ロマンというほどでもない

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安物でも高見えすれば返ってくる。

 実は安物でも高級そうに見えれば親切な人が拾って届けてくれるものなのだと学んだのは、お気に入りの手袋を落とした時でした。夕方の5時頃、久しぶりに遊んだ友達と駅の改札口で別れ、夕飯を食べてから帰ろうと思いながら出口へ向かっていた時、母から電話がかかってきました。両手に手袋をはめていた私はあわてて手袋をはずし、コートのポケットにつっこみました。母からの電話に出たら「私は家に着いたけどあなた夕飯はどうするの」と言われたので「だったら家で食べる」と答えて電話を切りました。そして再び手袋をはめて歩き出そうとしたのですが、ポケットの中から出てきた手袋は片方だけでした。「あれ、どうして片方しかないの、さっきまで両方あったのに!」歩き出していた私はあわてて改札口前まで戻りましたがもう片方の手袋はみつかりません。駅の中で落としたのでなければ外の道で落としたのかもしれませんが、もう暗いので道端に落ちていてもわからないでしょう。誰か親切な人が端に寄せてくれていることを祈りつつ、ダメ元で来た道を引き返しながら帰宅しました。案の定、暗い夜道で手袋をみつけることはできませんでした。帰宅して早々、母に「お気に入りの手袋おとした」と言ったら「あら、年末だし縁起がいいじゃない。きっと厄落としになったでしょう」とのこと。言われてみればそうかもしれませんが、自分はあきらめきれません。明日また駅へ行ってきいてみようと思いながら就寝。翌日、郵便局へ行くついでに駅へまわって、券売機横の窓口にいる駅員さんにきいてみました。

「すみません。落とし物の問い合わせをしたいのですが、手袋、片方だけ届いてないですか。昨日の夕方5時頃、改札口前で落としたと思うんですけど」「はい、調べてみますね。落とした手袋は左右どちらですか?」「左です」「色とか柄は?」「無地の紫色で裏地は黒です」「素材は革ですか?」「はい、そうです」

 実を言うと私が落とした手袋は合皮製なのですが、一見しただけではわからないのでここは話を合わせて革ということにしておきました。おそらく「紫色の左手袋」が落とし物リストにあり、その特徴に「革製」と記録されているのでしょう。そんな落とし物が私の他にあるはずがないですし、正確な素材を問われているわけではないので話の円滑さを優先しました。このように、求められているのが「正確な事実」なのか「円滑さ・つじつま合わせ」なのかを瞬時に判断できるようになったあたり我ながら大人になったと思います。

「それらしい物が届いていますので、あちらの事務室へどうぞ」「ありがとうございます」

 なんと、私の手袋らしき物が保管されているとのこと。私はすぐに事務室のドアをノックして中へ入りました。

「失礼します。すみません、落とし物の問い合わせをしたいんですが。手袋は届いてますか。ここにあるときいたんですけど」「はい。どんな手袋ですか」

 部署同士の連絡はないらしいので私がまたはじめから事務員さんに説明すると「貴重品以外小物」と書かれたプラケースの中から紫色のものを取り出して見せてくれました。それはまさしく私が落とした左手袋でした。

「これです。保管してくださってありがとうございます」「いえいえ。それでは、申し訳ありませんが書類に記入をお願いします」「はい」

 駅で落とし物を引き取る際は身分証が必要なことを思い出して免許書を取り出して渡し、書類に個人情報を記入。免許証を返してもらい、手袋を受け取って手続きが完了しました。

「届けてくださった方がいたんですねえ。助かりました」「証明写真機のあたりに落ちていたそうですよ」「そうだったんですか。お手数おかけしました。ありがとうございます。失礼します」

 結局は駅の中で落としていましたが、私の探していないところでした。拾ってくれた人は、すぐそばに立っている私が持ち主だとは思いもせず駅員さんに渡してくれたのでしょう。自分で拾ったほうが話は早かったものの、行方不明になるよりはずっとよかったです。こうして、お気に入りの手袋が無事に戻ってきました。私のポケットから落ちた瞬間、左手袋は焦ったことでしょう。事務室に届けられても私が迎えに来るかどうか、一双の手袋に戻れるかどうか。わからないまま過ごした一夜はさぞや心細かったことでしょう。私は反省すると同時に学びました。たとえ安物でも高見えすれば返ってくるものなのだと。いかにも高級そうに見えたから、誰かが拾ってくれたのでしょう。見るからに安物であれば放置されていたにちがいありません。その実態はほんの数千円の合皮手袋でも、高級そうな本革グローブに見えれば(親切な人なら)届けてくれる。どうせ身に着けるなら高見えするものがいい。うまくいけば返ってくるから。

 

以上、安いけどお気に入りの手袋が高見えするおかげで返ってきた件をお送りしました。これぞ生活の知恵。

 

※身バレ防止のため手袋の現物画像はあえてアップしておりません。あしからず。