ピクサー作品ならハズレなしだろうと思い、レンタルが解禁されるまで
観ないで待とうと思っていたのですが、友人に誘われまして。
では、まだ観たことがない人むけに一応、あらすじを。
あらすじ
舞台はメキシコ。主人公は、ミュージシャンになりたい少年、ミゲル。でも、ミゲルの家では音楽は禁止。ミゲルの家族、リバー家の家業は靴屋だ。ミゲルもいつか立派な靴職人になることを期待されている。
今のミゲルの仕事は靴磨き。靴磨き台を持って人が多そうなところに行き、日銭を稼いでいる。
今夜は死者の日。ミゲルは客から、広場で音楽のコンテストが開かれると教えられる。ミゲルはどうしても夢を叶えたい。こっそり屋根裏に隠してあったギターを持ちだして、広場に行こうとしたが、おばあちゃんにみつかってギターを壊された。
「こんな家族、もういやだ!」と叫んで広場に走って行ったミゲルは、この町が生んだ大スターのお墓から、彼が愛用していたギターを持ち出すことにした。彼はミゲルのひいひいおじいちゃんのはずだから。
今夜だけギターを借りるつもりで、ミゲルがギターを取った時、大人たちにみつかってしまった。しかし、誰もミゲルのことが見えないらしい。誰もいないのに、なぜかギターが壁から落ちている、と言っている。
驚いたミゲルが墓地を走っていると、墓穴に落ちてしまった。ミゲルを墓穴から助け起こしてくれたのは、ガイコツのような姿の人。
ミゲルが着いたところは、死者の国だった。生きたまま死者の国に来てしまったミゲルが生者の国に帰るためには、家族の「許し」がいるらしい。
ミゲルは生者の国に帰るため、あの大スターに会いに行くことにした。彼はこちらでも大スターで、会うのは大変だとわかっていても。
「許し」を得る期限は日の出まで。ミゲルは生者の国に帰り、夢を叶えることができるのか。家族との再会と、和解の物語。
感想など(ネタバレ注意)
死者の国はとてもカラフルで明るい。背景は暗く、いつも夜のようですが、おかげで死者の国は常に夜景のようで美しい。一瞬しか映らない背景でも力を抜かないピクサー。さすがです。
あと、動物たちはアレブリヘという精霊になるという設定も素敵。ミゲルのひいひいおばあちゃん、ママ・イメルダが死者の国で連れていた大きな、空飛ぶ虎のようなアレブリヘは、まだ生きている猫だったのが驚きでした。作中では犬のダンテもアレブリヘに昇格。これがメキシコで本当に信じられていることなら、メキシコの人々は動物に敬意を抱いているのですね。動物好きとしてはうれしいです。アレブリヘになるのは、ペット限定なのかもしれませんが。
さて。ここからが本題です。本作の劇場ポスターや公式サイトには、悪役らしき人が登場していません。では、本作に悪役がいないのかというと、そんなことはない。悪役なしで物語を作るのは大変です。
では、本作で悪役になるのは誰か。それはあの大スター、ミゲルの憧れ、エルネスト・デラクルスです。いい人だと思っていたのに悪い人だった、というのはフィクションではよくある話ですが、ファミリーむけの作品で、いかにもな大スターが悪役というのは珍しい気がして意外でした。これだと、有名人=実は悪いことをしている人、なんて思い込みを、観た子どもに与えないのだろうか。いや、子どもは大人が思っているよりは賢いから大丈夫か。とりあえず、お子さんに「たとえ有名人に誘われても、ついていかないこと」を約束させるのにはいいかも。結局、家族以外の大人は信用ならないのだ、という好例かもしれません。
じゃあ、このエルネスト・デラクルスが、親友の作曲家、ヘクター(実はミゲルの本当のひいひいおじいちゃん)を殺し、曲を盗んでまで有名になりたかった理由はなんなのか。私が考えるに、人々の記憶にできるだけ長く残り、半永久的に生きることだったのではないでしょうか。
本作は、「生前の姿を覚えていてくれる人がいなくなると、死者の国から消えてしまう」という設定になっています。この世界では、死者は永遠に存在していられるわけではないのです。では、この消滅、「二度目の死」を引きのばすにはどうしたらいいか。生前、できるだけ有名になっておき、死後も人々の記憶に残ればいい。そうすれば、死者の国で半永久的に存在していられる。
デラクルスがこう考えていたのだとすれば、生前、親友のヘクターが巡業の旅から家族のところに帰ろうとしたのを止め、殺して曲を盗んだのも、まあ理解はできます。手段を選らばなすぎる、利己的すぎるとは思いますが。
この悪役、利己的なスター、デラクルスの功績を考えてみます。彼がしたことは人殺しなので明らかに悪いことなのですが、彼があのハンサムな顔と美声とたくましい体格で歌って有名にならければ、ヘクターが書いた曲は世に出なかったかもしれません。
彼は生前は映画俳優もしていて、出演作のセリフがミゲルをはげますシーンがあります。また、ミゲルの町には彼の銅像が建っていて、そこに刻まれた「チャンスをつかめ!」という言葉が、ミゲルに勇気を与えます。この言葉がなければ、ミゲルはギターを調達することを、夢をあきらめていたかもしれません。他にも、彼の言葉に勇気をもらった人がいるはずです。
彼は舞台上の事故で亡くなり、死に様までカッコイイ。これでさらに有名になり(有名どころか伝説かも)、ミゲルの町は彼の故郷として、観光地にもなっていたのでは。ここまで考えると、たとえ悪人でも、人の役に立っていた。真の作曲家の名前が世に出ていなかったのは残念ですが、さえない風貌で作曲の才はある男ヘクターと、カッコイイし歌は上手いけど作曲の才はない男デラクルス、どちらかが死ななければいけなかったのだとしたら。二択ならヘクターが消えるのが正解だったんじゃないかと。少なくとも、音楽業界的には正解なのでは、なんて考えてしまいました。
人々に夢を与えるのは、絵に描いたようにわかりやすくカッコイイ人。しかし、いざという時に頼りになるのは家族。これがこの作品のメッセージかな、と。家族も夢も、どちらも大切にしなさい、ということでしょう。家族と仲たがいしたままで、いいことなんかない。夢を追いたいなら、家族の理解を得よう。理想論かもしれないけど、結局はそれが一番いいんだと思います。
以上。映画『リメンバー・ミー』の感想などをお送りしました。
今回は更新の間が空きすぎました。この間は、自己最長記録更新です。もうちょっと積極的にネタを探さねば。ということで、これからも不定期更新していきます!