ロボトミー」手術。どれも医学史上では有名なのかして人体実験系の本ではとりあげられがちな事例であまり面白味がありませんでしたが、東ドイツのドーピング事例は面白かったです。実際に健康被害が出た方々もいらっしゃるので「面白い」という表現は不謹慎なのですが。ドーピングを隠す技術のことを「マスキング」と呼ぶことは初めて知りました。その「マスキング」の事例を読んで思わず「その手があったか!」と驚くと同時に笑ってしまったのが、男性ホルモンのテストステロンと、エピテストステロンというホルモンの検査に対する策。1983年当時、東ドイツスポーツ医学研究所の副所長だったマンフレッド・ヒョップナー医師は、テストステロンとエピテストステロンの検査対象は絶対量ではなく比率であることに注目。選手に、ドーピング効果のあるテストステロンと、ドーピングの観点からはなんの働きもしないエピテストステロンも投与して、その比率を正常値(6:1)に収めるという手段を採ったのです。まさかエピテストステロンの量を増やすという手は誰も思いつかず、当時の検査はかいくぐってしまったようです。バカバカしいといえばバカバカしいのですが、初読時は「天才的な思いつきだ!」と思いました。少なくともヒョップナー医師の才能は東ドイツの医学界と相性が良かったのはまちがいありません。時代と才能が悪い意味で合致してしまうと、後世で悲劇や愚行と呼ばれる事例が起きてしまうのでしょう。この事例が読めただけでも一読する価値がありました。写真はないので内容の割にグロくないので、人体実験系の入門書としてはオススメ。
以上、『闇に魅入られた科学者たち』読んでみたら愚行なのに面白かった件でした。Amazonのリンクはこちら(⇩)