ロマンというほどでもない

日常以上、ロマン未満のモノを紹介するブログ。たまに私見も書きます。

母のお手製ボンゴレ・ビアンコを食べたあの日、私の味覚は大人になった。

今週のお題「大人になったなと感じるとき」

 

飲酒しても良い年齢になったからといって味覚が大人になったとは限らない。そもそも酒にはアルコール度数という強さを示す単位があること、自分はどれぐらいの度数の酒なら飲めるのか、自分の大まかな酒の好み、酒と料理の相性など飲酒にまつわることを考えられるようになったら大人の味覚だろう。

私が最初に「大人になったな」と思ったのは友人の結婚式(二次会)だった。酒を自由に選べるプランだったので私は迷わず白ワインを選んだのである。それというのも缶ビールを飲んで美味しいと思ったことがなかったからだ。私はビール特有のエグみが本当に苦手なのである。果物ではグレープフルーツが好きなので苦味は嫌いではないものの、あのエグみは無理だった。私はビールと一緒に食事を楽しむことができない人間だとわかっていたのだ。だからワインを選んだ。このように自分の好みを把握し、食事の席ですぐに自分の酒を選べるようになれば大人の味覚だと思う。

ではどうやって私は白ワインが好きだとわかったのか。そのきっかけは母が作ってくれたパスタだった。贔屓にしていたイタリア料理店で「ボンゴレ・ビアンコ」というパスタを知った母はある日、自分でも似たような一品を作ってみようと思い立ったのである。母はボンゴレ・ビアンコのレシピを調べもせず、スーパーで目についた刺身用で割高の魚介類を惜しみなく買い、生食用の食材にも関わらずオリーブオイルと白ワインで豪快に炒めた。固茹でにしたパスタは別のフライパンでオリーブオイルとガーリックと鷹の爪で炒めて塩コショウをふりかけた。そしてパスタを皿に盛り、炒めた魚介類をトッピングした。仕上げに魚介類の出汁が注がれたその一皿はものすごく美味しかった。母が作ってくれたこの我流ボンゴレ・ビアンコには調理で余った白ワインが添えられていた。こうして私は白ワインと魚介料理の相性を知ったのである。料理上手な母に感謝したいところだが、このせいで私はワインなしではパスタが食べられなくなってしまったので酒なしにミートソースのスパゲティを食べていた健康的な幼少期にはもう戻れない。酒なしに食事できないのはアル中の始まりではあるまいか。この点は要注意である。酒と共に楽しむ料理と酒なしでも楽しめる料理が区別できるようになったら大人だと思う。母のお手製ボンゴレ・ビアンコを食べたあの日、私の味覚は大人になった。