ポケモン本家シリーズをプレイしていて、前々から思っていたことがある。悪の組織を倒した主人公は次の巨悪になるのではないか、と。なにせ、歴代の主人公はポケモントレーナーの才能がありすぎ、強くなりすぎるのだ。初心者だったはずなのに、どんどんジムバッジを集めてコンプリートしてしまう。しかも、チャンピオンになる前に悪の組織を、巨悪を倒してしまうのだ。ポケモン初代シリーズでは、チャンピオンのワタルがロケット団に対処していた。カントー地方においてチャンピオンとは、警察の手に負えない巨悪に立ち向かう者なのだ。逆にいえば、悪の組織*1潰しはチャンピオンに任されるほどの重要任務なのである。それを未成年かつポケモンリーグ挑戦前に成し遂げてしまう。しかも、その道中で伝説のポケモンまで捕まえている。そして、ポケモンリーグで軽々しくその伝説ポケモンをくりだす。伝説のポケモンが一組織の手に渡ることが問題視されていたはずなのに、成り行きで子供の手に渡っている。それも1匹だけではない。カントーでは三鳥とミュウツー、ジョウトでは三犬とルギア・ホウオウ…といった具合に、各地方の伝説(および幻)ポケモンは複数いる。それがみんな、主人公という子供の手に渡るのである。そのうえ、主人公がいかに強力なポケモンを持っていようが、ポケモンリーグや研究機関にとりあげられることはない。「未成年には危険なポケモンなので預かります。期日までに最寄りの施設へ届けてください。期日を過ぎた場合、あなたのトレーナーIDを無効化します」という通達があってもよさそうなものなのに。なぜかリーグも研究機関も沈黙を守り、四天王もチャンピオンも主人公を放っておく。博士に至っては最初からポケモン図鑑に伝説ポケモンを登録させることを目論んでいるので、主人公が伝説のポケモンを捕まえることにはまったく反対しない。トレーナー界には「自分より強いトレーナーに意見してはいけない」という不文律があるのかもしれない。この不文律に従うと、主人公が成長していくにつれ、誰も意見できなくなる。頼みの綱のチャンピオンは、伝説のポケモンおよび異常にレベルが高いパーティに殴り飛ばされて敗北し、他のトレーナーと同様に、主人公以下のトレーナーに成り下がる。かくして、各地方の平和は主人公個人の良心にゆだねられる…いや、わかっている。私だって大人だ。RPGは基本的に主人公が活躍する物語になっている。主人公になって世界を救うことが、その過程を楽しむのがRPGの醍醐味なのはわかっている。そういう、メタフィクション的な視点で考えれば何も問題ないのもわかっている。わかっているのだが、つい、当事者目線で心配してしまうのだ。こんな子供のうちに地方の頂点に立ってしまった主人公は、これからどんな大人になるのだろうと。一連のできごとが夏休み中だとしたら、秋からは学校に通うのかもしれない。ハイスクールを出て、成人と同時に次のチャンピオンに就任するんだったらいい。しかし、もしも、チャンピオンという地位に飽きたらどうするのだろう。「わたし(ぼく)が救ってやったから、みんな生きてるんじゃないか」「救ったんだから殺してもいいよね」と、わずかでも考えたらどうなる? 悪の組織のボスたちとちがって、思想も主義主張もなく、破壊に至るまでの葛藤をすっとばして大規模破壊と虐殺という結果だけが瞬時にもたらされたら? 主人公にはそれができる。手元にはレベル100になった伝説のポケモンが何匹もいる。これを一斉に放つだけでいい。資金も人員も集めなくていい。時間も準備も必要ない。人間の手下なんかいらない。ポケモンさえいればいい。ジムリーダーも四天王もチャンピオンも自分の敵じゃない。誰も自分を止められないことに気づいた主人公が「みんなの心底からの本気が見たいから」なんて理由で地方を滅ぼそうとしても、なんら不思議はないと思う。今も各地方が存続しているのは、主人公とその関係者が、その可能性に気づいていないからだ。主人公の功績だけを見て能天気に信頼している連中とちがい、ミアレの住民は用心深い。最初の相棒をボックスに押し込め、メガシンカさせるポケモンをどんどん変え、強力なポケモンを次々に捕まえていく主人公を監視していた有力者たちは「メガシンカ使いらしからぬ薄情さ」「あの乱獲ぶりはトレーナーの風上にも置けない」「奴をミアレから出してはならぬ」と結論し、主人公が駅のホームに立つたびに意識を奪って連れ戻している。あの世界線のカロス、いや、世界の平和は賢明なる上位ランカーたちによって今日も守られているのだ。デウロとピュールが学業を終え、ガイ・タウニーが正式にクエーサー社の一員になった時。MZ団が解散した後、ミアレに何事も起きないことを祈るばかりである。なんの枷もなくなった「MZ団のエース」は、ミアレで何をするだろう?
以上、本家シリーズの主人公は次の巨悪になりそうだと思う件でした。
*1:ギャングやマフィア、あるいはテロリスト集団と言い換えれば、ことの重大さがわかっていただけると思う。