ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

【ネタバレ注意】SCP×魔女空間×ONE PIECE=『FILM RED』

タイトル通り今回はネタバレ注意でお送りする。今作の感想は、SCPオブジェクト×まどマギの魔女の結界空間×アニメ版ONE PIECE=劇場版『FILM RED』という感じ。今回のラスボスは海賊どころか人間ですらなく、原作にある「古代兵器」でもなく「魔王」だという。「悪魔」という単語はよく聞くワンピースワールドだが、魔王までいるようなファンタジーな世界観だろうか。しかも魔王といっても存在というよりむしろ現象というか意志のある楽譜だ。「意志のある楽譜」なんてもはやSCPオブジェクトではないか。今回は封印が解けて脱走してしまったので速やかにSCP財団へ連絡するべきだろう(注:この世界にSCP財団はない) 意志のある古代兵器の「ポセイドン」は人魚のしらほし姫なのでまだマシだが、ウタを利用するほどの知能がある楽譜は、ある意味で最悪だ。意志はあるのに非生物なので衝動のままに人間を取り込み続けるのである。良心や道徳は、魔王を呼び出した「ウタウタの実」の能力者が担当しているのだ。つまり「ウタウタの実」の能力者が世界征服を目指せば、魔王は人類を制圧するまで暴れ続けることになる。おまけに「ウタウタの実」の能力は人間だけではなく動物にも効くらしい。強すぎる。こういう特殊能力者こそが真に危険だ。ただの殴り合いでは勝てない条件勝利系の敵は今まで登場したことがないと思っていたが、ドンキホーテファミリーの幹部シュガーの能力がこの系統だった。敵にまわすとやっかいだが、まわりくどい戦法なので主人公の味方にはならないタイプの能力である。夢に引きずり込んでみたり、眠らせた人間を操ってみたり、操られた人間を傷つけられずに難儀する戦士たちがいたりと、眠らせる系能力者あるあるを惜しみなく披露してくれた。ONE PIECEもついにあるあるネタをやるようになったか。

ここまでは魔王のSCPっぽさを語ったので、まどマギの魔女の結界空間っぽさも語ろう。魔王がルフィたちと戦うウタワールドの空間は地面と空の境目がない異常な空間で、この戦場は魔王のキャラデザも相まってものすごく魔女空間ぽいのだ。ポップソングをBGMにファンシーアイテムが漂う空間で戦うとは…ワンピースもついにこの境地にたどり着いたのか。やっぱりこういう空間演出はアニメならではだ。ワンピースがアニメになったからこそ達した新境地と言える。ただし、何を観てるのかわからなくなるという弊害はあるが。あれ? 私は今日、何を観ているんだっけ? まどマギの続編? 劇場版ワンピースを観に来たんじゃなかったっけ? 自分がワンピースの新作を観ているという自信がなくなって少し混乱した。「ストロング」や「スタンピード」のようなシンプルな殴り合いが観たい人にはおすすめしない。今作は良くも悪くもワンピースらしくないからだ。原作者の尾田先生が制作に関わってくれたことで、魔王に対抗できる力を持った面子が集まっているのはさすがだが。尾田先生は魔王の能力を設定した後に、それに対抗できる面子を真剣に考えてくれたのだと思う。おかげでルフィの協力者が増えて群像劇の様相を呈している。尾田先生はどうも群像劇がやりたいらしい。

最後に。今作で一番印象的だったのはモブのセリフ「悪く思うなよ」だ。天竜人チャルロス聖の護衛がチャルロス聖に背後から撃たれて負傷するシーンがあり、心優しいウタはあわてて護衛たちの傷を癒す。おかげで護衛たちは立ち上がり、チャルロス聖の命令に従ってウタを殺そうとする。その時のセリフが「悪く思うなよ」だ。天竜人の護衛を務めているからには今までに無数の人間を捕まえたり殺したりしてきたはずであり、いちいち罪悪感を感じていたらやってられないだろう。とっくの昔に良心を捨てていそうな人物である。それがわざわざ「悪く思うな」と言うのだから、これはもう実質的な謝罪であり、ウタの手当に心から感謝していることが読み取れる。こういう、登場人物も生身の身体と心を持っていることがわかる何気ない描写が本当に好きだ。

 

以上、SCP×魔女空間×ONE PIECE=『FILM RED』を鑑賞してきました。

 

※この記事は2022年9月1日に微加筆しました。2回みましたが2回ともIMAXで鑑賞。本作はとにかく音響が良い映画館で観ることをおすすめします。