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今回、ご紹介するのは、柴本翔さんのマンガ『ツノウサギ』。
以下、リンクを兼ねた画像です。
今作は、以前の記事で紹介したマンガ
『パンデモニウム 魔術師の村』の前日譚にあたります。
時系列的には、あのお話よりも昔です。
この作品は「IKKI COMIX rare」というシリーズから出ており、
全編描き下ろしです。どこにも連載されていないので、
読もうと思ったら単行本を買うしかない! これは確かにレアだ!
しかしこれ、店頭で立ち読みできなかったとしたら、
表紙だけで判断して買うことになるわけですが。
発売当時、そんな人いたのかな。 はっ、話がズレていますね。
いかんいかん。いい加減で解説を始めます。まずはあらすじから。
あらすじ
額からカブトムシのようなツノを生やしたウサギの男の子、ジャッカ。
放課後になるとお手製スーツを身にまとい、ヒーローごっこに興じる。
自分の世界に没入してしまいがちな彼は、変わり者だと思われていたが、
よくお手伝いをしてくれると、街の人たちから親切にされていた。
ジャッカを理解してくれる友達だっている。
ネズミの女の子、トポは、彼にヒーローになれと言ってくれて、
弟のアルジャーノンとともに、スーツを作ってくれた。
放課後にはスーツを着て、ヒーロー「ツノウサギ」に変身して
お手伝いに勤しみ、夕方には家に帰ってヒーローもののアニメを見る。
そんな日常を過ごしていたジャッカだったが、
ある日、授業中に見知らぬ男が乱入してきた。
そのネズミの男の名は、ベアハ。
過去に大切なヒトを亡くして以来、ツノの謎を探っている。
教員に取り押さえられたベアハは言った。
ジャッカのツノは呪われている。すぐにも折らねばならん。
幸いにしてケガ人は出なかったが、ジャッカは学校に来なくなった。
心配してジャッカの家を訪ねたトポが見たものは、
巨大化したツノのせいで身動きできなくなった、哀れなジャッカの姿だった。
大人たちがジャッカを救おうと悪戦苦闘していると、
なんとも間の悪いことに、巨大竜巻が街に向かってきた。
非難する住民たち、ジャッカの元に留まったトポ。
ジャッカと街の運命やいかに。
感想など(ネタバレ注意)
不思議な点①、先生が妙に親切である
初読でまず不思議に思ったのは、先生が妙に親切であること。
街でツノウサギのジャッカをみかけると、
生活面のことを色々と心配してきいてくれます。
不思議な点②、無言の両親
帰宅したジャッカが「ただいま」とあいさつするも、
リビングにいる両親はうつむいたままで、無言。
冒頭で息子に期待していた両親とは、まるで別人のよう。
以上の点は、読み進んでいくと答えがわかります。
実はどちらも、ジャッカの両親がすでに亡くなっている
ことが原因なのです。
先生たちは、ジャッカが一人暮らしなのを知っていて、
声をかけてくれるのです。
リビングにいた両親は、実はぬいぐるみでした。
トポが寝室に駆けこんだ時にベッドにいたのも、このぬいぐるみ。
小さな子が一人暮らしをしている時点で、なんとも悲しいお話です。
そして、哀れなジャッカに追い打ちをかけるように襲来する竜巻。
ジャッカを追いかけてきて、ツノを折って
ジャッカを救おうとするも、叶わなかったベアハ。
一度は大人たちと避難したのに、ジャッカの元へ戻ったトポ。
実はトポのことが好きになっていたんだと告白したジャッカ。
このまま、誰の思いも報われないまま、竜巻にすべてを奪われるのか。
そんなことはさせない。ジャッカは力をふりしぼり、
ツノウサギとして最後の戦いに挑みます。
ジャッカは竜巻に打ち勝つも、みんなの前から消えてしまいました。
あとに残ったのは、街を覆って災害を退ける、巨大なツノ。
ジャッカは今でも街を守り続けているのです。みんなの心の中で。
いやー、大人としては実に後味が悪いですね!
こんな子供の献身で命を救われようものなら、
せいいっぱい生きるしかありません。
この街から悪人が出ることはなさそうです。
『パンデモニウム 魔術師の村』とのつながり
最後に。『パンデモニウム 魔術師の村』とのつながりを
説明しておきましょう。
実は『パンデモニウム 魔術師の村』にも、今作の登場動物
・ネズミのベアハ
・トポの弟、アルジャーノン
・キツネのシノダ先生
が、ちょっと出演しています!
ベアハさんの名前は出てこないけど、セリフはあります。
大人になったアンルジャーノンくんが見られるぞ!
さらに、「空の落とし子」が両方に登場し、
同じ世界のできごとなのがわかります。
また、ツノウサギの雪だるまがあったり、
ツノウサギのマークが学校についていたりと、芸が細かい!
以上。『ツノウサギ』は『パンデモニウム』と合わせて読むのがオススメの件を
お送りしました。
※本記事は、2018年3月21日に修正しました。