絵本『ロスト・シング』に、わざとズレた解釈をしてみた【ショーン・タン】

目次

 

今回、ご紹介するのは、ショーン・タン作の絵本『ロスト・シング』。

主人公の少年がある年の夏にみつけた「迷子」を、あるべき場所に

送り届けるまでの物語。以下、リンクを兼ねた画像です。

 

 

この画像は小さいですが、現物はタテ約32.3センチ×ヨコ約24.3センチの大型絵本。

 

あらすじ

 ある年の夏、ビンの王冠集めをしていた少年は、浜辺で奇妙な生き物をみつけた。少年はしばらくその生き物を観察していたが、誰もその生き物に気がついていないようだ。少年はその生き物に近づいて話しかけ、夕方近くまで一緒に遊んだ。

 しかし、誰もこの生き物を迎えに来ない。どうやら、この生き物は迷子らしい。少年は、この迷子をあるべき場所に送り届けてやることにした。

 

読んだ感想(ネタバレ注意)

 この絵本は『アライバル』よりも気軽に読めるので、たまに読みかえしています。赤いヤカンのようなものに入ったヤドカリみたいな「迷子」は、見慣れるととても愛らしい。人間の気を引くためなのか、赤いベルを持っています。

 主人公は友人のピートにこの迷子を見せて「飼い主」を探しているんだと相談しますが、ピートは「飼い主なんかいないのかもしれない」と答えます。それどころか、「最初から帰る場所なんかないのかもしれない」とさえ言います。世の中には「ただ居場所がない」ものがあるのだと言うのです。存在しているからには居場所があるというのは人間の思い込みなのかもしれません。人間の場合、居場所は探してみつけるものじゃなくて、自分で作るものなのかも。

 仕方なしに主人公は迷子を自分の家に連れ帰りました。そしてどうやってか、この大きな迷子を家の中に入れます。なぜか両親は最初、この迷子の存在に気づきません。しかし猫はこの迷子をガン見しています。猫はやはり勘が鋭い。

 両親はこの迷子を元の場所に捨ててこいと言いますが、少年はこの迷子を物置に泊めてあげて、エサをあげました。この迷子のエサはクリスマスツリーの電飾だったというのもおもしろいですが、私がびっくりしたのは迷子が入っている赤いヤカン(?)のフタの内側に、何かメーターのようなものがついている点です。この子、メーターの表示が読めるほど知能が高いのか? 実は知的なのでは?

 翌日、主人公が、この迷子をどうしようかと考えていると、ある新聞広告に目がとまりました。少年は、この広告に載っていた「国家 ハンパ・ガラクタ管理局」にこの迷子を預けることにして、迷子とともに街へ出発します。

 主人公と迷子が着いたところは、窓がない灰色のビル。主人公はここで書類に記入して、迷子を預けようとしましたが、そこに居合わせた用務員らしき人(?)に、「ここに置いてっちゃいけない」と言われます。そして、矢印が描かれた名刺のようなものを渡されました。どうやら、この矢印を探してたどって行けば、迷子をあるべき場所に帰せるようです。

 主人公と迷子が矢印をたどって着いたのは、「名もない路地の奥、ビルとビルの暗いすきま」*1にあるブザーの前でした。主人公がこのブザーを押すと大きな扉が開き、様々な姿をした「迷子」まみれの不思議な空間につながります。主人公はこうして、迷子をあるべき場所に送り届けることができました。

 主人公は「あそこにいただれにとっても、あそこは本当の家じゃなかったんだろう」*2と回想します。人間がおらず「迷子」たちだけがいる、「迷子」たちがいじめられない場所はある。でも、彼らが確固として属している場所はない、という意味でしょうか。彼らがあそこに帰っても、途方に暮れなくなるだけで、さみしさはなくならないのかもしれませんね。

 本当に「迷子」なのは、どちらなのでしょう。彼らが「迷子」ならば、私たち人間も実は「迷子」なのではないでしょうか。少なくとも私には、「自分は迷子じゃない」

と胸をはって言える自信はありません。

 

わざとずらした考察(ただの妄想)

