ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

映画『Dr.パルナサスの鏡』は、ストーリーよりも映像美を観る作品?

目次

 

今回、ご紹介するのは、映画『Dr.パルナサスの鏡』です。

登場人物は少ないのにストーリーが少し複雑なので、あらすじは引用させてもらいました。以下、リンクをパッケージ兼ねた画像です。

 

 

私は本作を、ストーリーよりも映像美を観る作品だと思っています。正直、文字だけで魅力をお伝えするのは難しい作品ですが、文字でお伝えできる部分は、できるだけ書きたい。ということで、以下、本文を始めます。

 

あらすじと主な登場人物

あらすじ

 2007年、ロンドン。パルナサス博士が率いる旅芸人の一座が、街にやって来た。博士の出し物は、人が密かに心に隠し持つ欲望の世界を、鏡の向こうで形にして見せる「イマジナリウム」。博士の鏡をくぐりぬけると、摩訶不思議な迷宮が待っている。

 1000歳になるという博士には、悲しい秘密があった。かつて“不死”と交換に、娘を悪魔に差し出す約束を交わしてしまったのだ。タイムリミットは、3日後に迫った娘の16歳の誕生日。記憶喪失の青年トニーとともに、博士は、鏡の迷宮で最後の賭けに出る。彼らは、娘を守ることができるのか―?

以上 DVD プレミアムエディション パッケージ裏面より

 

主な登場人物

パルナサス博士:若い頃は僧だった。永遠の命を持っており、2007年現在で1000歳。

バレンティナ:パルナサス博士の娘。もうすぐ16歳になる。貧しいトレーラー暮らしから抜け出したい。

トニー:記憶喪失だった男性。なぜか橋の下に吊るされていた。

アントン:パルナサス博士に拾われた青年。バレンティナが好きでトニーが嫌い。

パーシー:小人の男性。パルナサス博士との付き合いが長い。僧時代からの仲間。

Mr.ニック:人間の男性の姿をした悪魔。山高帽と葉巻きがトレードマーク。

 

登場人物についての補足説明 (ネタバレ注意)

パルナサス博士が永遠の命を得たのは、悪魔のMr.ニックと取り引きしたため。Mr.ニックは博士に「先に12人の信者を獲得したほうが勝ち」という勝負をもちかけました。博士はこの勝負に勝ちましたが、これはMr.ニックの計算通り。Mr.ニックは博士をわざと勝たせて、時代が変わるのを待っていました。いつか、博士の言うことを誰も信じなくなる時代が来るとわかっていたのです。

Mr.ニックの想像通り、落ちぶれた博士。恋をしましたが、老人では叶いません。そこでMr.ニックと取り引きをして、若さを得て結婚しました。そして、妻が60歳にして身ごもった子が、娘のバレンティナです。バレンティナは3日後に16歳になります。Mr.ニックとの取り引きとは、娘が16歳になったら引き渡すというものでした。

アントン君は最初からいて、博士との出会いは描写されません。博士のセリフから、道端で拾われたことがわかります。行き倒れだったのか。博士が彼を拾ったのは、働き手がほしかったのか、単に親切心からか。

小人のパーシーは、博士が「物語を語ることで、世界を保つ」という活動をしていた、僧だった時からの仲間です。パーシーも僧でした。後に、フルネームはやたら長いことが判明。パーシーは愛称で、本名はパーシバルです。

娘のバレンティナは、お人形さんみたいな顔が印象的。たしか、この女優さんはこの作品で有名になっていたような。このお顔のおかげで、作中の着物風衣装がとても似合っています。

最初、トニーは名前がわからないので、博士の娘バレンティナからジョージという名前がつけられました。しかし、博士は悪魔のMr.ニックからトニーの名前と本性を教わり、トニー自身は新聞記事を読んで自分のことを知り、フルネームは「アンソニー・シェパード」であることが判明。「トニー」は愛称です。

トニーはバレンティナとともに博士の鏡に入ります。鏡は入った者の願望を映すので、そこに現れるのは入った者が望む世界です。トニーは、鏡の世界では慈善家として称賛されていますが、現実では子どもを救う慈善事業のかたわら、子どもの臓器売買をしていました。

鏡の世界では、今日が授賞式という設定でした。これは、本当は慈善家として称賛されたかったというトニーの願望の表れです。しかし、現実では臓器売買に手を出していたのですから、本当に子どもを救いたかったわけではなく、おそらく「自分が称賛されれば何でもいい」と思っていたのでしょう。弱者を救う、聞こえのいい事業なら何でもよかったのではないかと思います。

トニーを橋の下に吊るしたのはおそらく、ロシアンマフィアです。トニーは事業を興すにあたって、彼らからお金を借りていましたが、悪事が暴かれて新聞にのり、失脚してお金を返せなくなったようです。

トニーの額には赤いインクで不思議なマークが描かれていますが、これは悪魔のMr.ニックが描いたものでも、パルナサス博士が描いたものでもありません。二人とも、このマークの意味を知らないのです。おそらくはロシアンマフィアたちが描いたものなのでしょう。彼らは、このマークを目印にしてトニーを追っていました。

実はトニーは首を吊られることに慣れており、自衛策をもっています。金色の筒をノドに入れて気道を確保。吊るされても息ができるようにしていました。この金色の筒は重要な小道具なので、終盤での行き先に注目ください。

 

おわりに。どのへんが映像美なのか。

どのへんが映像美やねん、という話ですね。このまま終わると映像に関してノータッチになってしまうので、最後に、私が好きなシーンについてお話しします。

鏡の向こうの世界のシーンはどれも幻想的で美しいのですが、私が一番好きなシーンは、悪魔のMr.ニックとバレンティナのダンスシーン。鏡の破片が飛び散っているなか、真っ黒の背景で二人が踊ります。悪魔のMr.ニックは賞品であるバレンティナが地獄を選ぶのを止めるためにダンスに誘うのですが、バレンティナはMr.ニックの目を盗んで地獄に飛び込んでしまいます。鏡像を利用したトリックが鮮やかで美しい。このシーンだけでも観てほしい。ストーリーがどうでもよくなる勢いで美しいです。

 

以上。ストーリーよりも映像美を観たい作品、映画『Dr.パルナサスの鏡』をご紹介しました。外出を控えていてお暇なら一度、本作をどうぞ。