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今回の記事は、2月22日(金)に劇場公開された映画『アリータ バトル・エンジェル』を観た感想です。紹介じゃなくて感想ね。この記事を読んでネタバレを喰らうのは自己責任で。ネタバレが嫌な方はブラウザバックを推奨します。
まだ読んでる人はネタバレOK派か、原作の漫画を読んだことがない人ですよね? それでは、今回の感想をお送りしましょう。
『アリータ バトル・エンジェル』を観た感想
こんな人にオススメ
・SF、特にサイボーグモノが好きな人
・原作世界、特にモーターボールの試合とクズ鉄町の実写化が見たい人
原作の『銃夢』は30年ほど前に連載が始まった古き良きSF漫画なので、いかにも!なサイボーグがたくさん登場します。この雰囲気は映画『アリータ』にもあって、足がタイヤになっていたり腕が刃物になっているサイボーグたちが登場。顔面以外はすべて機械化された、重サイボーグ、っていうんですかね? この実写化は、CGが発達した現代映画ならではだと思います。逆に『鋼の錬金術師』の機械鎧みたいな部分機械化が好みの人からすると、メカ部分が多すぎて萌えないかもですが。メカ度もケモ度みたいに、どこらへんまでが許容範囲かは人によるというか好みによりますよね。
次に、とにかく原作世界の実写化が見たい人について。特に、モーターボールの試合とクズ鉄町の実写化が見たい人にはおすすめできます。クズ鉄町は人が多く雑然としていてにぎやか。腕など身体の一部を機械化した人がたくさんいます。小説版のようにいきなり絶叫して倒れる人はいません(それほどパンクではない)が、センチュリアンという4足歩行戦車が巡回していたり、腰から剣をぶらさげた賞金稼ぎ(ハンターウォリアー)が獲物になりそうな賞金首を探し歩いていたりして、物騒なことが起きそうな雰囲気を醸し出しています。
モーターボールの試合について。この部分はまさしく実写化でした。時に選手がバラバラにされたりしながらもボールを奪い合う、暴力有りの危険なスポーツなんだということが伝わります。これこれ! せっかく実写化するんだから、こういうのが観たかった! 原作読者の私も満足でした。後に主人公のアリータも「トライアウト」というデビュー戦に挑み、ノヴァの配下でモーターボールの主催者であるベクターに雇われた選手たちから攻撃されます。タイヤになった足で疾走しながら格闘するという、カーチェイスと殺陣の夢の融合! このシーン自体はロボットでも可能でしょうが、サイボーグならではの緊張感がありました。アリータは生身の脳を持っているので、頭部が破壊されたら死んでしまうのです。アリータにとって、この戦いは命がけ。モーターボールの試合の緊張感は、ロボットモノの比ではありませんでした。
こんな人にはおすすめしない
・人型の機械はアンドロイドしか認めない派の人
・メディアミックスの結果、原作と設定が変わるのは許せない人
・原作の、ノヴァ教授とマカクとベクターさんが好きな人
まずは、人型の機械といえばアンドロイド派の人について。私の記憶の限りでは、本作に登場する人型の機械はみんなサイボーグで、アンドロイドは登場しませんでした。作中のサイボーグたちの顔面は人間のものです。メカの身体に、表情があり皮膚の質感がある人間の顔が貼りついている姿には独特の気持ち悪さがあります。人型の機械といえば無機質なアンドロイド。無表情なロボット顔バンザイ! な人はちょっと受けつけないかもしれません。機械の体に脳みそが入っている? 機械なのに臓器がある? は? 何それ。肉+機械なんてありえない。って感じの人からすれば、サイボーグなんて存在自体が邪道なのかも。
最後に、本作と原作の違いについて。本作には、以下のような変更点があります。
・主人公の名前が、ガリィ➡︎アリータに。
・イド先生のフルネームが、イド・ダイスケ➡︎ダイソン・イドに。
・独身のはずのイド先生が、既婚者で娘がいたことに。
・イド先生がザレムから追放された理由が、犯罪者になる可能性があったから➡︎娘の病気のせいに。