 この作品を読み返してみて思ったんですけど、この奇妙な生き物を「どこか風変わりで、さびしげで、途方にくれたような様子をしている」*3迷子だと思うのは人間の勝手な判断なのであって、実はこの「迷子」ちゃんは人間の世界を研究している学者だったのかもしれない。彼らは人間にとってよくわかない存在なのですから、無知で非力だとは限りません。今回の「迷子」ちゃんは人間の世界にフィールドワークに来ていて、帰り道もわかっていたのかもしれない。途方に暮れてさみしそうに見えるのは彼らが人間の協力者を得るための策略で、みつけた人間を案内人として利用しているとも考えられます。途方に暮れてさみしそうに見えるものに反応するのは子供か優しい大人でしょう。とりあえずこういう雰囲気を出しておけば、友好的な人間が寄ってくることを学習したのではないでしょうか。

 こんな風に考えるとさらに想像が膨らみます。今回の「迷子」ちゃんは、むこうの世界で「私は今回、少年に発見された。あの子の友人は鋭い観察眼を持っていて、私に飼い主はいないことをすぐに見抜いた。一瞬、正体がバレたのかと思ってヒヤヒヤしたよ。子どもと猫は油断ならないね」なんて、友達の学者に話しているのかもしれません。こう考えると楽しい。

 まあ、実際には作者がご自分の「居場所のなさ」、さみしさを「迷子」に例えて表現した絵本なのでしょうが。

 

映像化作品へのリンク

作者が10年の月日を費やして、この作品を映像化しています。

以下、Youtubeへのリンクです。

 

kayıp şey / the lost thing - shaun tan - YouTube

 

以上。絵本『ロスト・シング』に、わざとズレた解釈をしてみた件をお送りしました。

 

*1:本書 本文より。本書にはページ数の表示がないので、どのページなのかは実物でお確かめを。

*2:本書 本文より

*3:本書 本文より

バニラビーンズさんが10月に解散するそうなのでコップのフチ子とのコラボCDを紹介します。

目次

 

今回、ご紹介するのは、コップのフチ子さんとバニラビーンズさんとのコラボCD

コップのフチ子公式ソング きっといい場所(フチ) / 絶対パンティーライン」。

長い商品名のこのCD、収録作は正式非公認ソングです。

しかも、タワレコの制服を着たフチ子さんフィギュア付きの限定版があるんです!

アマゾンならまだ在庫があるみたい。以下、リンクを兼ねた画像です。

 

どう? かわいくない? 黄色いヘッドフォンまでつけてるんだよ?

黄色いヘッドフォン買って、おそろいにしたくなりますね。私はしてないけど。

このフチ子さんはウチにもいるんですよ。定位置はパソコンのモニターの上。

これが証拠画像だ!(⇓)

f:id:Mee6:20180808192837j:plain

どうだ! フチ子さんの顔をこんなに近くで見る機会なんてそんなにないでしょ?

貴重な画像だから、サイズは変えないでおきますね。

フチ子さんが落ちて欠けたりしたら悲しいので、お尻に両面テープを貼って

モニターのフチに固定しています。我ながらナイスアイデア

 

あれ? 気がついたら完全に我が家のフチ子さん自慢になってるぞ。

ここらで軌道修正して、正式非公認ソングを歌ったアイドルユニット

バニラビーンズさんを紹介しなくては。

 

アイドルユニット、バニラビーンズとは

北欧の風にのってやってきた、清楚でイノセンスな雰囲気を持つ“オシャレ系アイドル”。
数々のユニークなプロモーションを行なう“実験型アイドル”でもある一方で、ビジュアルとサウンドは一流クリエーター達の手によって徹底的にオシャレに作られており、アーティストや有名クリエーター達からの支持も厚い。
また抜群のトーク力と、 “アイドルオタク”と“リアルセレブ”というメンバー2人の持ち味を生かし、テレビ、ラジオ、WEB等のパーソナリティーやイベント司会等でも活躍中。(後略)

 以上、vanilla-beans | PROFILEより

 

女性二人組のユニットで、ウィキペディアによると

基本的にオシャレトロ(おしゃれなレトロ)を目指しているため、曲、衣装は60〜70年代を感じさせるものが多い。

以上、バニラビーンズ - Wikipedia「衣装」より

 

だそうです。確かに、公式サイトのトップページの衣装もレトロ。2017年に結成10周年を迎えられました。

私がこのユニットのことを知ったのは、フチ子さんとのコラボCDが出た時です。それ以来CDは買っていないので、ファンとは言えませんね。ちなみに、お二人のお顔と衣装はこんな感じ(⇓)。以下、リンクを兼ねた画像です。

 

 

