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【クトゥルフ神話】『インスマスの影』読んでみたけど怖くない。

今週のお題「最近やっと〇〇しました」

 

最近になってやっとクトゥルフ神話を1冊読みました。クトゥルフ神話」はファンタジー界隈で有名なコンテンツなので名前だけは知っていたものの、キャラクター(俗にいう邪神)の名前や関係性などはまったく知りませんでした。機会があれば読んでみたいとは思っていたものの、なぜか図書館で借りるという選択肢は思い浮かばず。たまにAmazonで検索してみると全集がヒットして「全集の1冊だけ読むのもなんかな」と思いスルー。結局、今年になるまで読む機会がありませんでした。今年になって読もうと思ったのは新潮社の夏フェア「新潮文庫の100冊」のおかげです。いつの間にか新潮文庫のラインナップにラヴクラフトの作品集が3作も含まれており、その1作『インスマスの影』に至っては夏フェアの対象でした。文庫なら安価ですし、今のうちに買えば夏フェア限定しおりがついてくるとなれば買うしかない。ということで新潮文庫版『インスマスの影』を購入(⇩)

限定しおりとともに撮影。不気味な表紙が内容にぴったり。

あくまでも文庫なのですがカバーの手触りは良く、印刷の質も良い気がします。カバーイラストはコラージュアーティストのM!DOR!さんが担当しているとか。古典的名作だけあって装丁に気合が入ってる。厚さは1.5cmほどあるので文庫の割には場所取りではありますが本棚に置いておきたくなりますね。この厚みと装丁でお値段は税込935円なのですから驚き。新潮文庫はスピン(ヒモのしおり)がついているのに安価で助かりますね 。ありがたく読ませてもらいました。

巻末の解説によるとこの文庫は訳者の南條竹則氏が編者も兼任していて、収録作は南條氏によるオリジナルセレクトだとか。ということは初心者むけの作品を集めてくれている、はずなのですが。どれも文体が古風で読みにくかったです。しかしこれは原文の文体を再現しようとなさった結果でしょうし、ゴシックホラーの内容とはよく合っているので趣の範囲内だと思って味わいながら読みました。収録作を一通り読んでみた感想は「ちっとも怖くないなあ」でした。「この場には居合わせたくない」と思うほど陰鬱で危険な状況は描写されているのですが肝心の怪物たちへ畏怖の念を抱くことはありませんでした。それどころか相手の視点で考えてしまい「怪物たちも大変そうだなあ」と同情してしまいました。「他の宇宙からいらしたの? ちゃんと帰れるといいわねえ」「光に当たると強制送還されるの!?  それは大変ねえ」「人間と交配したい?  繁殖率が下がってきてるのね。大変ねえ」「そのカニみたいな脚で採掘なさってるの?  お仕事大変ねえ」などなど。未知なるものに遭遇して怖れ慌てふためく人間たちにはあまり感情移入できず、異物であるはずの怪物たちの気持ちや都合を考えてしまいます。私が人間苦手で社会不適応気味なのもあるかと思いますが、一番の要素は一神教の信者であるか否かだと思います。地球の先住生物らしき「古きものら」はともかく「外なるもの」は属している宇宙ごと異なるので完全に神の摂理から外れており、遭遇した時に神に祈ることさえ無意味な存在です。そんなものが急に自分たちの谷に落ちてきて近所の住民を殺していったらどんな気持ちになるか…という恐怖はまあわからなくはありません。しかしどうしても「こっちから見た相手が不気味なんだったら、相手から見たこっちも不気味に決まってるだろ」「物理法則すらちがう宇宙から落ちてきて帰れなくなってる奴の気持ちがわかるのか?」「しょうがないからあたりの生物をエネルギー変換してやっとの思いで離陸したんじゃん」「無事に帰れてよかったねえ。ひとり残ってるみたいだけど」などなど。どうしても「人間と対峙した怪物」の気持ちを考えてしまうのです。相手にだって感情や考えがあるんでしょうに、そちらはあまり描写されません。ここらへんが相いれない。相手の都合を考えないあたり、どうしても一神教的で人間至上主義が透けて見えます。だからこそ、まれにある相手の描写にはクスッときます。教会の鎧戸に一生懸命に馬の毛などを詰めて光が入らないようにしていたり、魚人のような姿で生まれてもすぐには水中生活せず慣らし期間があったり、カニのような足で岩を運んでいたりする描写はむしろほほえましい。おかげでクトゥルフ神話は怖くない」「むしろほほえましい」ことがわかってよかったです。新潮文庫版『インスマスの影』は訳者オリジナルセレクトではありますが有名作「インスマスの影」が読めて満足。ラヴクラフト作品集、もう1冊ぐらい読んでみようかな。

 

以上、新潮文庫版『インスマスの影』読んでみたらほほえましかった件をお送りいたしました。久しぶりに文学作品を読んだなあ。「新潮文庫の100冊」公式サイトのリンクへのはこちら(⇩)

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