紙の本の利点は一人で何度も課金できることだと、最近になってようやく気がついた。もしもあなたが大金持ちで他人の迷惑をまったく考えないのであれば、発行された本を全て買い占めたっていい。発行部数=購入数になったっていいのだ。出版社も著者も儲かるから。他の人が読めない点さえ無視すれば何も問題ない。100万部刷られた本なら100万回課金できる。これが紙の本を買う最大の利点だ。つまらないかもしれないから初読は古本で買う→面白かったので新刊を買うこともできる。古本だと著者にお金が入らないが自分の損害は少ない。だからまずは古本を買って古本屋にお金を払い、面白かったり応援したくなったら著者にお金が入るように新刊書店で買う。この使い分けができるところも紙の本の利点である。配信される電子書籍だとこうはいかない。配信だとセールで安く買えるし本棚を圧迫することもないが、いくら内容が面白くても後から定価を払ってあげることはできない。同じアカウントだと1アイテムに1回しか課金できないからだ。
これは本だけではなく、CD・DVD・ゲームでも言える。あなたが巨万の富の持ち主ならば市場に流通している全てのパッケージ作品を買い占めることができるが、配信だと1回しか課金できない。安い中古品と定価の新品を使い分けることができないのだ。平等といえば平等だが無情といえば無情である。配信なら買い占めが起きないので誰でも同じ値段で作品を鑑賞できるから、消費者にとっては配信のほうがありがたい。たくさんの人に自分の作品を観てほしいと願うタイプの作者にとっても配信のほうがいいだろう。しかし、創作=金儲けというスタンスのメーカーや作者からすると、買い占められるリスクがあってもパッケージがバカ売れするほうがいいのではないか。配信だと発行部数という縛りがないかわりに、ほしいと思う人に一通り行き渡ったらもう売れない。売れる数=ほしいと思う人の数で止まってしまう。青天井で売れるのはむしろ、パッケージ商品なのではないか。この点にいち早く気づいたのが、握手券つきCDを発明したアイドル業界である。応援したさの度合いがCDの購入枚数に反映されるのでわかりやすい。最近の私はアマゾンで古本を買うのをやめて新刊を買うことで著者を応援している。みんな、たまにはパッケージ商品を買おう。以上。