コップのフチ子とは

コップのフチ子」(こっぷのふちこ)(英語表記はfuchico)は、奇譚クラブによるカプセルトイシリーズの名称である。タナカカツキ原案によるOL風の女性「フチ子」が腰をかけたりぶら下がる姿勢をとるフィギュアで、「コップのフチに舞い降りた天使」の副称どおりコップ等の縁に添えて「たたずむ」情景を楽しむ人形だが、これを応用した遊び方がTwitterFacebookで話題となり書籍の出版や写真展の開催で注目された。 

以上、コップのフチ子 - Wikipediaより 

 

つまり、フチ子さんはガシャポンのキャラクターなわけです。同ページによると、シリーズ第1弾の発売は2012年の7月だそう。つまり、今年で6周年なんですね! おめでとうフチ子さん。2018年現在では、第6弾が最新のようです。

フチ子さんの存在は知っていて、気になっていましたが、ガシャポンだとダブリがイヤ。集め出すとキリがないのでガシャポンを回したことはありません。でも、CD付き限定版が出ると知って、コラボCDを買いました。私はフチ子さん目当てでCDを買ったので、失礼ながら私にとってはCDがオマケです。メーカーの奇譚クラブへのリンクはこちら(⇓)

http://kitan.jp/products/fuchico_06

 

このCDを紹介しようと思ったわけ

これを機にフチ子さんを知り、ガシャポンでゲットしてかわいがってくれる人が増えたらいいな、と。あと、バニラビーンズさんが、結成11周年になる今年、2018年10月のライブを最後に解散することが決まっているからです。ファンの方には悲しいお知らせですね。公式サイトのトップにはメンバーのお二人からのメッセージが掲載されています。レナさんのメッセージには日付が入っており、2018年8月1日付けです。

コップのフチ子ファンのみなさんは、解散前に駆け込みお布施してあげて! コラボCDは3種類ありますし、ベストアルバム「Vani BestⅡ」にも「コップのフチ子公式ソング きっといい場所(フチ) 」が収録されています。この曲はフチ子さんの気持ちを唄ったもの。この曲を聞けばお手元のフチ子さんが、ますます愛おしくなること間違いなし! フチ子さんファンにはオススメです。

 

以上。バニラビーンズさんが10月に解散するそうなのでフチ子さんとのコラボCDをご紹介しました。

 

『フランス料理の歴史』(角川ソフィア文庫) フランス料理の変遷がわかる文庫だよ!

目次

 

今回、ご紹介するのは角川ソフィア文庫の『フランス料理の歴史』。

以下、リンクを兼ねた表紙の画像です。

 

 

 『プロのためのフランス料理の歴史』という本に加筆・修正したものらしいです。

元になったこの本は(株)学習研究社から出ているようですが、なぜ他社から文庫版が出ることになったのか。いや、私は知らないですけども。ドラマがありそうですね。

 角川ソフィア文庫の『フランス料理の歴史』のカバー袖に著者紹介があるのですが、お二人とも料理史研究家だと。料理人じゃない! この点はちょっと残念ですが、この本を買う人はレシピを読みたいわけではないでしょうから、問題ないですね。知りたいのはレシピじゃなくて歴史だし。

 それでは以下、この本の内容を解説します。

 

角川ソフィア文庫『フランス料理の歴史』概要

 この本は美食の歴史本です。中世~2000年代までのフランス料理の歴史を大まかに教えてくれます。つまり、この文庫一冊で約1000年間をフォローしている。冷静に考えれば1000年間を文庫一冊でなんて無茶です。本職の研究家からすれば大まかにもほどがあるのでしょうが、素人が読む分には分量・内容ともにちょうどいい。中世の宮廷料理からレストラン業の誕生・発展までをこの一冊で解説しています。

 各章の終わりには、専門用語の説明(脚注)・重要人物の解説があります。加えて、料理名にまつわる由来小辞典+フランス美食史の重要ポイントつき。角川ソフィア文庫版(今、解説している版)ではさらに「フランス料理の現在(2005-2016)跋文にかえて」が書き足され、文庫にしては内容が充実しています。

 

読んだ感想(印象的だった章)

 まず、私が目次を読んでワクワクした章のタイトルを。

・中世●君臨するタイユヴァン

・17世紀●グランド・キュイジーヌの誕生

・18世紀●宮廷のスペ(夜食)

