久しぶりに『NEMO』を観ました! 1992年製で94分の作品とは思えない高品質ですばらしいけど、オルフェウス王、説明はちゃんとしてください! というのが一番言いたい。いや、説明不足じゃないとトラブルが起こらないので、フィクションでは重要なことであればあるほど説明不足になるのは理解できるんですけどね。だから「なんでそんな説明不足やねん」というのは無意味なツッコミなんですが。それでもね。今回の主人公は少年だし。オルフェウス王は大人なんだから、いきなり跡継ぎに(本人に無断で)指名するんじゃなくて「跡継ぎになってほしいんだがどうだろうか?」とかきいてほしいし「扉を開けるな」と言うだけじゃなくて、開けたらどうなるのか、中には何があるのか、ちゃんと説明してほしい。ニモは「僕が王様との約束を破ったのが悪い」と思っているので「説明されてない!」って怒らないけど、一番悪いのはナイトメア王で、次に悪いのはオルフェウス王*1です。だからニモはそんなに悪くない。ま、オルフェウス王への文句はこれぐらいにしておきましょう。オルフェウス王が謁見そっちのけで模型遊びに興じているのも、人生を全力で楽しんでいると好意的に解釈することは可能だし。実際、オルフェウス王の人相は良くて、生まれてこのかた楽しいことしかしてこなった印象は受けますからね。人柄を顔立ちで表すキャラクターデザイナーさん、すごい。このままキャラクターの話になだれ込むと、本作で好きなキャラは、外見:教授 性格:フリップ ですね。私は細身のキャラが好きなので外見が好きなのは教授ですが、性格が好きなのはフリップ。やっぱり自由人が好き。フリップは顔が緑色なので一目で嫌われ者なのがわかりますが、お調子者で憎めない。日本語版のフリップはニモを「ぼうず」と呼んでいることにご注目。フリップはスランバーランドでは例外的に、ニモをちゃんと子供扱いしている。もしかしたらスランバーランドで一番常識人なのはフリップなのかもしれない。スランバーランドに来たばかりのニモに、フリップは城を案内したりして、楽しませようとしてあげる。そんな優しいフリップですが、スランバーランドではお尋ね者です。スランバーランドにも警察はあって、賞金首になりえるらしい。スランバーランドにフリップ以外の犯罪者なんているんだろうか? たまにフリップ的な住民が発生してるのかもしれないな。さて次はアニメーションについて。といってもどのシーンもすごすぎて素人にはコメントしようがないんですけど、しいていうなら冒頭、ニモがベッドで夜空に舞い上がり、廃墟の町に来たと思ったら時計の音とともにベッドごと水面に落ちて、さらに下へ落ちていくシーン。こういう、水面の下にさらに世界があるシーンが好き。たむらしげる「銀河の魚」にもこういうシーンがあったので、幻想系アニメあるあるなのかも。ニモとプリンセスが会った後にスランバーランドで遊ぶシーンや、戴冠式に来る客たちの様々な乗り物もすばらしかった。ニモたちが空中で遊んだり、馬車をひく動物が馬に限らなかったり。物語の流れ(ナイトメア王との対決)よりも、スランバーランドの美しさを見せるぞという気合いを感じました。ナイトメア王との最終対決はラスト20分で片づけられるんだから。作り手が見せたいのはそれ以外に決まってるだろっていう。そうだ。大人たちよ。ストーリーや登場人物の言動に文句を言うのはやめよう。それはどうせフィクションの必然にすぎないのだから。大人は背景美術とアニメーションを楽しもう!
以上、久しぶりに『NEMO』を観たらすばらしかったけど王様はニモにちゃんと説明してほしいと思った件をお送りしました。やっぱりこの点はどうしても思うな(笑)