・イド先生の助手がサイボーグの老人➡︎女性に。
・ザレム人の印が、額にプリントされたUの字➡︎額に埋め込まれた三角形に。
・主人公の過去が、工作員➡︎兵士に。
・車椅子だったベクターが、自力で歩く人に。
・クズ鉄町の支配者ベクターが、ノヴァの配下に。
・グリュシカ(マカクに相当するキャラ)は、ノヴァの手下ということになっている。
・ノヴァの吹き替えのセリフは敬語口調ではなく、「キャハハ」と笑わない。
・ノヴァはザレムから脱走していない。
・ノヴァはザレムから地上人を遠隔操作できる。
ざっと思いついた点はこれぐらいです。特に太字で強調した部分が許せない人は観ないほうがいいかもしれません。
原作では車椅子だったベクター氏が、自力で歩く人になっているのはポリコレに配慮したからでしょう。車椅子の人を悪役にするのはマズイというのは理解できます。しかし、原作では内心でザレムの支配に反発しているはずのベクター氏が、ノヴァの配下にあり、命令に従ってアリータを狙い、あげくにノヴァの通信機扱いされたまま死ぬというのはヒドイ。原作のベクターさんは下半身不随ながらも裏社会をしきってクズ鉄町の混乱をおさめ、ケイオスとともにザレムとの和解を目指すいい人なのに。まあ、個人的には映画の、遠隔操作が解けた後のベクターさんが苦しげでステキでしたけども。
マカクに相当するキャラのグリュシカは、命の恩人であるノヴァの命令を「命にかえても」達成しようとしているはずなのにあっさりアリータに殺されるし、そもそも原作のマカクは精神的には一匹オオカミで、ほぼ単独犯だし。マカクはあの孤独さと執念深さがすばらしかった。それに比べて本作のグリュシカからは忠実な戦士としての深みも、気ままな犯罪者としての凶暴さもイマイチ感じられなくて残念でした。出番が少なすぎたか。
あと、なんといっても映画のノヴァと原作のノヴァ教授は完全に別人! この点が一番残念でした。吹き替え版だとセリフは日本語なのに敬語口調じゃないし、キャハハハって笑わないし、ザレムから脱走して自由を謳歌しているわけでもないし。おまけに、映画のラストであっさりメガネをはずすし。誰だアンタ。原作のマッドさはどうした⁉︎ サイバーなメガネをかけてて髪型がオールバックの白髪ならいいってもんじゃないんだよ! 換骨奪胎とはこのことだ! あと、アンタがザレムにずっといたら、グラナイト・イン編が観られないだろうが! 残念すぎるわ!
はっ。いかん。そろそろ、まとめに入らなければ。ええと。要するに、多少の設定変更は大目に見るから迫力のある実写化を望んでいる原作ファンは観ろ。あと、新作のSFに飢えている人は新作映画だと思って観ろ。サイボーグがわざわざ格闘するとかロマンの塊だぞ! 対サイボーグ格闘技なんて存在自体がロマンだから!
以上。映画『アリータ バトル・エンジェル』の感想をお送りしました。
追記:ベクターさんの名セリフもない。
俺は「言葉」など信じねえ‼︎
集英社 ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ 『銃夢 Last Order』Vol.2 収録
「PHASE:12 夢の罪の重さを」より。
上記のセリフは私の「銃夢」読者歴の中でかなり上位にランクインしている名セリフです。
言葉と絵しかない漫画という媒体の作品で、登場人物にこんなことを言わせてしまうのはすごいと思います(何様だ)。しかし、この名セリフは映画では発せられません。なぜなら、映画にはラジオ・スターのケイオスが登場しないからです。ケイオスみたいに言葉の力を過信している人物を目の前にしないと、こんなセリフは発せられないんですよね。あたりまえだけど残念でした。次回作の舞台はザレムになるだろうから、ケイオスも登場しないかな。ノヴァに反発している実の息子役で。
最後にかなりのネタバレを1つ。本作は一作で完結していないので、その点は心して観るように! この記事を読んでおきながら金返せとか言っちゃダメよ。原作ファンならきっと言わないだろうけども。
※本記事は、3月1日に目次をつけて加筆しました。