・大革命期●レストラン業の誕生

以上です。特に上からふたつには専門用語が入っており、本文を読まないと意味がわからないあたり、まるでファンタジー小説みたいでワクワクしました。英語のカタカナ表記は見慣れていますが、フランス語だとなじみがないので新鮮! 以下、ここであげた章について感想などを。

 タイユヴァンとは、本名ギョーム・ティレルという、ひとりの料理人のことです。この人が何をしたのかというと、当時、口伝に頼っていた料理の作り方を、初めて本に書きました。

 料理を最初に本にした人タイユヴァンが働いていた当時(中世)の食卓はどんな感じだったのか。なんとこの時代の食卓には、個人の取り皿もフォークもナプキンもありませんでした。あったのはナイフとスプーンと大皿だけ。フォークはなかったので、指を使って食べていたようです。ナプキンもないので、テーブルクロスの端で指をふいていたとか。ふ、不衛生! 中世ヨーロッパ風ファンタジーでフォークとナプキンを登場させるとつっこまれるのは、こういう歴史があるからなんですね。勉強になりました。

 「中世●君臨するタイユヴァン」で他に感動したことは、「高貴な食材」という項目ですね。一部を引用しますと、

貴族が狩りの獲物に目がないのは、それが、貴族としての地位にふさわしい食べ物であると考えたからであった。野生の動物は貴族と同様、生まれながらに自由である。この特権こそ野生の動物を、貴族が食するのにふさわしいものとするのだ。

以上 同書 P43 高貴な食材より 

 この一節はマジでファンタジーっぽいです。ここだけでも読む価値があるというか、それこそファンタジー系の創作に使えそうなネタです。

 次に、「17世紀●グランド・キュイジーヌの誕生」。ここで印象的だったのは、初めてブルジョワという言葉が料理書のタイトルに使われたということと、「香辛料の使用が減る」という項目。

値段は下がり、どんなブルジョワ家庭の食卓にも香辛料が上がるようになった。贅沢品ではなくなった香辛料の価値は、貴族階級にとっては下がる一方である。

 となると、料理人はエキゾティックな材料をこれ見よがしに使うことに興味を失い、かわりに調理技術を磨くことに力を注ぐ。

 以上 同書 P68 香辛料の使用が減るより

 こうして、料理人が先人から継いだ技術を洗練させる動機ができました。17世紀にフランス料理はますます発展していきます。ちなみにグランド・キュイジーヌとは、ルイ14世からフランス革命までの、宮廷、高級貴族の館で出された料理のことだそうです。本文中では、はっきりと「ここに誕生した」とは書かれておらず、いつこの言葉が生まれたのか、読んでもわかりませんでした。この点はちょっと不親切ですが、後世の人がこの時代の宮廷料理をグランド・キュイジーヌと名付けたのかもしれません。

 次に、「18世紀●宮廷のスペ(夜食)」。肝心の夜食の詳細よりも、18世紀の料理人たちが錬金術的発想を持ち、

 さらに、実験科学の誕生とともに、料理人たちは食べ物のおいしさの源と考えられていた物質の研究を始める。これがオスマゾームである。

 以上 同書 P89~90 ムノン 錬金術的料理人の伝統より

という一節のほうが印象に残る章でした。ちなみに、オスマゾームとは具体的に何なのか、本文にも脚注にも書かれていません。もしかして、架空の物質? 科学的にこれと特定された物質ではないようです。

 最後に「大革命期●レストラン業の誕生」。「18世紀●宮廷のスペ(夜食)」によると、最初のレストランが誕生したのは1765年頃のプーリ通りらしい。「大革命期●レストラン業の誕生」では、レストランという業界の発展を描いています。

 貴族に仕えていた有名料理人たちは、革命のせいで過酷な二者択一に直面した。主人に従って亡命するか。それともフランスに留まって転職を計るか。

以上 同書 P121 偉大な料理長たちがレストランを開くより

 へー。フランスでレストラン業が発展したのはフランス革命のおかげだったんですね。知りませんでした。意外な波及効果!

