ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

図鑑と言いながら歴史書の『トリックといかさま図鑑』

本日はひな祭りですね。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。私は某和菓子屋さんのひな祭りバームクーヘンをいただきましたが、味はいたって普通のバームクーヘン(甘さ控えめ)でした。この他にひな祭りらしいことはしていないので、ひな祭りネタはここまで。今回は図鑑と銘打っておきながらその実態は歴史書(概史)である『トリックといかさま図鑑』をご紹介します(⇩)

 

類書のなかでなぜ本書を選んだのかと申しますと、内容に心霊現象(降霊会など)が含まれていたからです。私は犯罪としての詐欺やギャンブルのイカサマには興味ありませんが、心霊現象だの降霊会だの霊媒師だのには興味がありました。降霊会で本当に死者の霊と交信していたのだとしたら霊魂が実在する証明になり、人は死後も存在できることになります。降霊会はただの手品だとしたら、よほど凝った演出とすばらしい手際だったのでしょう。実際に使われた道具やタネ・仕掛けを見せてもらえるのなら、これはこれでロマンがあります。どちらにせよ悪い話ではありません。これは一読する価値がありそうだぞとAmazonでほしいものリストに入れておいたのですが、いかんせんお値段は新品3960円と、私にはかなり高価でした。ありがたいことに今年はマイナポイントをいただいたので、やっと注文できたしだいです。実はまだ2/3ほどしか読めていないのですが、ざっと内容をご紹介しようと思います。

 

『トリックといかさま図鑑』の構成

「図鑑」と銘打っている本書ですが、内容の実態を表しているのはサブタイトルの「奇術・心霊・超能力・錯誤の歴史」のほうです。本文➡資料写真が交互に続く構成になっており、本文の右下には螺旋階段のマークがあります。この螺旋階段のマークには数字が書かれており、次に本文が始まるページ数を表しています。本文だけを続けて読みたい人にも親切な設計ですが、本文を一気読みするよりも資料写真を見ながら読み進めるほうが臨場感があって楽しく、本文への理解も深まることでしょう。

 

今のところ一番おもしろかった部分

実を言うと期待していた霊媒師関連の記述はそこまで面白いわけではなく、今のところ一番面白かったのはむしろ、脱出名人ハリー・フーディーニ氏についての記述でした。霊媒師関連の記述は、反心霊主義者(懐疑派)の科学者やマジシャンと霊媒師たちの対立・降霊会の内容・暴かれたトリックの手口といった予想通りの展開。一方のフーディーニ氏に関する記述は「数奇な人生」というほどではないものの、パフォーマンスに失敗して亡くなったというのですから、十分に魅力的な半生と言えるでしょう。見世物小屋でカードマジックを演じていた青年エリック・ワイス(本名)が「ハリー・フーディーニ」という芸名で脱出劇を見せるようになり有名になったそうです。心霊関係の本になぜこの脱出名人が登場しているのかといいますと、彼もまた霊媒師の手口を暴いたマジシャンの一人だから。それも、司法の要請で霊媒師の手口を再現するなどという受動的な姿勢ではなく「能力が本物であると証明できた者には賞金を出す」旨の広告をうち、自分から霊媒師たちを釣って手口を暴いていったそうです。なんとも攻撃的な姿勢の人ですね。「インチキ」と「マジック」の境界はあいまいだからこそ、フーディーニ氏はプロのマジシャンとして霊媒師たちと戦ったのでしょう。フーディーニ氏はマジシャンであって科学者ではないので、霊媒師と戦っていた動機は、霊媒師たちの非科学的な商売を止めることではなく、遺族の感情につけこんだ心霊詐欺をやめさせることでした。フーディーニ氏は万が一、死者の霊が実在する場合に備えて家族と合言葉を決めてあり、死後はその合言葉で合図することになっていたそうです。こうすれば詐欺師と真の霊媒師を見分けられるわけですね。用意周到!

 

おわりに

詐欺はひっかかって実害を受ける人がいるから成り立つのであって、誰もひっかからなければどんなに斬新なアイデアでも意味はありません。現代日本で堂々とした降霊会の広告をみかけないのは「死後の世界・個人の運命について話す奴は詐欺師」という共通理解があるからだと思います。みなさん、たとえ死後に意識があったとしても、けっして「遺してきた家族に連絡を取ろう」とはお考えになりませんように。死者はそっと生者を見守り、ノータッチを貫きましょう。生前に家族と「私の死後は何の合図もしません」と取り決めておけば、遺族が心霊詐欺にひっかかることはないはず。

 

以上。心霊関連の歴史書『トリックといかさま図鑑 奇術・心霊・超能力・錯誤の歴史』をご紹介しました。

 

 

追記:後日、無事に読み終わりましたが、やはりフーディーニ氏の記述が一番面白かったです。資料写真のなかで一番印象的だったのはP82の「手品独習法」です。「手品の専門教育を謳う1929年のポスター」だそうです。小さな道具で簡単にできる手品は人気だったのですね。私なんか「習得できたとしていつ誰に見せるんだ?」と思ってしまいますが、当時は庶民の宴会が多かったのか。それとも貴族や金持ちの道楽だったのか。見せる相手ありきの娯楽は私には不思議ですが、人の趣味は多様ですね。

 

※この記事は2023年3月27日に加筆しました。