劇場版『映画大好きポンポさん』観てきました! すばらしかった! ド〇モのプラチナクーポンのめちゃくちゃわかりにくい購入手順に耐え、やっとの思いで発行されたコードを印刷し握りしめ劇場に行き割引を適用してまで席を取った甲斐がありました。やっぱり、映画の話は映画でするべきだと思います。ポンポさんシリーズは映画の制作論なんだからはじめから映像媒体で説明するべきだった。
ある意味卑怯だけど嫌味じゃない
卑怯と言っても物語の構造とかそんな深い話ではなくて、単純に情報媒体、表現メディアの話なんですが。マンガには絵と動きがあるけど、カラーじゃないと色はないし、音声もないし音楽もない。これがアニメーションならば絵・色・動き・音声・音楽の全揃い。基本的にフルカラーのうえに、ここぞというところでは音楽をかけて観客の感情を盛り上げられるのですから卑怯。私が思わず涙ぐんだのはきっと音楽のせい(ということにしておく)。とにかくマンガよりも使える要素が多くて卑怯。でも、だからこそ演出が派手にできる。地味なはずの編集シーンを、ジーンくんが剣を片手にフィルムを切りまくるアクションシーン(心象風景?)にしてみたり。ポンポさんが「脂肪だらけの映画」と言うシーンでポンポさんが急に膨らんでみたり。マンガだと唐突感がありそうな表現もできる。劇場版では作中作「マイスター」とジーンくんの物語が重なり、「マイスター」のシーンとジーンくんたちのシーンを行き来します。「マイスター」のキャラクターと立場が似ている人物が、まるでキャラクターのセリフを引き継ぐように話すことがある。マンガでこれを何度もやられるとクドく感じて嫌になりそうですが、アニメーションでされても嫌味になりません。映像ならではの表現に感動しました。基本的にマンガのアニメ化には否定的な私ですが、原作を読んだうえでアニメを観るとまたちがった良さがあるものなんですね。認識を改めました。
やっぱり商業映画ってすげえ。
原作マンガにはいなかった銀行サイドの人物が加わることで物語が膨らんでドラマチックに。ニャリウッド映画ともなれば製作費は数億ドルにも及ぶ一大プロジェクトであり銀行からの融資が必要不可欠。それなのに原作マンガでは触れられていなかった部分です。そこにスポットライトを当ててくれるというのだから観客の私としては興味深々。そういえば、世に出てるすべての映画はこんな会議を経て資金調達してつくられてるんだよなあ。しかも。マンガや小説を読んで育ったであろう編集者の人たちとちがって、銀行員の人たちは映画好きとは限らない。基本的に作家さんの味方(でありたいと思っている)編集者に対して、銀行員はそもそも味方ではない。そんな人たちを説得して世に出てる商業映画ってすげえ。もちろん、小説でもマンガでも音楽でも、商業作品はみんなすごいですけども。
「若者の夢を応援したいボスが渋る幹部を黙らせて一件落着」というお約束展開の会議を経て無事に資金調達した映画「マイスター」で最後に撮られたシーンは、失意のダルベールが壁に酒瓶を投げつけるシーン。シリアスなシーンですが「カット!」「クランクアップ!」の声がかかった瞬間の空気の緩みがリアルでした。どんなにシリアスで美しい作品をつくっていても、その裏にあるのは共同作業(物理)である。彼らは確かに作品をつくっているけれど、同時に、お仕事として商品をつくってもいる。あたりまえなのですが観る専だとつい忘れてしまうことです。膨大な人と金と労力が注がれている商業映画ってやっぱりすげえ。
登場人物と同じシーンが見られて感動!
ここが一番お伝えしたかったところ。この点だけでも観る価値がある。普段は陽気なブラドックさんがカメラに背を向けて立ち、横顔を見せた瞬間に、失意のダルベールへと変身する瞬間。そして、ナタリー演ずるリリーがアリアを歌い、ダルベールに呼ばれて振り返るシーン。どちらもお見事! 撮影現場でジーンくんが感じたであろう感動を、観客の私たちも共有できる。これは嬉しい! 登場人物と同じシーンが見られたといえば、ジーンくんが編集した「マリーン」の15秒スポット映像の実物と、ポンポさんの「お色気って感じがちょうどいい」の具体的な部分も。ミスティアさんのおっぱいがタコの触手に。確かにお色気だ(笑)
以上。劇場版『映画大好きポンポさん』の感想でした。やっぱり映画の話は映画でするべきですわ。圧倒的なわかりやすさと感動。入場者特典は「前編」だったし、こりゃあ2巻もアニメ化予定だな。楽しみ。
蛇足:ジーンくんの「すべてを捨てろ」ってメッセージを真に受けるなよ若者よ。すべてを捨てても才能が開花するとは限らないし、何かを捨てないと何かを得られないのは天才じゃなくて秀才だし。ていうか「何かを捨てれば何かを得られる」ってただのオタクの願望なのでは。あのメッセージはジーンくんの独白であって制作スタッフの本音じゃないだろうし。キャラのセリフと作り手の本音はちゃんと区別して鑑賞しような。これだけは本当にお願い。