 

まとめ。おすすめのポイント

 おすすめのポイントをまとめると、

・素人でも読める

・一冊でフォローされている期間が長い(約1000年間)

・ファンタジー系の創作に使えそう

・単純に教養としておもしろい

 ということですね。文庫だと物理的に軽くて読みやすいし。

 

以上、角川ソフィア文庫の『フランス料理の歴史』をご紹介しました。

 

町田洋さん作『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』は夏にこそ読んでほしい。

目次

 

今回、ご紹介するのは町田洋さんの作品『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』。

どちらも夏にオススメ。季節感のある作品はリアルの季節と一致している時期に読みたい。一致していると臨場感があっていいと思います。

以下、リンクを兼ねた表紙の画像です。

 

 

 

 実はどちらも短編集です。先に出た『惑星9の休日』は全話書き下ろしでたむらしげる氏推薦、後に出た『夜とコンクリート』はウェブで連載されていたというちがいはありますが。どちらもあらすじは紹介しづらいので、ちょこっと概要を書くと、『惑星9の休日』はタイトルの通り辺境の小惑星9で暮らす人々の話。『夜とコンクリート』の舞台は現代日本なのですが、ほんのりSFの香りがします。夜空のシーンが多め。

 それでは以下、この2冊の収録作の中から夏にオススメの作品をピックアップしてご紹介しましょう。

 

『惑星9の休日』で夏にオススメの作品

 『惑星9の休日』からは

・とある散歩者の夢想

・午後二時、横断歩道の上で

をおすすめしたい。

 「とある散歩者の夢想」の登場人物にはセリフがなく、顔が描かれていません。主人公の外見は、たむらしげる氏のキャラクター「星人間」の土星版を思い起こさせます。読者はこの主人公の独白とともに、彼のお散歩につきあうことになるのです。主人公は「何が起こっても楽しい。何も起こらなくても楽しい」(同書 P130より)と思いながら、小銭だけをポケットにつっこんで、形が気に入った雲の方角へ一人、ぶらぶらと歩きだします。そして、海水浴をしたりソフトクリームを食べたり公園で一休みしたりコンビニによったりして家路につくのです。背景や小物が夏っぽい。すっきりした絵柄のおかげなのか、そんなに暑さは感じませんが。昼間に出発したのに、帰るころには夜になっています。惑星9は隕石の衝突で地軸が傾くほど小さいので、一日が意外と短いのかもしれません。そうじゃないとこれ、お散歩っていうよりおでかけですよね。半日外出してるんだから。

 「午後二時、横断歩道の上で」は、惑星9にある車の整備工場で働く人たちのお話。惑星9は小さいせいかよく停電します。このせいで社長がエレベーターのドアに挟まったままになってしまったので、同僚の女の子が家まで主人公を起こしに来ました。しかし、二人で引っぱっても、太った社長のお腹がドアにつっかえて抜けません。仕方なしに電気の復旧を待つ三人ですが、社長が冷凍庫にアイスがあることを思い出しました。溶けてしまったらもったいないので、溶ける前に三人で食べてしまうことに。

 三人がアイスを食べながら電気の復旧を待っていると、意外に早く電気が復旧しました。これでエレベーターのドアが開くから一安心、と思う三人でしたが、なぜかドアは開きません。どうやらエレベーターは故障しているようです。仕方なく二人は社長の腕を引っぱって、社長をエレベーターから救出しました。あとは整備会社の人にエレベーターを点検してもらって、この一件は終わり。二人は横断歩道を渡り、お昼を食べに行きます。二人が横断歩道を渡るシーンの見開き(P154,P155)は必見! きっと読者も主人公と同じことを思うでしょう。ヤシの木、アイス、入道雲! そして信号がない横断歩道! これぞ夏! 横断歩道はちがう気がするけど!

 

『夜とコンクリート』で夏にオススメの作品

 ここは「夏休みの町」で! 8月中に読むと臨場感がある! 「青いサイダー」と迷ったけど、やっぱり「夏休みの町」で!

 主人公の大学生ソウくんは、バーベキューの準備で登った山で、一台の戦闘機をみつけます。ソウくんの友人によると、この戦闘機は第2次大戦中に行方不明になったフランス機だとのこと。

 なんでまたそんなものが、こんなところにあるのか。わからないまま、特に気にすることもなくソウくんが友人とサッカーをしていたら、ボールが茂みに跳びこんでしまいました。しかも、そこには一人の老人がいたのです! ボールが当たってしまったらしい老人に謝る二人。しかし老人は立ち去れと言うばかり。ソウくんは老人の落し物らしきスティックを手渡そうとしますが、なぜかそのスティックから謎のビームが! あわてて逃げ出したソウくんと友人たち。あの老人は何者なのか? あのビームは何なのか? 老人の謎が解ける時、夏休みの町の謎も解ける!

 以上が「夏休みの町」のあらすじです。このあとソウくんは老人に協力することに。この老人は66年前、自分のかわりに未確認飛行物体にさらわれ、行方不明になった戦友を探しているというのです。この老人は第2次大戦当時、フランス空軍のパイロットでした。

 花火大会&バーベキューのあと、ソウくんと老人はついに、老人の戦友が捕らわれていた「ドーム」にたどり着きます。「ドーム」とは、捕らわれた人間にとって理想の世界をつくりあげる、牢のようなもの。おそらく、捕らえた人間が逃げたいと思わないように、こんな設計になっているのでしょう。

 ネタバレ防止のため、ソウくんが暮らす「夏休みの町」の秘密はここでは明かしませんが、この記事を読んだ方はすでに察していらっしゃるかも。

 最後に。「夏休みの町」は、大人の方に読んでほしいです。理想の世界で思いっきり遊んだら、現実に帰ってきてほしい。しっかり遊んで休まないと、アナタも「ドーム」に、いや「夏休みの町」に捕らわれたままになるかもしれない。「帰りたくない」と思う大人ばかりにならないように、日本人にも長期のバカンスを! 特に夏季休暇を! そして、みんながソウくんと同じことを決断できる大人になりますように。

 

以上。夏にこそ読んでほしいマンガ、『惑星9の休日』と『夜とコンクリート』を

ご紹介しました。他の収録作も、静かでジーンとします。

 

 

うちのパソコンが九十九神(つくもがみ)になりかかっている件について

 『聖☆おにいさん』にはイエスの古いパソコンが九十九神になり、「つくもん」と名付けられる話(7巻の2話目、その45 八百万と九十九)がありますが。ウチのパソコンも10年ほど使っているので、そろそろ、九十九神になりかけているようです。九十九神って何?と思われた方は、以下のリンクをどうぞ。ウィキペディアへ跳びます。表記はちがいますが、同じものです。

付喪神 - Wikipedia

 

 デスクトップ(据え置き)型パソコンなのでノート型ほど頻繁に買い替えるものではないと思いますが、それにしても長生きしてくれています。今まさに、この文章を処理してくれているこの子のことです。

 じゃあ、どのへんが九十九神っぽいのか。以下、この子の九十九神っぽい挙動をあげてみます。

・趣味のネットサーフィンをしているとバグることがある。

・ブログの記事を書いててバグることはあまりない。

・私が使っていると調子がいい

・家人が使っていると調子が悪い

以上。あとは、バグるタイミングがよすぎる。ごはんができた時とか、洗濯物ができた時を狙いすまして電源が落ちます。電源が落ちるので強制的にパソコンの作業が中断され、家事などに手をつけることに。ある意味いい子です。エラーメッセージには納得しかねますが。だって、「予期せぬシャットダウンから復帰しました」とか言うんですよ。これは私のセリフです! 予期してないのはむしろ私! この点だけはわかりあえないです。いや、わかってますけどね。この子にエラーメッセージをカスタムすることはできないってことぐらい。カスタムされてたら怖いし。

 ここまで書いた時点で他に書くことがなくなってしまいました。自分で買ったものなら出会いをお話しするところですが、買ったのも設置したのも私じゃないので、お話しするネタがない。ただ言えることは、まだまだ現役でいてほしいということ。この子が動かなくなったら、とても困ります。ネットにはタブレットからアクセスすればいいし、はてなブログにはiOS対応のアプリもありますが記事が書きにくい。私は物理キーボード派なのです。まあ、iPadに外付けキーボードをつけるという手もあるにはあるのですが。やっぱり大画面で、マウスを片手に作業したいのです。

 あ。マウスで思いつきました。私は左利きですが、両手を使い分ける派なのでマウスは右手で使います。右利きの家族にきいてみたところ、両手を使い分けることはないそうです。うーん。不思議。私の場合は、それぞれの動作の感覚が左右の手に割り振られています。すべての動作を利き手(左手)でできるわけではないので、すべての動作を利き手でするという感覚がわかりません。役割分担するもんじゃないらしい。この感覚は左利きの人に話してもわからないんだろうなあ。左利きのほうが両利きになりやすいんじゃないかと思いますが。だってほら、右手が使えないと不便な時ってあるじゃないですか。自販機のコイン投入口とか自動改札を通る時とか習字の太筆を使う時とか。

 はっ。いかん。私のことを話しすぎました。気がついたら左利きトークに。危うく今回の主役を忘れるところだった。長生きしてねパソコンちゃん! あと、iPadに嫉妬することなく真面目に働いてくれてありがとう。これからもよろしくね!

 

以上。うちのパソコンが九十九神になりかかっている件をお送りしました。

 

追記:ちょうど本文を書き終えたら電源が落ちたので、この記事はiPadで公開しました。本当に毎度、落ちるタイミングが良すぎます。やはり九十九神なのか。

 

 その45 「八百万と九十九」を読みたい方は、

こちらのリンクからどうぞ。

 

V・S・ラマチャンドラン著『脳のなかの幽霊』 ヒトの脳っておもしろい!

目次

 

今回、ご紹介するのは、V.S.ラマチャンドラン著『脳のなかの幽霊』。

私が買ったのは角川文庫版。

本書は神経学者のV.S.ラマチャンドラン氏が、仮説+実験によって

人間の脳(意識)の働きを解き明かしていく本です。

一般向けに書かれた本ですし、専門用語は本文中で説明されるので

かなり読みやすいです。この分野では有名なので興味のある方は一度、

読んでみては。以下、リンクを兼ねた画像です。

 

 

それでは、この本の内容をご紹介しましょう。

 

『脳のなかの幽霊』概要

各章は、著者が臨床で遭遇した神経疾患の患者の奇妙な症状を紹介し、その症状を手がかりに、人間の脳の仕組みや働きを論考していく構成になっている。たとえば、とうに切断された手足がまだあると感じる幻肢、自分の体の一部を人のものだと主張する自己身体否認、近親者を本人と認めず偽物だと主張するカプグラ・シンドロームなどなど。

 以上 同書 P406 訳者あとがき より

 

 訳者は上記に加えて、ラマチャンドラン氏が患者を対象にした実験がユニークだと書いています。ラマチャンドラン氏が使ったのは研究者にしか使えない大がかりな装置ではなく、鏡や綿棒といった身近なものなのです。

 患者の顔を綿棒でなでて幻肢(実際にはない幻の腕)に綿棒でなでられている感覚を生じさせたり、鏡を入れたボックスに手を入れさせて幻肢を動かしている感覚を与えたりするのです!

 

読んだ感想など

 はっきり言ってめちゃくちゃ面白い。下手なミステリ小説よりワクワクします。まず目次にある「第九章 神と大脳辺縁系」と「第十章 笑い死にをした女性」なんて本文を読む前からおもしろそうです。

 本書を読み進むと、なぜ幻肢・笑い死に・エイリアンシドローム(片手が勝手に動く)などが起こるのか、筆者の仮説が述べられます。人間の脳の働きは完全に解明されているわけではないので、あくまでも筆者が立てた仮説が書かれているだけですが、それでも十分おもしろい。それこそ、名探偵の推理でも読んでいる気分です。

  エイリアンシドロームの女性の場合は、ゴールドスタインという博士が診断しました。博士はこの女性の脳梁に損傷があり、右脳と左脳の連絡が取れなくなった結果、右脳が左脳の支配を受けなくなり左手が暴走しているのだろうと予想。女性が卒中で亡くなったあとに解剖してみると、やはり脳梁に損傷がありました。

 筆者は幻肢について、脳の地図の再配置が問題だとしています。実は脳は成人後も変化することがあり、腕を失った場合も脳が変化するらしい。腕の場合は顔面に地図ができあがり、表情を変えるたびに脳中の「手」の領域を刺激し、幻の手の感覚を生みだすのだという仮説を立てています。このため、患者のトムの顔に綿棒でふれた時、幻の手にも同じ感覚があったのです。

 第2章で患者のトムは実験後、「幻の手が時々猛烈にかゆくなって困っていたが、どこをかけばいいのかわかった」と言ってウィンクします。このやりとりが小説っぽくておもしろい。 

 笑い死にした女性の場合、ある朝急に笑いだして1時間半が経ち、昏睡状態になって24時間後に亡くなりました。解剖してみたところ、脳のまんなかの空洞に血液がたまっていました。どうやら、辺縁系の一部に「笑いの回路」があるようです。

 次に、筆者は、なぜ「笑い」というものが人間にあるのかを考えます。

私の意見では、笑いは主として、個人が社会集団の他のメンバー(通常は近縁者)に、検出された異常はささいなことなので心配いらないと合図するためにあるのではないかというものだ。

以上 同書 P324 第十章 笑い死にをした女性 より

 筆者はこの自説を「まちがい警報説」と呼んでいます。たとえば太った男性がバナナの皮ですべって転んだ場合、痛そうにしていたら助けるべきですが、平気そうに起きあがったら笑いが起きると。それは、この男性は助けなくも大丈夫だとまわりに知らせるためだというのです。言われてみればそうかもしれない。

 一番おもしろかったのは「第三章 幻を追う」でした。

私たちは、アイリーンのような患者が、存在しない腕の実際の動きを知覚できるように、「バーチャルリアリティ・ボックス」をつくった。ふたを除去した段ボール箱のなかに鏡を縦に置いたものだ。

 以上 同書 P89 第三章 幻を追う より

 これによって患者たちは幻の腕が動いているかのように見えるので、幻肢をコントロールすることができ、幻肢の痛みをとることができるのではないか。こう考えた筆者は実際に患者に試してもらいます。そうしたら効果があったのです! 患者は幻の腕を動かすことができ、幻の拳を開いて幻の痛みを取ることに成功しました! これはすごい! こんなことに成功したのは著者が初めてでしょう。あまりに単純なので、今まで誰も試さなかったことが不思議です。

 最後に。第三章の結びが印象的でした。

あなたの身体イメージは、持続性があるように思えるにもかかわらず、まったくはかない内部の構造であり、簡単なトリックで根底から変化してしまう。身体イメージは、あなたが自分の遺伝子を子どもに伝えるために一時的につくりだしている外形にすぎないのだ。

 以上 同書 P112 第三章 幻を追う より

 作中の、家でできる実験もおもしろい。ちょっと怖いから試してないけど。

 

以上。V・S・ラマチャンドラン著『脳のなかの幽霊』をご紹介しました。

 

【2018年】うちのハイビスカスが今年は咲かない【暑すぎてヤバイ】

目次

 

はい。今回は記事タイトルそのまんまの内容でお送りします☆

 

うちのハイビスカスが今年は咲かない?

2016年、2017年ともに三十輪ほど咲いていたウチのベランダのハイビスカス。

設置場所は変えてないのに今年は咲かない。いや、それ以前に

ツボミすらつけていない。その証拠に!

f:id:Mee6:20180801144005j:plain

先ほど、ベランダで撮影したウチのハイビスカス。

生活感があるものをトリミングした結果、長い枝があまり写っていないけど。

ね、ツボミがないでしょ? これ、画面外の長い枝でも同じ。

今年はまだ一個もツボミがないの。やばくない?

 

なぜ今年は咲かないのか。原因と対策

ネットでざっと調べてみた結果、

・ハイビスカスは温かさを好むが、暑すぎるのはダメ。

・日光に当てるのは午前中だけ。午後も日に当てるのはダメ。

・台から熱が伝わり、根が弱っていることがある。

・水分が足りていないことがある。

ということがわかりました。

 

実はこれ、けっこう思い当たる(汗)

そこで、鉢の位置を手すり側から窓側に寄せて午後は日に当たらないようにしました。今年した対策はこれだけです。

他の問題は2016年に対策済み。受け皿をひっくりかえして台にして鉢を乗せてあります。これで熱問題は解決していました。

あと、朝一に水をあげて根を痛ませてしまい、葉を落としていたこともあるので、水をやる時間帯を朝⇒夕方に変え、夏場は量を増やしていました。

このおかげで2016年、2017年の夏はともに三十輪ほど咲いてくれた。人間には辛かったけど、ハイビスカスには快適だったんでしょう。それなのに今年は。

 

対策はしたので様子見中。

 実は、鉢の位置を移して数日経っています。対策はしたので様子見中なのです。去年して今年していなかったのは、鉢の位置を動かすことだけ。去年までは、よかれと思って午後は手すり側に鉢を移動させていましたが、今年は動かさないことにしました。

 あと考えられる対策は、もっと高い台を用意して、ベランダの床面から鉢が今より離れるようにすること。今年は床面から反射された熱が多すぎるのかもしません。去年までの対策で、今年も乗り切れるという思い込みは危険かも。

 まとめ。今年、大阪の夏はついにハイビスカスの適温を越えた。人間に元気がなくて当然です。沖縄から来たハイビスカスがへばるんだから。みんな、無理しないでね。不要不急のおでかけは控え、ひきこもりでちょうどいいんですよ。いや、マジで。冗談抜きで。

 

大阪在住のハイビスカスの保護者からは以上です。